下野の國にて、怪異を語る

下野の國は東山道に属する要所だ。
国分寺や下野薬師寺を擁した華やかな
文化を持ち、鎌倉時代には足利学校が
作られるなど、時代の先端を行く。そして
江戸時代には、かの日光東照宮が建立
されるなど、歴史と文化共に一目置かれる
地域であるのは言うまでもない。

 その、下野國=栃木県を冠した筆名を
持つ作者の、その題名も『栃木怪談』!

これが実に淡々と怖い。

これ程の歴史を持つ土地であるから、さぞ
怪談奇談も多いのだろうと、そう思って
読み進めると、全く予想とは違う。
ありがちなご当地怪談集ではない。至極、
日常的で個人的な怪談なのだ。

それ故に、派手な立ち回りはないのかと
思い更に読むも、又しても違う。
「え…そんな事が?!!」と思う様な
出来事が淡々と記されてゆく。
淡々と、詳細を詳らかに語られる怪談は、
それだけに真実味が強い。

今迄、読んだ事のない怪談。

それが最も しっくり 来るだろう。
この不穏な読後感を是非とも体験される
事を、願って止まない。

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