結花とウィークエンドシトロン

 (はあ……。)

 ちょっとだけさみしい思いを心に秘めていた。仲の良い友達が他の子と遊んだという話を聞くと、胸が苦しくなる。

 私は友達と付き合う事が下手だから。最初は仲良く楽しく過ごせるんだけど、仲良くなっていくにつれて、いろいろな不安が出てきてしまう。

 そんな性格を何度も変えたいと思った。

 「理桜はテスト勉強してるー?」

 中二の春。

 優海と出会ってから一年が経っていた。

 今年は、優海とクラスが分かれて、理桜と一緒のクラスになった。

 私達は今、テスト週間を過ごしている。

「今週、土曜も日曜も忙しいねんなぁ。」

そーいえば土曜日、「映画の試写会行く」って言ってた事を思い出した。お出かけの話を聴くのが好きだから、興味本位で聞いてみた。人の楽しい思い出を聞いていると、私までお出かけした気分になれるから、人の楽しい思い出話を聞くのは楽しい。

「日曜日もお出かけするのー?」

すると、

「テスト前に友達と遊ぶんだ。」

と言った。

 それを聞いて、ちょっとだけ悲しくなった。当たり前のことなのに、聞いて悲しくなう自分が大嫌い。

 理桜を他の友達に取られちゃうんじゃないかと思う自分に、悔しくなった。

 理桜とはクラブで知り合った。

 だから、優海と理桜と私。三人とも同じクラブ。

 帰り道は、自然と三人一緒になる。

 私だけ、途中で分かれるので寂しい思いをして過ごしていた。家の場所が三人とも近ければなと何度も何度も思った。

 私、優海と理桜。今、冷戦状態。

 二人とも、今のところ優しくしてくれているけど、いつ戦争が始まるかなんて誰にも分からない。

 人と接することは、とても怖い。

 怖くて怖くて仕方がない。

 怖いよ! 怖いよ!

 私の心の声は誰にも届かない。

 いつも胸の中は、暗闇に支配されている。光が欲しかった。その光は、どんなに大勢の中にいても、私を見つけ出してくれる。「行こう!」と私を明るく助けてくれる、私はその子と一緒ならどこにでも行けるし、その子のためなら何でもできる。

 私は空気を読んだり、相手の気持ちを考えることがすっごく下手で。

 友達に辛い思いをさせてしまうことがあった。

 私は、人には強がってしまうけど。

 でも、仮面を外すと、本当は泣き虫を持っている。

 人は弱い生き物だから。

 私もそのうちの一人。

 みんなが楽しく過ごせる世界になったら、いいなと思う。

 みんなが、仮面を外して。ありのままの自分を出して、心から笑い合える世界。

 ファンタジーのように、妖精、魔法使いがいて、優しさを持つ人を助けてくれる、辛い人が救われる。

 そんな透き通った美しい物語。

 私のこの願いが叶えば良いと、願っている。夢物語かもしれない。だけど、誰の心にも美しい物語は眠っている。ただ、見つけられたか、まだ見つけれていないかの違いだけ。たったそれだけ。

 月曜日、日曜日は、誰と遊んだのかな、優海と遊んだのかなとか。考えるべきでないことを、考えてばかりいた。

 火曜日、優海は他の友達二人と来て、理桜だけを連れて行った。他の二人とも友達なので、すごく寂しかった。その四人と合流しようとしても、ガラスが私を阻む。おしゃべりの輪に加われない。ガラスは壊そうとしても、壊れない、壊れなかった。

 すごく落ち込んだ。誰にでも、気の合う友達、そうでない友達はいるから。だけど、見せつけられるとすっごく悲しい。

 知ってしまうと、伝えてしまうとうまくいかないこともある。

 それを、実感した。

 水曜日、家に帰るとママがタルトを用意してくれていた。

「美味しい、このタルト何て言うの?」

覚えておこうと思い聞いてみた。あと、お店も。すると、ママは

「『ウィークエンドシトロン』って言うの。不思議なお店で、クマのぬいぐるみが働いている『ダンプふヌーデル』って言うお店で買ったんだよ。」

 あっ! 心の中で思った。

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ダンプフヌーデル @friendperfume

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