第8話 月の下
彼女はゆっくりと口を動かしている。
何も見えないのに俺の中に謎の危機感が生れる。まずい、何がまずいのか分からない。
だが嫌な汗が止まらない。
「星月夜」
その言葉と共に青い光の矢が一方方向に突っ込んでくる。
俺はギリギリでそれらを避けて体制を整えようとするが目の前には彼女の手が広がっていた。
「力を扱い間違えるとはな、早いうちで良かった。だがやってしまったことは大きい。反省しろ」
目が覚めるとあの部屋のベッドで寝ていた。
それと同時に後悔が押し寄せる。なぜあんなことをしてしまったのだろう。謝らなければ。
謝罪の念で頭の中が押しつぶされそうになりながら廊下を駆けて行く。さして真っ先に彼女の部屋へ向かう。
「...いないか」
部屋には何も感じさせなかった。
次に止めてくれたゼブルの部屋へ向かう。
止めてくれたお礼と謝罪を彼女にもしなくてはならない。
弟子という身分がありながら無責任に行動してしまった。
俺は自制ができなかった。
彼女の部屋に着くと窓際に腰掛けながら月を眺める彼女がいた。
「目覚めたか」
「なと言えば良いか分からない。だが気持ちは謝罪でいっぱいだ。ごめんなさい」
「...それが大人になるということだ。お前には成長を急かせすぎたな。」
彼女は月を見ながら俺に大事なことを教えてくれる。月に照らされる彼女は魔女にしか見えなかった。
「だが自分の尻拭いをしてこそ成長するものだ。さぁ行け。やることがまだあるだろう」
「ありがとう...」
ミリアがいそうな場所を手当たり次第探してみるとするか。
別荘は全ての部屋と場所を確認したが見当たらず、使用人にも聞いたが知らないと言われてしまった。
ではあの教会はどうだろうか。俺は先程の出来事が鮮明化されてきて辛くなる、が彼女の方が今は辛いに決まっている。
あの教会には誰もいなかった。そして地下にも。
では残すはあそこしかなかった。
「...ごめん」
俺の声を聞き彼女は振り返る。
「僕もごめん。話をしっかりと聞けば良かった。あの後ゼブルさんから聞いたよ。君が元々この世界の住人じゃないこと。そして迫害されていたこと。」
彼女は震える声と手で下を向きながら
「僕を許して欲しい。すごくわがままだけど僕は君と友達でいたい。あんな酷いことを言ってしまったりした。それでも...。僕は今日から成長すると誓うよ。偏見、見た目や出生などに左右されないと誓う。だから僕ともう一度、友達になってくれないかい?」
俺の答えはとうに決まっていた。もし仮に彼女が「近寄らないでくれ、」と言ったとしても俺は君と友達でいたい。俺もなんだ。
「ああ。俺もまだまだ成長が足りないと思えるところが多々あると思う。それでも俺も友達でいたい。そしてミリアの力になりたい」
「バアル...」
月の下で二人は誓いを立てた。
魔女と悪魔 アクネメ @akumeme
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