第3話 文化祭前の日

「俺らさ、今日泊まりかな?」

 段ボール素材の看板をせっせと作りながら。クラスメイトの谷川はそういった。今日は文化祭の前日だ。

「どーだろな。作業がやたら遅れてるってわけでもねえし、案外帰れるんじゃないか?つっても解放20時越えるだろうからそっからなら泊まりの方が楽かもしんねーけど」

「だよな~、どうせなら泊まりやりてぇ。そうそう学校泊まるなんて機会ね~し。女子たちごねてくんね~かな」

「女任せかよ」

「男がごねんのと女の子がごねんのとじゃ受け手の儲け感が違うだろ?どうせ同じことやんなら世界に幸福が多いほうがいいって」

「お前女子に聞かれてたら。大分叱責を食らってると思うぞその発言。ま、いーや俺がなんかするわけでもないし。トンカチ取って」

「ん」

「ありがと」

 受け渡しがなされて新たな作業が始まった。

「んで?実際泊まりになったらどうすんだよ。まともな布団とかねーから寝にくいわ風呂ないわでマジでやったら面倒極まりなさそうだが」

「っと~トランプとかUNOとかだよな~。どうせ作業はぱっぱと終わるし。暇つぶしは必要だ。ひと段落ついたらコンビニ行こうぜ」

「こっからコンビニまでどんだけ歩くと思ってんだよお前。でたくねーよお前。家と学校だけで人生完結させてーよ俺は」

「ピーターパンだ」

「俺、ピーターパン見たことないんだよな。どうせなら永遠の18歳とかそういう呼び方にしてくんない?」

「18来てないのに永遠名乗る奴始めてみた18禁が解放されるから?エッロ―」

「人聞き悪いこというんじゃないよ。そうだけど。でも、この前お前の家いったとき富津―に本棚に刺さってたんじゃんエッロー。母親とかなんかいわねーの?」

 谷川はペットボトルの蓋を開け。三口ほど口に含んだ後、答えた。

「かーちゃんBL本あっちこっちに置いてるからなあ。親父もAVそこらにばら撒いてるし」

「エッローの英才教育受けてる……どうやったらその塾入れる?俺も入れてほしい」

「ウチは血統主義でやらせてもろてますからな~。生まれ変わってでなおしてきてもらえます~?」

「くそ、門戸を狭くすることは流派の衰退を招くぞ……。あと何個?」

「んー、看板終わっただろ?で、屋台は5班の仕事だし他もそう、残りはできたこの飾り門をぺたぺた教室に貼っていくだけだべさ」

「なんだもう終わりか。俺らの仕事は……。なあ」

「ん~?」

 こういうことを言うのは結構緊張するでも。

「これ貼り終わったら。帰っちまわねえか?お前の家、寄らせてくれよ」

「い~よう。待つのも手伝いにいくのも面倒だもんな。明日のお叱りはお前メイン盾ね」

「たりめーよ」

 こういうのだって青春の一つでいいはずなのだ。

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見門正の小説日課 見門正 @3kado

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