オチャメな魔族とレンガ掃除

フィステリアタナカ

オチャメな魔族とレンガ掃除

「ふぉふぉふぉ。わらわは火星人なのじゃ! 掃除はお手の物なのじゃ!」


(火星人? ああ、掃除だから家政婦って言いたいのか)


 オレの名前はロン。オレはジン国王に頼まれ、彼の住んでいる四階建ての建物の外壁を、眷属であるポンコツ魔族のタンヤオと一緒に掃除することになった。


「タンちゃん。四階の壁に向かって水鉄砲ウォーターガンをやってくれないか?」

「ん? 主、四階とはどこぞ?」

「建物の一番高い所だよ」

「ふぉふぉふぉ。お安い御用なのじゃ!」


 オレはタンちゃんに指示をする。今回の外壁掃除については、ウンディーネが放つような水流で、壁の汚れを落とす作戦で行くことにした。


水切断ウォーターカッター!!』


(あーあ、やりやがった。チェーンソーもビックリな切れ味だよ)


 タンちゃんはレンガの壁を水で切断していく。四階から一階に走る亀裂を見て、オレは頭を抱えた。


「ふぉふぉふぉ。わらわは万能なのじゃ! ふい!」


 タンちゃんが水平方向に魔法を放つ。一階部分のレンガがぶっ壊れ、その部分の外壁が壊れていった。


「なあ、タンちゃん」

「ん? 主、どうしたのじゃ?」

「何で水切断ウォーターカッターを使ったの?」

「壁を綺麗にするのじゃろ? 切断面を見れば綺麗になっているぞよ」


(ああ! もう!)


「ジンが大丈夫かどうか見にいくぞ!」

「ほう。王のお菓子が無事か、見にいくのじゃな」


(お菓子の無事じゃなくて、命の無事だよ)


 オレが建物の外壁に近づくと二階以上の部分のレンガが崩れてきた。


(あっぶね)


「これじゃ、ジンを探すの難しいな。タンちゃん、何してくれてんのよ」

「主。王ならあそこにいるぞよ」


 タンちゃんがそう言うので周囲を見てみる。すると客人達を引き連れていたジンが、困惑した表情でこちらに来て、タンちゃんに言った。


「タンヤオさぁ。何で壁を壊したのよ? 掃除をしてくれって言ったんだけれど」

「王よ。このレンガを見るぞよ」


 そう言ってタンちゃんはレンガの切断面をジンに見せる。


「なるほど」

「ふぉふぉふぉ。わらわは綺麗にしたのじゃ。王よ、お菓子を寄越すのじゃ!」

「確かにこの面は綺麗だね。でも、これは掃除じゃないから一週間おやつ無しで」

「な、な、何故じゃ! 王!」

「だって見てみなよ。建物が崩れているでしょ? 綺麗にするって意味をちゃんとわかってる?」


(ジン。その質問の仕方はヤバいぞ)


「わかったのじゃ。ちゃんと綺麗にするから、お菓子をたくさん寄越すのじゃ!」

「タンちゃん! 綺麗って、更地にする――」


『インフェルノ!!』


(あーあ。全部吹っ飛ばして、綺麗さっぱりにしたよ)


「ジン。すまん、オレとしたことが。住むところ吹っ飛ばして」


 オレはタンちゃんのしでかしたことを、ジンに謝った。


「ロン、気にしなくていい、大丈夫だよ。みなさん、ご覧になられましたか? 我が国に宣戦布告をする国は、すぐにこのようになりますので、十分に注意をしてください」


 そう客人達に説明するジンを見て、オレは改めてジン国王の器の広さを思い知ったのであった。


(オレは心が狭いからな。タンちゃんは一か月お菓子抜きにしよう)

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