委員会

 『源氏物語』を借りていった女の子はそれから図書室に来ると私に声をかけてくれるようになった。


「よかった〜 なんか前より笑顔になってみたい」


 話を聞くと、本を読むことでリラックスできてより勉強のパフォーマンスが上がったらしい。彼女は今詰めすぎていたのでちょうどよかったみたいだ。というか私もっとしっかり勉強しなきゃいけない…といってもどうしても本を読んでしまう。女の子に『源氏物語』を貸した3日後。今日は委員会の日だ。


「いってきます!」


 私は今日もいつも通り学校に行く。


◇◆◇


 いつも通り琴葉と学校へ登校して席につく。教室には8時5分。朝の学活が始まる30分くらい前には着いた。そうしたら私は本を読む。学校の朝の静かな時間が一番集中して何も考えずに本が読める。学校だからチャイムが時間を知らせてくれるから、


「集中しすぎて時間がこんなにも経っちゃった!」


なんてことにはならないからだ。私は最近、『本の神様』という小説を読んでいる。高校の図書室が舞台の話で恋愛小説だ。


 本ばかりを読んでいる主人公の男の子とバスケ部なんだけど怪我をしちゃって昔好きだった本を読んでいる女の子の話なんだ。そこに、


『ねえ、知ってる?本には神様がいるんだよ。古い本にはもちろん。新しい本にも、出版された本や出版されていない本、完成されていても完成されていなくても。

 どんな本にもその本を書いた人の想いが籠もってる。本のジャンルもなんだって、誰が書いたかなんても関係ない。本には…物語には神様がいる。たくさんの暖かい想いが…宿ってる。


 ねえ、知ってる? 本は読まれれば読まれるほど強くなるんだよ。読まれてない新しい本の力が弱いってわけでもない。その作者、その本を読む人、贈る人の想いでもまた神様の力が大きくなるの。


 私はね本の神様が見えるんだ。嘘じゃないよ。そしてね、たくさん大事にされてきた本はねその本の持ち主がピンチのときに助けてくれるんだ。いつかはわからないけどその本の神様がパァって出てきて私達に力をくれるんだ。

 ねえ、知ってる?』


 っていうセリフがあって、自分に今起きている魔法の本たちのことがこれに当てはまるんじゃないかなって思って読んでるんだ。


 もしかしたらあの本たちはみんな神様なのかなぁ…そんな事を考えているうちにいつの間にか朝の学活が始まっていた。


◇◆◇


 学校の授業で一番好きなのはやっぱり国語。小説の話の登場人物の心情の読み取りが一番好きなんだ。登場人物になりきって自分が〜だったらこう思っているなぁ…なんて考えて読み解くんだ。たまに問題の作成者の人の意見と食い違って問題を間違えることがあるけど、それでも選択問題はまずまず外すことはないし、記述系も物語の中に答えが書いている。それがいいところ。


 数学は自分で計算しないといけないから間違う心配はないけど、やっぱり大変。証明問題とかもやり方をしっかりしていないとやっぱり解けないんだ〜

 

 あ〜ぁ。勉強しなきゃなぁ〜学校の授業は一応ついていけるので私は塾には行っていない。でももうあと1年で受験だ。冬休みからは冬期講習に行かなきゃいけない。なんとか今の図書室に長くいれる間に『折り紙図鑑』さんの手伝いをできるだけしなくちゃ。


「栞!次、移動教室だよ。」


「えっと〜理科だっけ?実験かぁ…うまくいくかなぁ」


どうやら1時間目の授業は理科で、実験らしい。


「酸化還元反応でしょ? 大丈夫大丈夫。ただ燃やすだけだよ」


「そうは言っても…」


「ほら、グズグズしてないで行くよ!」


 そうして私は琴葉に連れられて2階の教室から1階の理科室に行った。理科の実験は適当に先生がくじで班を決めらているので、たまたま琴葉と同じ班なのはありがたい。というか私と琴葉はいつでも何故か小1の頃からずっっと同じクラス、同じ班だ。高校も一緒の高校にしようって言っている。かれこれ8年の仲だ。


 そんな琴葉は私よりも数学とか理科が得意で私にいつも教えてくれる。話ts士は手先がそこまで細かくないこともあって実験とかが苦手だ。でも琴葉がいるなら何でもできそうな気になってくる。


「はい。それでは、今日は酸化銀の還元をやっていきます。みなさん机の上にガスバーナーと試験管、それに今私がいる机から決められた量の酸化銀を持っていってくださいね」


 そう言って実験の準備が始まった。私はガスバーナーを取りに行く。ガスバーナーってやっぱりなんか怖い。ここからすごい勢いで炎が出るし何より熱そうだ。


 そして実験が始まった。始めに試験管の中に酸化銀を入れて、ガラス管が着いたゴムの栓で蓋をする。そしてそのガラス管にゴムチューブを付けて、ピンチコックをくっつけて、またガラス管をつける。そしてそのガラス管の先を水が入った試験管に入れて、なんか台に試験官をつける。そしてガスバーナーを付けて加熱する…


 もうここまでだけど頭が混乱してくる。それなのに琴葉は難なくこなしていく。本当にすごい。尊敬しちゃう。ガスバーナーを同じ班の男子につけてもらい、私は炎を眺める。安全眼鏡越しなので少し汚れて見えるけど炎って本当に綺麗。赤と青の境目のところとか本当に癒やされる…


 3,4分時間が経つと、ガラス管から空気が出なくなってきたのでガスバーナーの日を止める所まで来たらしい。


「よし、ガスバーナーの火を消そう!」


「あっ待って!」


 何やら琴葉が止めてきたが、私はガスバーナーの日を止めるのに集中していて気づかなかった。日を止めてしまったその瞬間。試験管の中に水が入ってきて一瞬で試験官が破裂した。


「キャァァァァァァァァァ!」


「ピンチコック閉めてガラス管をビーカーの水から出さないと!」


辺りには割れたガラスのかけらなどが飛び散り、騒然となった。


◇◆◇


 幸い誰も怪我していなかったものの、私はすごいショックを受けた。


「やっちゃった… そうだよね。しっかりプリントにも教科書にも ⚠注意 って書いてたよね…」


「まあ大丈夫、そういうときもあるよ」


「やっぱり私実験嫌い。手順とか本当に覚えるの苦手だもん。すぐにパニクっちゃう」


「栞は…文系だもんね」


「うん」


そんな感じで今日は大変な日になった。


◇◆◇


 大変な授業だったけど、今日は委員会の日だ。私は委員長なので先生に委員会の進行などを任されている。今日の議題は『春休みの蔵書点検について』だ。春休みは年に一度の蔵書点検をしないといけない。本がしっかりと返却されているか、正しい場所にあるかを全部確認する大変な作業だ。


「こんにちは。それでは第11回図書委員会を始めます。 それでは今日の議題についてです。プリントを見てください。今日の議題は『春休みの蔵書点検について』です。春休み中に蔵書点検をになければいけないので、その方法の確認と当番の予定日を決めます。2枚目のプリントを見てください。蔵書点検は全てパソコンにバーコードで入力して行います。00総記から始めて90文学に向けてやっていきます。この学校の図書室は見ての通り、カウンターに向かって左側から小さい番号順に並び、90文学が追加で分かれています。なのでそこから順にやっていきたいと思います」


「はい。本間さんありがとうございます。では私の方から蔵書点検のやり方を説明しますね」


 司書の佐々木さんが補足説明をしてくれる。 私はパソコンもそこまで得意ではないので今年の蔵書点検大丈夫かなぁ…

 

 そうして佐々木さんの蔵書点検の方法のレクチャーで終わった。委員会の後は図書館の掃除だ。毎回早めに委員会を終えて掃除をする。この学校は図書館の清掃当番がないので図書委員でやらなければいけない。私はこういうのが嫌いではないので良いと思っているが、中には早く部活に行きたい体育会系の男子もいる。床を掃き掃除して、机を拭き掃除、本棚をふわふわのワイパーのやつで優しくホコリを取っていく。すると


「栞ちゃん綺麗にしてくれてありがとうね!」


そう本棚からたくさんの声が聞こえた。『折り紙図鑑』さんは


「私たち本はね、太陽に当たりすぎると日焼けするし、湿度が高すぎるとカビが生えちゃったり、背表紙が傷んじゃったりするんだ。それをあなた達図書委員の子たちがやってくれるから私たちも元気にいられるのよ」


 そう声をかけてくれた。一応委員会中で、他の委員の人達は私は本たちの声が聞こえることを言っていないので心のなかで返事をするだけにとどめておいた。


 掃除が終わって、みんなが帰った後に佐々木さんにそのことを話すと、


「そう、良かったわね。本は結構痛みやすいものだからしっかりしないと行けないもの」


 とにこやかに笑って答えてくれた。そうして完全下校の時間まで図書館を綺麗にして少し飾りを作って今日は帰った。


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こちら魔法の図書委員会 功琉偉つばさ @WGS所属 @Wing961

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