蘆花⑥ 甘すぎる距離

 足が無いことを支えられるのが嫌なら、健常者だろうと支えられて当然の立場になれば良い。


 なんて乱暴な理論だろうか。

 ただでさえ難しいことをしようとしているのにさらにやることを増やして隠岐戸さんの負担が雪だるまになっている。

 手放しで賛成されてしまったのは本当に予想外だった。


 三限目、俺がいない方が良いと言われて仕方なく授業に出たが案の定集中できず叱られる始末。

 それでもこりずに終わりのチャイムが鳴るとほぼ同時、二人がいるはずの数学準備室に向う。


「あれ!? 閉まってる」


 だけど俺を迎えたのは閉ざされた扉だけで二人の姿はない。いや、鍵閉めて話してるだけかも?

 でも声は聞こえないからきっと二人とももうここには居ない。


 そこでようやく連絡があるかもと思い至り慌ててスマホを確認する。

 メッセージあり、交換してて良かった連絡先。田代さんホント気が回るね。普段あんまり連絡手段としてスマホを使ってないから発想がなかった。多分田代さんとさっきそんな話をしてなかったら今も右往左往してる気がする。


「あ、良かった仲直りできたんだ」


 メッセージを確認。三限目の途中から授業に参加、準備室の鍵はもう返してくれたそうだ。

 送信時間が30分以上前。かなり早い段階で仲直りできたらしい。


「は? 世界?」


 待って。俺はそこまで言ってない。

 そっか。隠岐戸さん世界一になるんだ。足引っ張らないようにするにはどうすれば良いんだろう。

 放課後がちょっと楽しみだ。




「えっと、つまり隠岐戸さんは田代さんのために世界を目指すし、田代さんは隠岐戸さんのために人生捧げるって?」


 マッチポンプ……。

 いや、本人達が納得してるならそれでいいのか。だいたい俺が元凶なんだしとやかく言う資格なんてない。


 放課後になり、頼めば意外と貸してくれると知った数学準備室に集合。

 今までこんな部屋があることすら知らなかったけど今日一日で随分馴染んでしまった。これからも何かある度に借りにこようと思う。


「仕方ないでしょ。蘆花は私より幸せになる気がないんだし、それなら私が追いつけないくらい結果を出すしかないなぁって」


「そう、ね。言われてみれば私は不幸になりたかったのかもしれないわ」


 これから大変なのに二人とも嬉しそうに見えるのは何でだろうか。


 でもその気持ちはちょっと分かる。

 田代さんの隣に隠岐戸さんがいて、隠岐戸さんの隣に田代さんがいる。

 この光景を見たいがために動いていた俺としては最高の報酬だ。


 めでたしめでたし

 ……とここで満足していたのは俺だけだった。


(ほら、蘆花ろか)


(分かってるわよ)


 二人がなにやら小声で話し合っている。

 蚊帳の外なのは仕方ないがこの状況で内緒話されるのはちょっと傷つく。


「その、昨日理学療法士に興味があるって言っていたわよね」


「あぁ、うん」


 ようやく俺にターンが回ってきたけど気の抜けた返事しかできない。


「私たちに協力してくれるって」


「そのつも……」


「信用できないわ」


 ……まぁ、この回答は予想できた。

 昨日まで知りもしなかった職を目指すって冷静に考えると無理がある。最悪口から出まかせを言ったようにとられてもおかしくないし、例え今俺が本気なのだと信じてもらえたしても目標が高過ぎてついていけるかが不明瞭。三日坊主で終わると断じられても仕方ない。


 目標を誰と目指すかというのは成果に直結する大事な要素だ。ましてその目標が世界一なんて言うはるか高みならなおさら仲間は厳選しないといけない。


 俺はそれに値しなかった……、ということなのだろう。

 もちろん二人を唆した張本人として二人と関わり続けることは諦めない。

 まずは信用を稼ぐところから始めないと。


「だから、貴方を傍に置いて監視することにしたの」


「うん。……え?」


 流れ変わった?

 しまい込んだはずの気持ちが顔をのぞかせる。


「ううん。その、そばにいて……ほしい。できれば鈴が世界一になった後も」


 ずっと一緒にいようって言ってくれた?

 俺、仮にも昨日告白したんだけどちゃんと覚えててくれてる?

 たった一日で気持ちに整理なんてつけれないんだよ?


 これチャンスのお誘いだったりする?


「あの、ね。昨日の告白の返事だけど」


「撤回とかしてくれるの?」


「ごめんなさい」


 ふぅー。


 落ち着け俺。両思いだからってすぐに付き合える訳ないだろう。欲を出し過ぎた。

 とりあえず完全数でも数えるんだ。


 6、28……。……。……?


 いや、なんで完全数を選んだ。ここは普通素数とかだろう。確か次の完全数って三桁だし数えるような代物じゃない。俺の混乱絶好調だ。


「私は鈴を世界一にする。それまで誰とも付き合う気はないわ」


「うん。それは分かって……」


 うん?

 隠岐戸さんが世界一になるまで誰とも付き合う気はないけど、それまでそばにいても良い、と。それからもそばにいて良い、と。

 つまりそういうことかな。

 違ったら嫌だし確認の意味を込めて言葉を紡ぐ。


「俺、距離感間違えるかもよ?」


 田代さんを諦める訳じゃない。

 案にそれを伝えてみる。

 果たしてどんな返事が聞けるだろうか。


 俺の言葉に顔を赤くして、少しの間だけ俯かせ、あげた時には何故かもっと顔を赤くしていた。


「構わないわ」


 表情だけ取り繕ってすましたように言う。

 申し訳ないけどそのアンバランスさがすごく可愛い。


「わかった」


 だいたい俺が好きになったのはそういう田代さんなんだし下手に告白を受け入れられるよりよっぽど

 むしろそれでこそ田代さんだ。


「いやいや、海藤君なんでそこで退いちゃうの! 押せばいけるよ!」


「それはそうなんだけどさ……」


「そんなことないわよ」


「「えっ!?」」


 田代さんの否定に俺と隠岐戸さんが驚愕の声をあげる。


 嘘だよね。

 田代さん自分が押しに弱いこと自覚してないの?


 ……してないかもしれないなぁ。


「二人とも、怒るわよ」


 強めに小突かれながら『こらっ』って怒られたい。

 それで必死に謝って『しょうがないわね』って赦されたい。


「どうしようもないこと考えてる顔してるわよ」


「思想の自由は憲法で保障されてるからセーフ」


「……はぁ」


 でも今くらい浮かれるのは赦してほしい。

 好きな人に傍にいてほしいって言われたんだ。

 俄然無敵な気分。


「いや海藤君、落ち着いて。これ蘆花がキープしたいって言ってるだけだよ。正気に戻って」


「どっちかと言うと告白断られてからも弱みに付け込んで離れないだけじゃない?」


「既に盲目じゃん」


 キープ、ねぇ。

 田代さんに関して言えばその心配は皆無だと思う。


 なんなら加速させようとしている隠岐戸さんに俺達の態度に呆れる資格なんてない。


「私今日のところは家族にスポーツ義足作ってもらうよう頼む予定なんだ。二人は今日くらいデートでもしたら?」


「しないわよ」


「もお! 蘆花!」


「まぁまぁ、隠岐戸さん。ここは俺に任せてよ」


 デートなんて田代さんはしない。分かってる。

 でも俺はするんだよなぁ。


「今後の作戦会議するために二人っきりでどっかカフェにでも行こう」


「その、毎回カフェだとお金かかるし……あの、ね。うち、来る?」


「「……」」


 俺と隠岐戸さんは絶句した。

 ナチュラルに複数回実施する気でいるのが最重要ポイントです。


「えっと、親御さんとかは」


「? いない方が良いなら外してもらうわよ」


「いや、そこまでしてくれなくて良い!!」


 ……距離感バグってるのは田代さんの方だ。

 ちゃんとやっていけるのか、ちょっと違う不安が出てきた。

 こっちが必死に一歩踏み込んだら平然と五歩引き摺り込まれるような関係。


 この関係性に名前はいらない。俺と田代さんは付き合ってない。恋人じゃない。

 それでも、特別なこの縁を大切にしていきたい。


 ……というか恋人でもない今でこれなら付き合うことになったらどんな距離感になるんだろう。






「隠岐戸さん凄いね。無双してるじゃん」


「当然よ。ちょっとなまった程度で追いつかれるような鍛え方はしてないわ」


 今、隠岐戸さんとどの競技なら世界一を狙えるかを模索している最中だ。とりあえずあれこれやってみて一番楽しいのはどれかを探っている状態。

 世界一を視野に入れるなら優秀な指導者がいるスポーツに絞りたいところだけど本人がこれで世界一になりたいって意志の方が大事だ。


 昨日期末試験の勉強(の気分転換にしていた理学療法士の勉強)中に突然電話がかかってきた。

 明日空いてる? 空いてなかったら多少無理して空けて、だそうだ。期末試験が迫った最後の土曜日にお願いされるようなタイプの内容じゃなかったけど勉強くらいしかやることなかったのでもちろんOK。隠岐戸さんが勉強してるのかは不安になったけどその辺は田代さんに任せよう。


 という訳で隠岐戸さんのように片足がない人でもできるスポーツのイベントに参加している。

 俺の立場はただの観客なんだけど、ただの付き添いに無理を言われたことがちょっと嬉しい。

 二人に仲間として加われた気がする。それに理学療法士の人も来ているみたいだしこういうスポーツのチームドクターになる方法とか聞いてみたい。


 大学生くらいの男性とマッチアップしてるのに翻弄しているのは隠岐戸さんの方だ。

 運動センスが抜群と聞いてはいたけど実際の当たりにするとやっぱりびっくりする。



 ちなみに種目はだ。



 そう。手を使えばハンドで反則、足を使ってボールをゴールに決めるあの超メジャースポーツのサッカーである。

 ボールを蹴るにはボールタッチの蹴り足と体を支える軸足とで二本の足がいる。それは誤った知識だったらしい。


 アンプティサッカーと言って、義足を外して二本のクラッチで身体を支えて行う競技。ちなみに寝そべって蹴ったりクラッチでボール操作をするのは反則だ。

 ゴールキーパーは下肢じゃなくて上肢に障害がある人が務めるらしいけど今日そのポジションは不在の特別ルール。本家と違ってオフサイドのルールもないし両チームバンバン点が入ってる。

 こちらのチームの半分くらいは隠岐戸さんの得点。

 今日クラッチで走る方法から教わっていたはずだが既に八面六臂の大活躍だ。


「うわ凄っ。……え? 何あれ!? めっちゃ飛ぶ。あんなの習ってたっけ?」


「昨日ボレーシュートの動画を見つけてね。あれがやりたくて参加したらしいわよ」


 残念ながら外してしまったけど自分の頭より上にあるんじゃないかというくらいの高さにあるボールを蹴ってゴールを狙った訳で、正直何やってるのか理解するのに少し時間がかかってしまった。足一本でできるような動きに見えなかった。

 クラッチを支えにして下半身全体を持ち上げほぼ水平に浮いた体勢までもっていってシュート。ゴールの上を通過していったけどそのシュートに周りから今日一番の歓声があがる。

 本人は悔しそうだがあれだけスピードのあるシュートは迫力も段違い。なんならクラッチがある分普通のサッカーより高い位置で蹴ってるから本家越えもあり得るんじゃなかろうか。


「最初に選ぶスポーツがまさかサッカーになるとは思わなかったわ」


「俺も。全然知らなかったけどトルコにはプロリーグまであるんだってね」


 流石にパラリンピックに採用されるほどメジャーではないけどワールドカップ――世界大会もちゃんと開催されている。

 前回のワールドカップは2022年で優勝国はそのトルコ。準優勝はアンゴラ(中央アフリカらしい)。


 ちなみにこれは男子の大会で女子のワールドカップはまだない。

 女子の第一回大会はなんと今年の11月に行われる予定だそうだ。ホントよく見つけてきたと感心する。


 障害者のスポーツは競技人口に著しい制限がかかる分どうしてもマイナーになる。

 それでもこうやって徐々にだけど可能性が広がっていっている。きっと隠岐戸さんに会わなかったら一生知らなかった世界だ。


「義足が必要ないスポーツを選ぶあたり鈴はそうとう天邪鬼」


 田代さんが正式に義肢装具士を目指すことになったのに隠岐戸さんが最初に選んだスポーツは義足が禁止されている競技。

 それだけだと天邪鬼ととれなくもないんだけどきっと別の理由がある。


「信頼してるんだよ。田代さんならどんなスポーツを選ぼうが一番支えてくれるはずだって」


「……」


 当たったらしい。

 俺の勘もだいぶ良くなった。今のは単なる照れ隠しだ。


「別に、退屈な日常を抜け出すために理由が欲しかっただけよ」


「うん?」


「何をしても右足がなかった頃に及ばない。その閉塞感で自棄やけに近い状態だったの。だから私を理由にしただけでそこはあんまり重要じゃなかったわ」


「流石にそれはないって」


「気軽に全盛期を越えれば良いと言った貴方の方が無茶苦茶よ」


 ……はい。

 いや、……うん。


 ちょっと本気で目指すとなるとやっぱ世界って広い。


「パスポート取るだけでかなりめんどくさい」


「最初にやることがそれなの?」


「こういうのは最初にやっておかないと」


 一番にやらないと隠岐戸さんと田代さんにドヤ顔で説明できないじゃん。


 それはまぁ冗談として、普段の生活では世界の外側を感じない。

 でも、パスポートを取ったことで一気に世界を身近に感じるようになった。

 いつか行く、が少しだけ具体性を持つようになった。


「ねぇ。……本気で世界一になれると思ってるの?」


「俺も同じだよ。何かを本気で目指してみたくなった。もしなれなくても目指すこと自体はできるから良いかなって。でも今は本気でなれるかもしれないって思ってる」


 チームスポーツだから強い人を人数分揃えることが難しい――アンプティサッカーの場合フィールドプレイヤーは上肢切断者がつとめるゴールキーパー含めて7人――けどここまで奔放に動けるんだから才能は充分ある。

 だからあとは周りがしっかりしてやれば可能性がゼロってことはない。ゼロじゃないならこの挑戦、価値は存分にある。




 ところで俺は今、非常に悩ましい事態に遭遇している。

 問題は隣に立つ田代さんだ。


 これまで田代さんの私服はだいたいボーイッシュ、というか今思えば隠岐戸さんが義足だからそれに合わせて脚を見せないような服装を心掛けていたんだろう。

 それはそれで可愛かったし格好良かったんだけど、今日の田代さんは一味も二味も違う。


 ピンクのリボンを巻いた麦わら帽子に白のひざ丈ワンピースで素足が見えちゃってる。もしこの格好をしたのが隠岐戸さんだったら義足がまるまる見えちゃっているだろう。

 靴は裸足に少しヒールのある黒いミュールだからその先の足の甲や指まで出している。


 ここまで脚を露出させたのを初めて目にした。

 いつもの隠岐戸さんの隣にいるような恰好と真逆と言って良い。

 どう考えても今までとファッションの方向性が違う。足の指はまだ義足でも出せるかもしれないけど踵が高い靴はどうしても不安定になるしあり得なかった。


 正直めちゃくちゃ可愛い。


 なんというか。

 男とデートするにはこんなふうにコーディネートすればいいんですよ、みたいな感じで実際俺の心に刺さっている。

 ちょっと前に可愛いと言って地雷踏んだから触れることができなかったけど、今回も時間の問題かもしれない。

 油断するとすぐ可愛いって言いたくなる。


 可愛い。


「ねぇ」


「はい」


「その……。この格好どうかしら」


 ふむ。

 ひょっとして可愛い待ち?

 どこでそんなテクニック覚えたの効果抜群だよ。


 違ってもいいや。

 既に距離感間違えるって宣言したんだし俺から近づくのはルール違反にならない。


「それは感想をこの暑さに負けないくらい大声で語って良いってこと?」


「……。~~~~。あんまりいうと照れて正反対のこと言っちゃうから一言でお願い」


「可愛い。びっくりした。可愛い! 可愛い!!!!」


「一言でって言ったわよね!」


 当然一言で収まるはずもなく、その溢れる言葉をせき止めるために小さな両の手が俺の口をふさぐ。

 可愛いと言われ慣れてないみたいで俺の貧弱な語彙でも結構良い反応してくれる。

 頬を膨らませて涙目の田代さんを見るともうちょっと言っておきたかったけどこの辺でやめておしまい。

 この分なら次の機会はすぐだ。


 俺の衝動が落ち着いたのを見て手は離れていった。

 流石にここで可愛い連呼も違うから別方面で攻めてみる。


「俺のために着てくれたの?」


 そうだったら良いな。

 否定しやすいように冗談めかした言葉。

 だけど肯定してくれたら良いなとちょっと期待している。


 少し顔を伏せた所為で帽子に遮られ表情が分からない。

 でも雰囲気的に否定なんて欠片もなさそうだ。


「その、今日無理言って付き合わせてしまったからそのことに対してお礼、みたいな。鈴に言われたから着たのだけどこれ本当にお礼になってる?」


 ……ふむ。


「なってないって言ったらもっとすごいことしてくれる?」


「この格好をしなくなるわ」


「なります。超なります。だからまたお願いします。もちろんいつもの格好も良いけどたまにはそんな感じの格好も見たい!」


 あぶねぇ。

 危うく見納めになるところだった。


「こんな感じの格好するの久しぶりで、似合ってるかどうかいまいち自信がないの。鈴にも選ぶの手伝ってもらったんだけど……」


 これあれだ。

 隠岐戸さんが田代さんを唆したパターン。

 流れに身を任せるだけで俺に好都合なことが起こりまくる展開。下手に流れに逆らうと損になるから大人しくこのレアな状況を堪能しよう。


 帽子で隠していた顔をあげ、身長差で上目遣いとなっている潤んだ瞳で何かを訴えかけてくる。




「ほら、今はその……よ、、が他の女に目移りしないように釘付けにしないといけないでしょう」




 俺、今日からの彼氏面する。絶対する!


 公式で付き合ってないだけで蘆花はもう俺の彼女だ。

 こうしてストーカーって発生するんだろうけど訴えられても勝てる気がする。


「そうだね。もう蘆花しか目に入らないや」


 こんな可愛い格好じゃなくても蘆花ひとすじのつもりだったけどますます気合が入るというもの。

 早いとこ結果を出して二人の想いに応えていきたいところだけどちょっと恋人としての時間を優先させてもらおうかな。


「今日お弁当作ってきたんだ。またたまご焼きの交換しようよ」


「いいわよ。今日も砂糖なの?」


 最近の夏は暑すぎるから熱中症対策を兼ねて隠岐戸さんのサッカーは午前中で終了。

 蘆花と応援しているこの試合が終わればあとはお昼を挟んで屋内で交流イベントの流れだ。俺にとってはこっちが本番。


 弁当か昼食代を持参とのことだったけど俺達は三人とも弁当。

 研究の成果を見せたくて事前に確認しておいた。


「あれからたまご焼きのアレンジメニュー調べてさ。マシュマロに辿り着いた」


「へぇ。面白そうね。早く食べてみたいわ」


 よしっ。


 色はマシュマロを使った影響で少し白く、出汁を利かせた自信作。

 少なくとも味見した熱々の時点では美味しかった。

 保冷剤で冷やした状態ではどうなっているか分からないけど極端に不味くなってることはないはずだ。


「またあーんしよっか」


 まぁ隠岐戸さんもいるし無理かな。

 いくら蘆花でもこれは踏み込み過ぎ。

 せめて二人っきりだったら可能性があったのに。


「……もぉ、一回だけよ」


 俺の予想に反して隣から恥ずかしそうに返ってきた声は確かに肯定の意を持っていた。

 蘆花は俺に対して二つの意味で甘すぎる。



これにて『ソロ充を気取ってた俺が義足の女の子をナンパしたことをキッカケにしてリア充になる話』は完結です。応援ありがとうございました。

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ソロ充を気取ってた俺が義足の女の子をナンパしたことをキッカケにしてリア充になる話 薬籠@星空案内人 @yakuro

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