短歌二十首連作 疾病

疾病

搾取子の 苦悩を塞ぐ 母の声 古い包丁 何も知らずに

過多月経 子宮ポリープ 電気メス 取っ払ったが 心は癒えず

席譲る 手術後安静 市営バス 古稀の各々 視線が怖い

枯れツツジ 気が付きゃ花が咲いている 休職からは 浦島太郎

不安症 サイレンの音 曇り空 我が家の猫は 夢にいずるか

病院が 迫り来る程 胸疼く 行けば治ると 信じていたい

精神科 孤独の癒えぬ 長椅子で 隣の人の 声は解かれず

予約した 時間は三時 今は四時 診察室から 悲鳴が聴こえ

悪びれず 何時に来たの？ 二時半です そりゃあ待ったね そ、そうですねえ

最近は 天麩羅なんかを 揚げました 掃除も少し 今日は苦しい

就寝は 三時起床は 五時でした 睡眠薬を いただけますか

もう少し 強い薬が欲しいです 諸刃の剣 まだ駄目ですか？

依存性 ギャンブル 自助会 アルコール 処方薬にも 依存しますか

恒例の いつ治りますか どうだろう カード決済 診断書代

｢鬱病に かかってる時は 別人です｣ 今のわたしは わたしでしょうか

調子どう？ 夫に問いかけ ほっとする 私のように ならないでくれ

買い弁に ささっとなめこの お味噌汁 ハードル下げて 今日は合格

黒猫に 添い寝をしてと 懇願す 記録一分 気分じゃ無いね

不眠症 自分を虐めた 二十年 お前は病気 時間よ戻れ

優しさを 溢れる程に 注がねば 心はひとつ 代わりなど無い