のっとり

 気まずい空気の中、オレたちは家へと向かっていた。

 

 

 そしたら、舞香がいきなり

「ほんとうの家は、どこなんです?」

 なんていうんですよ?

 

 

 ほんとうの家って…

 

 舞香んちの隣だよ‼︎って言いたかったけど、なんか冗談じゃない…マジで言ってるっぽかった。

 

 

 舞香…記憶喪失なの?

 

 

「あのさ…舞香って…どっかで頭ぶつけたりした?」

「はい?それより、舞香って呼び捨てやめてもらえますか?」

 と怒り気味で言われたよね…。

 

 

「すいません…舞香さん」

 と、仕方なくさん付けにした。

 

 

 でも…なぜ今更……

 

 

 よくわからない女心ってやつっすか⁇

 

 

 …

 

 

 そんなこんなで気まずい下校。

 

 

 そしてやっとこさゴール目前です‼︎

 

 自分から一緒に帰ろうとしてたくせに、今はこのお隣にいる舞香…さんから解放される安心感…。

 

 

 

「じゃあ…これで」

 とオレが家に入ろうとすると舞香…さんがいきなりオレの腕を掴んで、

「蒼一…蒼一は…ほんとに元気なの?」

 とオレをじっとみた。

 

 

 え?

 オレ…かなり健康的になったつもりなんだけどな…。

 てか、オレは呼び捨てのまんまかい!

 

 まぁ、いいか。

 

 

「あのー、めっちゃ元気だよ?」

 と元気ポーズしてみた。

 

 すると…

 

「なんで?あなたには聞いてない。ちょっとお宅、お邪魔していい?」

 と言いながら舞香…さんは、すでにうちに上がり込んでいた。

 

 

「あのー…」

 舞香…さんは、勢いよくオレの部屋へとまっしぐらに向かった。

 

 

「蒼一‼︎どこ⁉︎蒼一‼︎」

 

 舞香…さん⁇

 

 

 なぜか舞香さんは、オレを透明人間かのように扱い、でも…オレを探しているみたいだった。

 

 え…?

 今のこの状態のオレは認めないってこと?…なの?

 

「あのー…オレここにいるんっすけど…」

 

 その言葉に舞香さんは、オレをキッと睨むと、

「あなたじゃない‼︎」

 と、またオレじゃない蒼一を探しだした。

 

 

 …

 

 え?

 

 どういう状況⁇

 

 低身長の弱々しいオレに戻れってこと?

 

 どうしたらいいか困っていると舞香さんは、ぼろぼろ泣き出した。

 

 

 そしてオレに…

 

「あなた…ほんとに蒼一の親戚⁉︎ほんとは蒼一になりすまして本当の蒼一を…わたしの大切な蒼一…をどこかにっ…ひっ、ぐっ…グスッ…」

 と、大泣きし出した。

 

 

 わたしの大切な蒼一って…

 

 あの不健康おチビのオレがいいってこと?

 

 でも…小さくなるのって…無理かも…

 てか、親戚ってなに?

 

 

 オレが困っていると舞香さんの大泣きにビックリして母さんが駆けつけてきた。

 

「舞香ちゃん?どうしたの?」

 母の声かけに舞香さんは、

「おばちゃん…蒼一は?ねぇ、蒼一はどこ?ねぇ」

 としがみついて必死に訴えていた?

 

 

 母さんは、オレを指差し

「蒼一は、ここにいるじゃない」

 と不思議そうにこたえた。

 

「違う‼︎ほんとうの蒼一‼︎え…おばちゃんもグルなの?ねぇ、おばちゃん‼︎蒼一は⁉︎ねぇ‼︎この人は、蒼一じゃないよね⁉︎乗っ取りだよね⁉︎同じ名前の乗っ取り‼︎みんなどうしちゃったのーー」

 と、またも大泣きの舞香。

 

 ふふふと、母さんが笑った。

 

 それをビックリ顔で舞香さんは、見ていた。

 

「舞香ちゃん、蒼一は乗っ取られてないわよ。だって、この部屋見てごらんなさい」

 

 そう母さんに言われて少し落ち着いた舞香は、ゆっくりとオレの部屋を見渡した。

 

 そして、筋トレグッズとか脱お菓子‼︎目指せ高身長‼︎の文字をじっと見入った。

 

 さらに母さんは、オレのイメチェン動画をみせていた。

 

 恥ずいー…

 そしてこの動画、微妙にバズってるんだよねー…

 

 …

 

「え?蒼一…もしかして、痩せて背が伸びたの⁉︎こんなにっ⁉︎春休み中にっ?」

 

「うん」

 

「えぇっ⁉︎じゃ…じゃあさ、本物の蒼一なんだ⁈宇宙人に乗っとられてたんじゃなくて、偽物でもない蒼一なのっ?…そ、そうい〜ちぃ〜」

 と、舞香は涙を流しながらオレに抱きついた。

 

 ふふふと笑いながら母さんは、静かにドアをしめて退出していった。

 

 

「舞香、ごめんね。オレがもっときちんと説明してればこんなことにならなかったのに」

 

「ううん。いいよ!蒼一すごいね!すんっごい頑張ったんだね‼︎頑張り屋さんの蒼一はじめてみたけど、大好き‼︎」

 

 舞香がオレにギュッとしがみついた。

 

 オレの頑張りって…はじめてみたんだ…?

 まぁ、今までここまで全力で頑張ったことなかったかもな…

 

 

 

 

「あ、大好きって…オレが先にいうつもりだったんだけどな。」

「えっ⁉︎」

「え⁉︎じゃないよ。まったく舞香は、おっちょこちょいだけどそんなところが大好きだよ♡」

「ふふ、わたしも頑張り屋さんの蒼一が大好き♡」

 

 

 そんなイチャイチャなオレたちだったんだけど…舞香のバッグをふとみるとなんかたくさんの本が入ってる?

 

 

「舞香…こんな重いバッグ持ってたの?オレに言えば持ってあげたのに」

「だ、ダメ‼︎みちゃダメー」

 とバッグに舞香が手を伸ばすとバサバサと本がおちてきた。

 

 

 宇宙人に人間侵略とか、乗っ取られてた人とか、親戚のフリした乗っ取り悪魔という本が入っていた。

 

 

 ガチでオレがのっ取られてたと思ってたんだな。

 

 

 

「マイカサン、ボクハ、ノットラレ、ソウイチデス」

 

 と、わざと演技してみた。

 

「ふっ、もう騙されない。もうどこにもいかないでね?」

「うん、てか…はじめからずっといたけどね。でも…ある意味乗っ取られたんだ。」

「え?どういうこと⁉︎」

「オレの心の中、舞香だらけ♡舞香に♡《ハート》のっとられたかも♡」

「わたしも♡」

 

 

 

 ♡♡

 

 

 チュ〜♡

 

 

 こうして、オレのイメチェンからの告白は失敗に終わりそうで成功したのでありました。

 

 

 

 

 おしまい。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幼馴染に告白するために色々頑張ったらまさかの…あなた誰ですか状態に陥りましたけど? 猫の集会 @2066-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ