第5話 Eキーで超アイテム取得
ドッ……ドッ……ドドドドドドドドドッ!(マイ心音)
気持ちスピードを落としてくれた馬車の中(気を利かせてくれてサンクス、馬に乗ってるルピオ!)で俺とアイリスは肩と肩、二の腕と二の腕をくっつけあって、お尻同士なんかもちょっと触れ合ちゃったりしててお手々も恋人繋ぎで相手の体温のみならず鼓動まで聞こえてきちゃうってな感じで、でも一線は越えずこのままの体勢で互いに固まって過ごしたわけで。
アイリスのふわっふわな巻き毛が俺の肩に乗っちゃったりしてて。
その毛先が俺の鼻先をくすぐったりしちゃってて。
あぁ、青春……。
俺、今生きてる……。
こんな超絶可愛い爆乳美少女姫と夢のようなひとときマジで……。
これもう全世界線の俺の中で一番幸せなピークタイムだろ……。
そんな感動に打ち震えていると、あっという間に着いちゃったよね。王都セラムフィル。はぁ……ざんねん……。
「私、ゼン様のことがとても気に入ってしまいました。またお会いしましょう」
マジ天使アイリス(99%の確率で姫、いわゆるプリンセス)は、にこやかにそう言うと執事やら衛兵らしい人たちに大事に連れられて去っていった。グッバイ、アイリス。俺の人生初恋人繋ぎの相手よ。たぶんもう会うことはないだろうけど。だって向こうは(99.9%の確率で)姫。で、俺無職(しかも無一文)だもん。ぴえん。
さぁ~て、キーボードスキルだけを持たされた俺はこれからどうしましょうかねと思ってると商人のルピオ声をかけてきた。
「よければ、命を助けていただいたお礼をさせていただきたいのですが」
商人かぁ。
会ったばかりの男と二人というのもちょっぴり微妙だが、姫の極秘の護衛を引き受けるくらいの人だ。
まぁ、悪いようにはならんだろう。
ってことでお礼、してもらっちゃいますか。
◇◆◇◆商工ギルド長室◇◆◇◆
シャンデリア、どーん!
金無垢の屏風、どか~ん!
壁一面に竜の彫り物ずどど~ん!
和洋中すべての趣味の悪い成金感を詰め込んだかのような部屋に通された俺は、ふっかふかのソファーの上で落ち着きなくキョロキョロをあたりを見回していた。
「いやぁ~、すみません。こんな下品な部屋で。お恥ずかしいことなのですが、これも商工ギルドの長として威厳を見せつけるのに必要なことなんですよ」
糸目の男ルピオはさっきまでの商人風の装いの上から厚手のロングジャケットを羽織って頭には赤と金の織りなすターバンを巻いている。
いきなりオーラが半端ない。
あれ、俺もしかしてこれまでエラい人にタメ口聞いてたんじゃ……?
「あぁ、いえ、立派なお部屋だと思いますですよ、はい」
ぎこちねぇ~!
だってしゃあなし! 敬語なんて普段使わんもん!
「ふふっ、そんなに固くならなくても大丈夫ですよ、ゼン様」
「いや、っつっても偉い人ですよね? そんな人に俺……」
「ゼン様は私の命の恩人です! そのような方にお気を遣わせてしまったとあっては、このルピオ立つ瀬がございません!」
めちゃめちゃ真剣な眼差し。
いや、糸目だからよく見えないんだけど、たぶん真剣。
「そうか……。うん、ならこれからもよろしくな、ルピオ!」
「はいっ!」
人懐っこい笑顔。
俺の心もほわっとあったかくなる。
まったく商工ギルドの長ってだけあって人
「では早速なのですが、お礼の方をさせていただいても?」
「あぁ、させていただいてもオッケーだ!」
そう答えた瞬間にザッ──とカーテンが引かれ、その奥にめっちゃ金銀財宝やら武器や防具やらが置いてあった。
「え……これ……まさか全部?」
「はい、全部です!」
「マジ……?」
「マジです!」
一点の曇りもないルピオの顔。
その横でカーテンを引いた役の職員二人が「無」の顔をしてる。
そらそうだよね、「なんでこいつに?」って感じでしょうよ。
「ただぁし! 私はゲームが好きでして!」
「ゲーム?」
「はい、ゼン様が馬車の中で見せた『インベントリ』なる能力。それによって私が三十数える間に所持出来た物のみをお持ち帰りいただく、というのはいかがでしょうか?」
う~ん、これが商工ギルドの長。
お礼をあげる間にも俺のスキルを観察して使えるかどうか試すみたいな感じかな?
ま、別にこっちは見られて困るようなこともないし、いっか。
「三十って長くない? たぶん十もあればいける」
「……しかし、ゼン様は手に取らないとインベントリに物を移せないのでしょう?」
「いや、これでイケるはずだ……『E』!」
ピカッ──。
俺の右胸に『E 』キーが生えてきた。
ここかぁ……。
まぁ、心臓じゃなくてよかったかな。
心臓だったら連打したらハートブレイクショットでグッバイ今世だもん。
「これは……新たな『キー』というやつですか?」
「ああ、そこの職員さんに手伝って貰う必要があるけど」
やっぱりだけど、このキーも……固い。
◆ちょっと後◆
「ほんとにいいので……?」
頭(ターバン)と手に布を巻いた職員二人がおずおずと聞く。
「あぁ、構わん。やってくれ」
「旦那がそこまで言うんなら……いきますっ!」
「かも~ん!」
打打打打打打打打っ!
二人のターバン男が俺の右胸Eのパンチキーを連打連打連打。
すると。
シュシュシュシュシュン!
目の前のアイテムが次々と消えてインベントリの中へ移っていく。
「こ、これは……!?」
ルピオが驚愕の声を上げる。
「これはいわゆる『拾うボタン』だ!」
「ひ、拾う……。こんな、こんなことが……! なんというすごいスキルだ……! これさえあれば流通の常識をすべて覆すことが出来る……!」
俺はEキーを殴られながらゆっくりと体を半回転させる。
打打打打打打打打っ!
シュシュシュシュシュン!
周囲のアイテムがみるみる俺のインベントリの中へと吸い込まれていき、十を数える間もなくすべてのお礼品を回収しきった。
驚愕の表情を浮かべるルピオ。
「は、はははは……! なんだこれ……すごすぎる! すごすぎます、ゼン様! ぜひ、我が商工ギルドの職員として迎えさせてください! 私に次ぐ重役として起用させていただきます!」
「え~、やだ」
「(が~ん!)な、なぜ……!」
「だってさ、俺まだ子供なんだよね。就職したくない。お金は稼いたいんだけど、なんつ~か自分のスキルのこともよく
本音。
だって、ほら。
俺、ゲーマーだぜ?
FPS、TPS、RTSなんでもござれよ。
そこにほら、スキル『キーボード』でしょ?
こんなん楽しみまくるっきゃないっしょ!
さいわい王都にも来れたし、ここで生活の基盤を築いて冒険してみたい。
それに……異世界だぜ?
やっぱしたいじゃん、冒険!
ただのインベントリ職人としてトラック代わりさせられるのなんてマジ勘弁。
「ふふっ……そうですか……そうですよね……わかってましたよ、ゼン様は私たちごときちっぽけな器に収まりきれる方じゃないってことは……」
いや、それはさすがに持ち上げすぎだけどな?
「わかりました! では、我々セラムフィル商工ギルドは、これからゼン様の冒険のお手伝いをさせていただきます! 今後はなんなりとご相談ください!」
「うん、心強い。こちらからも頼む」
こうして俺は王都の商工ギルドを味方につけ、共に旅する仲間を探すべく冒険者ギルドへと向かうのであった。
PS.商工ギルドで飲んだお茶、めっちゃ美味しかった。
────────────
【あとがき】
ノリでアドリブ書きし始めたんで、ここで完結します!
5話がテンポよくかけて満足しました!
王道書く時はちゃんと序盤を練ってから投稿しますね!
5話まで読んでくれてありがとうございました!(たぶん、しばらくしてからこれ非公開にすると思います)
エンターキーで戦うことになりました ~スキル「キーボード」で生き抜く異世界生活。体に生えたキーは女どもに押させます。って……そんなに強く押しちゃらめぇぇぇぇぇ!~ めで汰 @westend
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