大文字伝子が行く277
クライングフリーマン
『水面下の闘い』
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
高坂(飯星)満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
玉井静雄・・・コスプレ衣装店{ヒロインズ}店長。みちるの忠実な『執事』のような男で、EITO協力者。
枝山浩一事務官・・・EITOのプロファイリング担当の警視庁事務官。
=================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
『明日。泥棒に気をつけろ。ケン。』
午後8時。伝子のマンション。
原稿を書いていた伝子は、思い切って、ケンから預けられた『使い捨てスマホ』に電話してみた。スピーカーをオンにした。
「手紙?そんなものは出してないし、置いてきていない。先日、王子と訪日して以来、こちらにいる。よく見るんだ、大文字。以前、教えた、暗号が浮き出るかどうか、確認してみろ。」
伝子は思い出した。『あぶり出し』だ。ケンは紙の手紙を寄越す場合は、あぶり出しを仕込む。柑橘類を使った、昔ながらの暗号手法だ。もし、ケンからなら(もう本人は否定しているが)、『大文字伝子』の五文字の内、一文字が浮き出てくる。
高遠は、台所に手紙を持って行き、あぶってみた。首を振って、伝子に伝えた。
「今、確認した。言われた通り、『偽物のケン』からだった。一体誰が?」
「考えられるのは、ピースクラッカーだろう。どうも、今回は邪魔が多いようだから、また大文字達を使って排除する積りかも知れないな。済まないが、今の所、渡航出来ない。自分たちで何とかしてくれ。あ、それ、替わりのスマホを手配しておく。電源切ったら、自動的に使用不可になっているからな。」
「このスマホは自動的に使用不可になる・・・かっこいいな。本郷君に、Base bookの隠し音声がないかどうか調べて貰おう。」
午後9時。
本郷から、折り返しの連絡があった。EITO用のPCのディスプレイに本郷が映っている。
「手が込んでるねえ。投稿のソースを開いてみたら、タグの『隙間』にダウンロード出来るファイルのURLがコメントアウトしてあったから、ダウンロードした。それで、そのファイルの圧縮データを解凍して、初めて隠し音声が出てきた。再生するよ。」
「アナグラム自体は、簡単だから、すぐ解ける。敵は、埼玉の工場を襲う。日時は分からないが、エイラブ系だ。また『貸し』が出来るようだが、君たちなら片づけることが出来る筈だ。手紙と『合わせ技』だ。健闘を祈る。」
「ウチは、ピースクラッカーの下請けか?ギャラくれるのか?」
伝子の冗談に、高遠も本郷も笑わなかった。
「ダウンロードした後に、そのURLはすぐに無効になった。ピースクラッカーは、コンティニュー並みに、ITに詳しいね。」
事態は深刻だ。急を要する。
まずは、アナグラムの解析だ。高遠は、このまま本郷の知恵を借りることにした。
『早い 馬鹿な 鈍磨』。これが、最新のピースクラッカーの投稿でのアナグラムだ。
「本郷君。『ど真ん中 刃』だと思ったんだけど・・・。」
「自信が無いんですか?高遠さん。大丈夫です。その解だと思います。ただ、何を意味するかですよね。場所なのか、時間なのか?『合わせ技』って手紙に書いてあるんですよね。こっちは、アナグラムじゃないから、日にちは明日ってことになる。泥棒は比喩なのかな?暗喩?そのまま解釈すると、何かが盗まれることになりますね。隠しファイルには『埼玉の工場を襲う』ってある。核心に触れることだから、どうしても隠したかった。どうやって、その情報を得たかも気にかかるけど、工場で、盗まれるとヤバイものを作っているのかな?」
2人の会話に、伝子が割り込んだ。
「隠しファイルがあったことから推測出来るのは、お互いにスパイがいる、ってことじゃないのかな?投稿に直接書かないのは、相手へのけん制もあるが、スパイの容疑者、いや、候補が特定出来ないのかも知れない。ピースクラッカーは。それと、『泥棒』情報は、ピースクラッカー側のスパイだ。」
「成程。あ。工場なら、三美さん、詳しいかな?」と高遠が言い、伝子は芦屋三美に電話してみた。
「今、裸なんだけどな。」と言いながら、三美は笑った。
「今、東京事務所。」「相変わらず、西に東に、忙しいんですね。」と、高遠が言うと、「そうよ。忙しいから、早く済ませて。」と三美は言った。
伝子は、手短に事情を話した。
「ふうん、早く手を打たないと、正にヤバイわね。該当する工場は、ここよ。」
三美は、スマホを離して、自分の後ろの黒板に何やら書いた。この芦屋グループ東京事務所は、元々は、廃校になった小学校である。
三美は、スマホに自分の後ろの黒板を見せた。「見える?」
黒板に書いてあったのは、『株式会社忍足防護服』と『防刃服』だった。
「ここはね、防護服を使ってる会社よ。世間には知られていないけど、警察の防刃服(ぼうじんふく)を作っている会社なの。防刃衣(ぼうじんい)とも言うけどね。色んな工場が、埼玉県にはあるけれど、『盗まれてヤバイ』のは、ここだと思う。それから、この会社名、じっと見て。何か見えて来ない?」と、三美は言った。
3人は声を揃えて叫んだ。「やいば!」
「大阪だったら、ウチの系列の警備会社の警備員を送るとこだけど、警護はEITOとSATに任せるわ。あ、埼玉県だった。」
SATは、基本的には、東京都の特殊警備を担う。特別に出動させるには、東京都知事の許可が必要だ。
「何とかします。」伝子には,奇策があった。
翌日。午前10時。埼玉県春日部市。株式会社忍足(おしたり)防護服の工場。
「おい。全員縛ったか?」「はい。」「じゃ、運べ。」「あのう・・・。」「何だ。防護服にしては、軽いし、刃を通すような感じに見えないんですが。」
「そうだろうな。」と、エマージェンシーガールズ姿のなぎさが言った。
「従業員は全員開放した。PCをハッキングして、データを盗む気でいたようだが、先手を打っておいた。ここもだ。お前達が運んだのは、警察の防護服じゃない。コスプレで使う、警察の防護服のレプリカだ。観念しろ。」
男達は、想定外の為、銃火器を持ってきていない。ナイフを持っている者もいたが、役には立たなかった。20人の『賊』は、20人のエマージェンシーガールズの敵ではなかった。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。
午前11時。EITO東京本部。司令室。
伝子は、成果を聞き、満足をした。
「よし、帰還だ!!」
午後1時。EITO東京本部。会議室。
枝山事務官は言った。「味方した、というよりは、体よく利用された、というところですか。私が考えるに、エイラブ系組織ピスミラは、ピースクラッカーの配下として。ジャッキーを送り込んでいたのでしょう。そして、EITOの圧勝。見せしめに『枝』を枝に吊した。『2重スパイの末路』です。そして、ピスミラに送り込まれたスパイから防護服、いや、防刃服の強奪計画を知ったピースクラッカーは、ケンの振りをして、EITOに捕まえさせた。」
「枝山さん、じゃあ、我々は、スパイ合戦に巻き込まれた、ということですか?」
「そういうことです。本郷二尉の話だと、かなり手の込んだ通信だったそうじゃないですか。明日、変な死体があがらなければ、『水面下の闘い』は、ピースクラッカーの勝ちということになる。それにしても、よく間に合いましたね、偽物の服。」
枝山の疑問に、事もなげに、「我々には、『水面下の部下』がいるので。」と応えた。
事情を知っている、理事官や夏目警視正は苦笑した。
水面下の部下の部下とは、みちるの『手下』の、コスプレ衣装店{ヒロインズ}店長玉井のことだ。
「ピスミラは、防護服が足りないんですか?」と江南が尋ねた。
「足りないのも事実だろうが、『日本製』に拘ったとも思える。知っての通り、警察は銃火器禁止だ。拳銃は『特別な場合』のみ『威嚇』で使用する。一般の警察官の制服も頑丈には出来ているが、『特別な場合』には防弾チョッキを着る。SATや機動隊は常用しているが、やはり、危険が伴うから、防刃服は必須だ。因みに、防弾チョッキは、別の業者が製造している。奴らは、自分たちの戦闘に利用する積りだったのに違い無い。ブランドとしてでは無く、日本人に汚名を着せる為に。何か駄洒落みたいだが。」と、理事官は言った。
午後3時。ヒロインズ。
「玉井さん、ありがとうございました。無理を言いまして。」と、伝子は玉井に頭を下げた。
「いえいえ。白藤様の命令だから無理した訳ではありません。実は、あの手の服は売れ筋なんですよ。アーミーゲームって、ご存じですか?」「迷彩服着て、追いかけっこする奴ですか?」「ええ。それの発展版みたいなのがあって、通常の服だと敵から身を守れないから、何とかして、あの防護服を着る訳です。本物のナイフや銃剣が刺さる訳じゃないから、デザインだけで軽いんです。いつでも、ご用命下さい。」
「おねえさまから事情はお聞きしましたが・・・。」「しっ、それ以上は・・・。私は、白藤様の僕。それで結構です。それにただで提供している訳では無く、ユニフォームを含めてEITOから、お支払いして頂いておりますから。」
「わかりました。それで・・・。」「乳幼児の服ですね。カタログ、ご用意しました。また、ご用命下さい。」
伝子は、玉井に挨拶を済ませ、なぎさの待つ車へと急いだ。
車の中では、なぎさが、四方八方のカメラの映像で、不審者がないかを確認していた。
「おねえさま。池上病院?」「ああ、頼む。」「いつか・・・おさむ君、抱かせて貰っていいですか?」「今日にしろ。命令だ。」「はい、おねえさま。」
伝子のスマホが鳴動した。高遠からのメールだった。「おむつ、買った?」
「ふん。」と、伝子は鼻で笑った。
―完―
大文字伝子が行く277 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
43年ぶりの電話/クライングフリーマン
★18 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます