それでも大丈夫です。

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

それでも大丈夫です。


 私は、身投げした。


 はずなのに、周囲にどこか温かみを感じるような白い空間が広がっている。


 なんだろうこれ。異世界転生系かな?

 思案していると、すぐ先に光が人の形に集まっていく。そこには、西洋の神話に出てくるようないかにも神様的な人が現れた。その人は揚々に頷き、頭の中に響くような音で話しかけてくる。


 「「あぁ。そんなもんじゃ。」」


 よくあるように思考も読んでくる。返答の仕方からしてその人は何回もこういうのを体験したことがあるのだろう。

 私はある事が気になって尋ねた。


 「転生以外の道はないのですか。」


 「「無いわけではない。もう一つの道としては、魂がなくなるか、じゃ。結果としてどちらとも同じ程のエネルギーを生む。ここに来た全員が転生を選んだ。わしもそのほうが楽しみが増えるしの。」」


 その応えに私の疑問は晴れた。

 

 私は、少しだけ嬉しそうな顔をした。

 その人は、少しだけ悲しい顔をした。

 

 そして答える。


 「魂ごと消してください。」


 「「それで良いのか。」」

 

 「はい、構いません。もう疲れたので。」


 「「うむ。……分かった。」」


 そう言って、その人は私に向かって手をかざす。

 段々と意識がなくなっていくのを感じる。完全に消え去る前に。


 「ありがとうございました。」


 「「ではな。」」


 私は意識を手放した。



 と同時に、本能的現実逃避が終わった。

                             どん

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それでも大丈夫です。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro

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