僕も、要注意人物かもしれない

崔 梨遙(再)

1話完結:800字

 夏の夜の海。


 港で佇む、僕と凜。


「僕、ずっと凜を見てきたから知ってたんやで。別れた彼氏のことで、だいぶん心を痛めてるやろ?」

「うーん、傷ついてないと言ったら嘘になるなぁ。私がフラれたからなぁ」

「でも、凜は悪くないやんか。要するに、元彼の浮気なんやから」

「まあ、そうやねんけどね。私にも至らない点があったかなぁって思うねん」

「凜に落ち度は無いで。元彼が凜を捨てて他の女のところに行ったんやから」

「そうやねんけど」

「僕なら浮気はせえへんで」

「まあ、でも、好きやったから」


 凜の目に涙が浮かんでいることに僕は気付いていた。


「僕なら、凜を悲しませたりせえへんで」

「わかってる。崔君やったら、多分そうなんやろうね」

「凜を悲しませた男のことなんて忘れろや」

「って、スグに忘れられたらええんやけどね」

「なんで? なんで忘れられへんの?」

「でも、元彼にもええとこあったし」

「元彼のどこが良かったん?」

「優しいところ、あとは……笑顔」

「笑顔って……ドラマやないねんから」

「でも、好きやったんやもん」

「優しくないやんか、凜を捨てたんやから」

「でも、いっぱいいっぱい思い出をくれたよ」

「思い出の上書き保存をしようや。僕が上書きするから」

「崔君、ありがとう。ほんまに嬉しい。でも、今はまだ元彼が私の心の中にいるから、私の心から元彼がいなくなるまで待ってくれへん?」


「いや、待たへんよ」


「え!?」

「そんなもん、待ってられるかいな」

「え! 普通は待ってくれるんとちゃうの?」

「待たへん、待たへん、普通は待たへん。だって、僕は今凜が欲しいんやから」

「なんで? なんで待ってくれへんの? 私のこと考えてくれてる?」

「だって、遅かれ早かれ凜は僕に抱かれるもん。ほな、早い方がええやんか。スグに心の上書き保存したるから。さあ、車に戻ろう」

「ちょっと待ってや」


「さあ、車に乗ったし、ほな、行くでー!」

「どこに行くん?」

「ホテル-!」

「やっぱり-!」

「嫌じゃないやろ?」

「嫌……ではないけど……」



 そして、凜を乗せた僕の車はホテルに直行したのだった。現実は、ドラマではないのだ!







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僕も、要注意人物かもしれない 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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