第15話 数藤ペア

 佐々木先生からホームルームで、ある行事が言い渡された。


「今日から1週間後に一年生全員で登山を行う。これは親睦とその他諸々を行う為にするから、欠席はしないと思うが頑張れよ」


「「「「「「はい」」」」」」


 クラスの女子は佐々木先生の言葉に元気よく返事していたが、横に座っている二人の顔は少し曇っていた。


 説明ではバスで少し遠くの山の近くまで行き、初日は山の近くで課外活動をして、翌日に登山をするらしい。毎回の恒例らしいが、登山は初体験が多かった為、質問をする生徒が多かったが、佐々木先生は当日伝えるとだけ言って教室を出て行った。


「...........運動嫌い」

「私も得意ではないです。洋君は?」

「そこまで嫌じゃないよ」


「「はぁ.........」」


 多分だが、二人は登山以外に僕が他のクラスの女子達と会う事が嫌らしい。当然、何も起こす事はしなけど、少し怖い。


「.....洋、私頑張る」

「わわわ私も運動と護衛頑張るから」


「護衛って大袈裟...........ではないか」


 貞操逆転前なら何も考えずに登山と課外活動をたのしんでいたが、今は貞操逆転後、僕は男子というだけで、世界から特別視される。


 何事もない事を祈る。そして、みんなで仲良く過ごせたら何よりだ。





 1週間後、


 課外活動当日は早起きして、ぐっすり眠っている牧城さんを起こして、朝食を食べて部屋を出た。支度は前日に終わらしていたので、楽だった。これも四宮さんのおかげだ。


「............眠い」

「危ないから、ほら」

「う」


 四宮さんはずっと眠そうな牧城さんの手を掴んで転ばないように歩いていた。僕は、三人専用の荷物と自分の荷物を持っていた。四宮さんには僕が言って持してくれた。




「お、一番乗りだな。有野」

「おはようございます。佐々木先生」

「私の美貌と服装に興奮したか?」


 佐々木先生は長い黒髪を後ろで括ってポニーテールになっており、服装は登山専用の黒い服に包まれていた。.........正直、かっこよかった。


「洋君............、

「あ、うん」


 四宮さんの目が少しずつ暗くなって行き、少しずつ近づいてきたので、危ないと感じて指示に従った。


「有野、どんまい」


 佐々木先生は笑顔で手を振ってくれ、僕達は学校が用意してくれた大型バスに乗った。中は、結構広く、クラスメイトが数人ほど座っていた。


「...........こっち」


 四宮さんが、牧城さんと僕を引っ張って先導してくれて最後尾に来た。そして、眠そうな牧城さんを前の席に誘導した四宮さんは、


「座って」

「あ、うん」


 窓側を僕に譲ってくれて僕は指示通りに奥に座って、四宮さんはオドオドしながら僕の横に座った。前では、牧城さんが猫のように二席を使って寝ており、可愛かった。


「洋君、課外活動の一泊2日の間に特に私が洋君を守るから安心してね」

「........お願いします」


 こちら側に体を向けてきた四宮さんは真剣に「守る」と言ってくれたので、僕もそれに何も言わずに受け入れた。


 数分後にはクラスメイトが次々に乗って来て、最後に佐々木先生が来た。僕達は最後尾に居て、横には数藤君達、牧城さんの前が小林君と西条姉妹、男子が居るペアは最後尾に集まる習性があるらしい。



「それでは出発新婚だな.......私は独身だがな」


「「「「「「..................」」」」」」


 冷えた空気が後方まで届いてきた。佐々木先生の顔は見えないけど、多分いつも通り笑っているだろう。


 学校を出て数分が経ち、クラスメイトは会話を弾ませていたが、僕の周りは少し違っていた。



「小林様、お茶です」

「小林様、お菓子です」

「ありがとう、二人とも」

「「はい」」


 小林君は西条姉妹のお世話攻撃を永遠に喰らって、ずっと感謝を言っていた。教室でも同じ様な光景をよく見るので、驚きはしないが、


「明、お茶」

「ありがと」

「明、楽しい?」

「勿論」

「「明、誰見てるの???」」


 まだ知らない数藤ペアは近くで見ると怖かった。横に居る四宮さんが説明してくれて、数藤君の横に座っているのが、黒いショートに髪にクールな綺麗な顔の人が、佐山愛理さんらしい。そして前に座って少し怒っている金髪ロングの少し怖そうでモデルの様な人が、宮本紗奈さんらしい。


「何見てんの?」


 宮本さんが僕達を見てそう言ってきた。数藤君が怯えたハムスターの様になっていたので、見てしまったが、


「ごめんなさい。何もないから」

「そう」


 四宮さんが何とか和解してくれて宮本さんは僕達から視線を変えてくれた。佐山さんは四宮さんの隣だが、こっちには一切向かず、数藤君の方を向いていた。




「みんな、静かだな。それじゃあ先生が婚活で培った力を発揮してやろう」


 佐々木先生がマイクで喋って、後ろの僕達も鮮明に聞こえた。...........間違いなど絶対にない。




「先生考案、男子と仲良くなれるなぞなぞだ」


「「「「「おおおおおおおお」」」」」



 何かが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貞操逆転世界の全寮制校でも平和に暮らしたい ブラックコーヒー @Kuro4561

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ