いつまでも輝く母へ

下東 良雄

母への手紙

 母さん、こんな手紙を送るのは初めてだね。

 世の中ではちょうど母の日だからさ、僕も母さんに何かを贈りたいって考えて、思い切って筆をってみました。

 とは言ったものの、手紙なんて普段書かないから何を書いたらいいのか正直戸惑ってるけど、やっぱり今の自分の思いを伝えたいから、率直に僕の思っていることを書くことにするね。


 母さんにずっと育ててもらって、僕もこんなに大きくなった。

 ずっと僕を支えてくれて、本当にありがとう。

 母さんが優しく見守ってくれていたからこそ、ここまで立派になれたんだって思ってる。

 でも、僕ら兄弟は喧嘩が絶えなかったね。大きな喧嘩も何度かあった。取っ組み合って、殴り合って、お互いに大怪我したりもしたけど、懲りずに今でも喧嘩することがある。その度に母さんには心配をかけていたような気がする。母さんは放任主義っていうのかな、喧嘩する僕らを悲しそうに見ていたよね。わかってるんだ、僕たちだって。喧嘩なんてしたらダメだって。でも、ぶつかりあっちゃう。悲しませてゴメンね。


 それでも僕ら兄弟は、時に手を取り合いながら頑張ってきたんだ。幸せになりたいって。

 でも、そのことで母さんを随分傷付けてきた。忘れていたんだ、母さんが身を削って僕らを助けてくれていたことを。


 そう、忘れていたことは僕ら兄弟の罪だ。


 母さんがいることが当たり前になっていた。

 母さんが助け、支えてくれることが当たり前になっていた。

 母さんはひたすらに身を削り続けていたというのに。


 優しい母さんだって怒るよね。時に怒りを爆発させることもあったけど、母さんは怒りを静かに溜めていき、そして今、静かにその怒りを僕ら兄弟に向けている。

 昔は母さんにいだかれながら生きていることを理解していた。だから、僕らは母さんを本当に尊敬していたんだ。

 でも、いつからだろう。そんな気持ちを忘れてしまったのは。目先の幸せに飛びつき、その影で母さんが泣いていたことに気付こうとしなかったのは。


 今さらなのかもしれない。今さらなのかもしれないけど聞いてほしい。僕ら兄弟は、ようやくその罪に気付き始めたんだ。そして、それがどれだけ重い罪なのかを理解し始めたんだ。わかってる。母さんのこれまで我慢してきた怒りがそんなことですぐには冷めやらないことを。でも、だからといって母さんをもうないがしろにはしない。きっと母さんに優しい笑顔を取り戻してみせるよ。

 それでも気持ちが収まらない時は、僕らを厳しく罰してほしい。罪を犯した僕らは罰を受けなければならないのだから。


 母さん、最後にこれだけは言わせて。

 愛してる。

 愛してるよ、母さん。

 本当に本当にありがとう。

 いつまでも美しく輝いていてね。


 永遠の愛を込めて。




 母なる地球へ


 人類より



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