恐い女達(1)
幼稚園から小学校の低学年にかけて、タカナシは完食という名の拷問を受けていた。
毎日毎日、みんなが遊んでいる中、食べ終えられない自分だけが、レジャーシートや椅子の上で、イライラした先生に怒られて泣きながら食事と向き合わされていた。
ありえないと思うかもしれないが、昔はパワハラやセクハラなんて概念はなかったのだ。
先生に叩かれたりバカにされたり廊下に出されたりも当たり前にあった。
幼稚園の時、給食の時間になるとみんなで屋上にあがった。
ワイワイと賑やかな声が1人、また1人と減っていく。
最後にはいつもタカナシとT先生が2人きりになった。
「◯組の子はみんな綺麗にお弁当を食べます!食べられない子は◯組の子じゃありません!」
T先生の鬼のような顔にずっと睨まれながら母の作ってくれたお弁当を食べた。
食べても食べても食べ終わらない。
母は、どんどんお弁当の量を少なくし、タカナシの好きな具だけを入れてくれるようになった。
家では普通に食べている物だった。
それでも、食べ切ることができなかった。
おそらく、この憂鬱な時間と恐怖のせいで食欲が落ち、食べられるはずのものも食べられなくなっていたんだと思う。
しまいには、先生が目を離した隙に、アルミの下に卵焼きを隠して蓋をしめるようになった。
恐い恐いT先生に見つからないように
こっそり
こっそり
そうやって食べ終わる頃には、いつも昼休みは終わっていた。
ブラック企業・パワハラのーと タカナシ トーヤ @takanashi108
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