Merry reunion
iX白
Merry reunion
シノとお姉さんは幽霊
マサシと前世マサシは同じ役者さんで同じキャラの現世と前世の姿
シノの声は、舞台上にマサシがいないか、マサシがスマホを耳に当てている時(シーン13を除く)だけお客さんにも聞こえる
シーン1
大学前 SE うぐいす ガヤガヤ
マサシ シノの順でイン
マサシ 学校を見て不思議そう
マサシ「あれ、思ってたより綺麗だな……。え待ってもうグループできてる……、初日なのに……。陽キャこわっ」
マサシ「えーっと、ガイダンスの場所は……第三講義棟……?第三なんてあったっけ?」
プリントを見ながら
その後別の紙を出して地図を見る
マサシ「あ、あった。第三なんていつの間に……」
シノ マサシを撮影し、満足げな顔をし電話をかける
マサシのスマホに着信
マサシ「おわっ!?」
マサシ「……もしもし」
シノ「私、メr」
マサシ振り返る
シノ「あっ」
マサシ「うぁっあっえっあ……。……あ、あ!今電話してくれた人ですか……?」
シノ頷く
マサシ「あ、えっと、よかった、みんなもう友達できてるみたいで……あ!あのっえっと、あ!こ、これ!LINEのIDですっ!よ、よろしくお願いします!!!」
シノ「え……?」
チャイム
マサシ「あ、じゃ、じゃあ俺はガイダンスあるんで、し、失礼します!」
マサシ ハケ
シノ「……え?」
マサシの背中と電話と紙を交互に見る
袖から
マサシ「ん?え?ん?……ん?……ん!?」
マサシとぼとぼイン
マサシ「(ため息)あ、さっきの……。ガイダンス明日でした……。早起きしたのにぃ」
シノ 携帯を耳に当て何かを喋る
マサシ「え??」
シノ、携帯を指差してアピール
マサシ「え、ああ、電話……。繋がったままだったんですか?」
マサシスマホを耳に
シノ「まぁ、はい」
マサシ「あ……お、お見苦しい、じゃない、お聞き苦しい……?声を……すみません、」
シノ「あ、いや、ううん」
無言の時間
シノ「あの、えっと、が、ガイダンス?明日なら、良かったんじゃないでしょうか?その、昨日だった、とか遅刻したとかよりは」
マサシ「あ、まあ、そうですね、ありがとうございます」
間
マサシ「あ、あの、よかったら、学校、探検っていうか、どこに何があるのか把握しようの会、みたいなの、これからどうですか?」
シノ「え、あぁ、はい、いいですよ」
マサシ「ありがとうございます!そしたらまずこの、第三講義棟行きませんか?俺のガイダンスの会場そこなんです。いつの間にかできてて、よく知らないんです」
シノ「ほんとだ、こんな建物あったんですね」
マサシ「ですよね?いつの間に……。あっちにあるのでとりあえず行きましょ!」
二人ハケ
暗転
シーン2
数ヶ月後
夏 SEアブラゼミ
マサシとシノは電話で話す
シノがベンチに座っていてマサシが入ってくる
マサシ「おつかれー」
シノ「おつかれさま」
マサシ「3限さー、期末のレポートの話されたんだけど5000文字だって……。そんなに書けないよぉ」
シノ「ふふふ、あの先生やっぱり厳しいんだね。中間の時もかなりの文字数だったもんね」
マサシ「そうなんだよぉ、他の授業のテストとか課題もあるのにね!!ほんと厳しいよぉ」
シノ「まぁまぁ。また深夜でも作業電話付き合うからさ、頑張ろ?」
マサシ「うぅぅ、ありがとぉ」
シノ「中間テストだって課題だってなんだかんだ言いながら頑張ってたし成績も良かったじゃない?君はやればできる子なんだよ〜」
マサシ「わーー優しさが沁みるっ」
シノ「もー大袈裟なんだから」
マサシ「大袈裟ぐらいがちょうどいいんだよ。気持ちを伝え合う、コミュニケーションー!」
シノ「ふふふ、まぁそうだねー」
マサシ「でも俺らは携帯越しのコミュニケーションだけどねー」
シノ「あ……ごめんね」
マサシ「あー!いやいや、俺の方こそごめん……」
間
SE 風鈴
マサシ「夏だね」
ちょっと気まずくて
シノ「そうだね」
マサシ「課題が終われば夏休みだなぁ」
シノ「……ねぇ、夏休みになったらさ、あのおっきな橋の下の河原とかさ、商店街のお祭りとか……、あ、あと遠くの花火大会、よく見える場所知ってるんだ。一緒に、どうかな?」
マサシ「え、行きたい!」
シノ「よかった。じゃぁ課題がんばってね?」
マサシ「うん、やる気出た!」
シノ「よかったぁ」
マサシ「うん!そしたら、早く帰ってレポートやっちゃおう!」
シノ「おぉ、そんなにやる気出してくれたんだ」
マサシ「当たり前だよ。夏休みにそういうところ行くのってめっちゃ青春じゃない?」
シノ「青春……確かにそうかもね」
マサシ「でしょ?頑張って早く終わらせるんだ〜。あと、普通に暑い……。早く帰って涼みたい〜」
シノ「そういうことか〜。たしかにもう夏本番だもんね。あ、ねぇねぇ見て、大きな入道雲」
マサシ「ほんとだ!竜の巣みたい」
シノ「竜の巣?」
マサシ「そうそう、ラピュタの」
シノ「ラピュタ……あー聞いたことある気がする」
マサシ「え、見たことないの?珍し」
シノ「え、あーうんそうなんだ。うちテレビないし、映画館にも行かないから……」
マサシ「あーなるほど、じゃあ……ラジオ使ってるとか……?」
シノ「いや、ラジオもない」
マサシ「え、そうなの……。携帯もガラケーだし……」
シノ「……」
マサシ「まぁでもなんかそういう生活もロマンあっていいよねぇ〜」
シノ「え、ああぁそうだね」
マサシ「……でもさ、その服はさすがに暑そう」
シノ「え、そう?私は平気だよ」
マサシ「いや、見てて暑いよー」
シノ「えー、って言われても、他の服ないし」
マサシ「え、そうなの……?……じゃあ、こんど一緒に見に行かない?」
シノ「え、あっ。うん……」
シノ何か悩んでいる
マサシ「あ、いや、無理にとは言わないから……。えへへそうだよね、女の子の服なら女の子と行ったほうがいいもんね」
シノ「あ、いや」
シーン3
お姉さんイン 入りながら
お姉さん「おつかれ〜」
お姉さんに気づいてスマホをしまう
マサシ「え、お姉さん!?外にいるなんて珍し。どうしたんですか?何かありました?」
お姉さん「えーお姉さんが外にいるだけでその反応はひどくないかい?」
マサシ「いやだって、いっつもずーっと部屋にいるじゃないですか」
お姉さん「それはそうだけどさぁ。今日はおもしろそうなのが見えたからねぇ」
マサシ「面白そうなもの?」
お姉さん、シノをジロジロと見る
お姉さん「君らだよぉ〜」
マサシ「え、面白そう?まぁでもラピュタ見たことないらしいですよこの人」
お姉さん「え、そうなの〜?珍し〜」
マサシ「でしょ〜。あ、ごめんごめん、この人は俺の隣の部屋で引きこもってるお姉さん」
お姉さん「どうも〜初めまして〜変な紹介の仕方されましたお姉さんです〜」
マサシが携帯を耳に付けていないので
シノ 声が届かない
お姉さん シノをじろじろ
シノ困惑
お姉さん「ふーん、よし、アイス奢ったげるから色々聞かせてくれよ〜」
マサシ「え、お姉さんが奢ってくれるなんて……こわっ」
お姉さん「ひどいなぁ」
暗転
シーン4
ベンチにマサシとシノが座ってる
お姉さんは立って二人の方を見ている
アイスを食べているor食べ終わって袋や棒だけ持っている
マサシ「そ、そんなにアイス食べたかったならお姉さんも買ってくればよかったじゃないですか!なんですか、お金だけ渡すから買って来なって、コミュ障がすぎません?」
お姉さん「うるさいなぁ、やむにやまれぬ事情があるのさ〜」
マサシ「へぇ〜」
お姉さん「んで、君どこの子?」
シノ「……(ここが地元です。あっちの2丁目の)」
シノここから口パクで会話する。手振り多めに。
口パクの長さは必ずしもシノのセリフの長さと完全に同じでなくてもいい
二人の会話中、マサシはだんだんと困惑してくるがなぜだかツッコめない異様な雰囲気
お姉さん「あー違う、そういうのじゃなくて……。ほら仲間だから、ね?」
お姉さん 手を広げて自分を見せるように
シノ「……(あーなるほど。確かに、会話できてますもんね)」
お姉さん「そうそう、やっとわかってくれた〜。お姉さんは一目見た時からわかってたのになぁ」
シノ「……(あぁ、それはすみません。えっとそれで、私は……地縛霊、だったんですが……)」
お姉さん「だった……?」
シノ……(はい、取り憑いてた公衆電話が取り壊されちゃって……、今はこの携帯電話に取り憑いてる……みたいな)」
お姉さん「え、そんなことあるんだ。……どこの公衆電話?」
シノ「……(えっと、2丁目の……)」
お姉さん「あー、あの昔大きな交通事故があったところ?」
シノ「……!(それです、よく知ってましたね)」
お姉さん「この街にはずっといるからねぇ」
マサシ「え、あの……、俺、お姉さんの声しか聞こえないんですけど……」
お姉さん「え、ああー……。熱中症じゃない?今日暑いし」
シノ 頷く
マサシ「え、そうなのかな……」
お姉さん「そうそう、私らはいいから先に帰りなー」
シノ 超頷く
マサシ「まぁ、そういうことなら……。じゃぁまたね?お姉さんも、アイスありがとうございます」
マサシハケ
ここからはマサシがいないのでシノの声聞こえる
お姉さん「素直な子だよねぇ」
シノ「そうですね、素直だしすごく優しい人です」
お姉さん「うんうん、私も思うよ、こんな引きこもりとは違いすぎて眩しー、成仏しそうーってね」
シノ「こんなので成仏できたら楽そうですけどね」
お姉さん「わかる。にしても君みたいな子があんな子と青春学園生活送ってるとはねぇ」
シノ「……学園生活って言っても、行き帰り一緒なだけですよ。私は学生じゃないですし。……あ、言わないでくださいね、まだ誤魔化せてるはずなので」
お姉さん「いいけどさ、どうしてそこまでしてあの子と一緒にいるんだい?」
シノ「え、それは……」
お姉さん「好きだから?」
シノ「えぇ!?」
お姉さん「おやおや、青春だねぇ」
シノ「ち、違います」
お姉さん「隠さないでいいのに〜。少なくとも、友達としては好きだろ?」
シノ「ま、まぁ。でも、私には別の好きな人がいるので」
お姉さん少しトーン落として
お姉さん「でもさ、それって交通事故の」
シノ(食い気味)「やめてください」
お姉さん「……そうだね。ごめん」
シノ「わかってるんです。わかってるんですよ。でも、ずっと探してしまうんです」
お姉さん「それがここにいる理由か」
シノ「はい」
お姉さん「そっか、お互い苦労してきたし、まだまだしそうだね」
シノ「ですね」
お姉さん「……ま、またそのうちゆっくり話そ。そろそろ部屋に戻らないとお姉さんはきついや〜。せっかく仲間見つけられたし、今後とも仲良くしよ〜」
シノ「はい、ありがとうございます」
お姉さん「んじゃまた」
お姉さんハケ
シノ 少しぼーっとしている
SE 風鈴
間
シーン5
マサシイン
マサシ「ねぇ、やっぱりさ、納得いかない」
シノ 急にマサシが来てびっくり
シノ「……?」
マサシ「お姉さんの声しか聞こえなかったのもそうだけどさ、何より、君は俺と話す時、いっつも携帯越しだった……。恥ずかしいのかな、とか思ってたけど、初対面のお姉さんとは普通に話してたよね」
シノ「……!」
シノ慌てて携帯を出そうとする
マサシ「それやめてよ」
シノが出した携帯を奪う
シノ 取り返そうと手を伸ばすが届かず
マサシ「ねぇ、どうして俺とは普通に話してくれないの……?」
シノ「……」
携帯ないと声を届けられないのでなんとか取り返そうとする
マサシ その腕を掴んで
マサシ「何か俺の嫌なとこがあるなら教えてよ。ねぇ、俺たち友達じゃないの……?」
シノ「……」
必死に口パクで何かを言っている
マサシ「はぁ、もういいよ」
シノ だんだん苦しそうに
マサシ「え、どうしたの」
シノ苦しみながら慌ててどこかに向かうようにハケ
マサシ「え……」
マサシ 俯く
暗転
シーン6
SE ひぐらし
ベンチでタバコを吸うお姉さん
かばんをもって歩いてくるマサシ
お姉さん「おやマサシじゃん、昨日ぶり」
マサシ「あぁどうも」
お姉さん「いつもの柔らかな元気さはどこに行ったんだい?」
マサシ「いや……ちょっと」
お姉さん「もしかしてあの子にフラれでもしたかい?」
マサシ「あ……」
お姉さん「あれ、図星?」
マサシ「今日、いつも待ち合わせしてるところにも学校にもいなくて……。嫌われちゃったのかも」
お姉さん「喧嘩でもしたの?」
マサシ「あ、いや、喧嘩ってほどじゃなかったと思うんですけど、はい。お姉さんが帰った後に、あのベンチに戻って……その時」
お姉さん「仲良さそうだったのに、なんで?」
マサシ「本当に仲良かったんですかね」
お姉さん「え?」
マサシ「今まで、気にしないようにしてたんです」
お姉さん「何を?」
マサシ「あの人は俺のことどう思っているのかなって」
お姉さん「どうって、仲良さそうに見えたけど?」
マサシ「でも、あの人、俺と話す時、いつも携帯越しなんですよ」
お姉さん「あぁ……」
マサシ「でも昨日、お姉さんとは普通に話してましたよね」
お姉さん「あ……そうだね」
マサシ「俺と話すときはいつも携帯越しなのに……なのに、なんで初対面のお姉さんとは普通に話して、しかも俺には聞こえないような声で……」
お姉さん「あー……いや、それは」
マサシ「それに俺、あの人の名前知らないんです」
お姉さん「あの子は、多分誰に対しても名前はすぐには教えないと思うよ」
マサシ「お姉さんの方が、あの人のこと知ってますね……」
お姉さん「それは……色々あるんだ」
マサシ「ねえ、あの人、何か俺のこと言ってませんでしたか……?何が嫌とか、何が苦手とか」
お姉さん「え、いや落ち着いて。……あの子が話せないのは……理由があるんだ」
マサシ「理由って……」
お姉さん「もう一回ちゃんと話し合ってみな。向き合えば、きっと話してくれるさ」
マサシ「でも……どこにもいなくて」
お姉さん「いつも電話で話してるならかけてみればいいじゃないか」
マサシ「電話……あ、そっか」
お姉さん「なんで気づかなかったんだよ」
マサシ「いつもあの距離なので、電話してる感覚じゃなくて……」
マサシ シノに電話をかける
マサシのカバンの中から着信音
お姉さん「ん?何か鳴ってるよ?」
マサシ「ん……?あ、そっか」
マサシ携帯を取ってくる
マサシ「喧嘩したとき、また携帯越しに話そうとして、それで咄嗟に……取っちゃって、そのままでした」
お姉さんの顔つきが変わる
お姉さん「あの子の携帯、取ったの?」
マサシ「あ、はい。これです。直接話してくれるかなって」
お姉さん(食い気味)「なにやってるんだ!」
マサシ「え?」
お姉さん「取ったの昨日の何時頃?」
マサシ「えぇ!?えっとお姉さんが帰ったあとだから4時か5時くらい」
お姉さん「てことはもう1日経っちゃってるじゃないか」
マサシ「え、どういうことですか?」
お姉さん「(ため息)あの子からは一切何も聞いてないんだよね?」
マサシ「え、あはい。」
お姉さん「裏目に出るとはね」
マサシ「え?」
お姉さん「(ため息)……あの子はね、幽霊なんだよ」
マサシ「え、幽霊?」
お姉さん「そ、地縛霊だったんだって」
マサシ「え、でも地縛霊……って動けないんですよね……?」
お姉さん「基本はね。ただ、頑張ればちょっとその場所から離れられるのと、霊感が強い人とかもうすぐ死ぬ人とかになら取り憑いて一緒に動くこともできる」
マサシ「あ、ああぁ」
お姉さん「んで、あの子は元々公衆電話に取り憑いていたらしいんだけど、それが取り壊されちゃって、今はその携帯電話を代わりにしてたんだってさ」
マサシ「え、携帯……これに?」
お姉さん「そう、だから携帯越しじゃないと生きてる人間とは話せないんだよ」
マサシ「え……、そ……っか、そうだったんだ。……け、携帯、なかったら、どうなるんですか……?」
携帯を見つめる
お姉さん「早く返さないと、消えるよ。あの子」
マサシ「え!?消え……え?でも、どこに」
お姉さん「多分、公衆電話があった場所だ」
マサシ「でももうないんですよね?」
お姉さん「そう、近くで悲惨な交通事故があってね、怖がられて取り壊されたよ」
マサシ「交通事故……交通事故?」
何かを思い出しそう
マサシ「お姉さん、教えてくれてありがとうございました!」
お姉さん「え、ちょマサシ!?まだ公衆電話の場所!!」
マサシ「あ、そっか」
お姉さん「ほら、こっち。ここ渡ったらずっとまっすぐだよ……。ほら、行きなって」
マサシ「いや信号赤だし」
お姉さん「田舎だから平気だよ!ほら!」
マサシを押す この辺りはマサシはお姉さんに夢中で道路を見ていない
渡り始めたぐらいで、トラックのクラクションと急ブレーキ音
ぶつかるくらいで暗転
シーン7
回想
シノ公衆電話に入り、電話をかける
シノ「あ、もしもし、マサシさん?」
前世マサシ「こんばんは、シノさん。もう一年もこうやって夜な夜な電話していると、そろそろかかってくるんじゃないかとわかるようになってきたよ」
シノ「え、そうなんですか?それはなんだか嬉しいけど、照れくさいですね」
前世マサシ「そうかい?僕は嬉しく感じるよ。君とさらに通じ合えた気がしてね」
シノ「まあマサシさんがいいならいいですけど」
前世マサシ「うんうん。……にしてもやっと僕ら通じ合えてきたのにね」
シノ「東京で働けるなんてすごいことですし、私もいつか行きますから」
前世マサシ「そうだね、待ってるよ。東京ではポケベルっていうのが流行っていてね。それがあればどこでもすぐに手紙のようにやり取りできるみたいなんだ」
シノ「そんなものが?」
前世マサシ「僕が働き始めたら、きっとこの時間までに家に帰ってくることは難しいだろうからね、それか、携帯電話があればなと、考えてしまうよ」
シノ「そう、ですよね、寂しくなります……」
前世マサシ「……なぁシノさん、考えたんだけど、やはり、僕が卒業する前に会えないだろうか」
シノ「え……」
前世マサシ「君がこうやって話せるのは電話越しだからだというのはわかっている。けれども、東京に行ってしまう前に、やはり会いたいよ」
シノ「そうですよね、毎晩こうやって私のわがままに付き合わせてしまっていますからね。……わかりました。私も精一杯、いつものようにお話しできるよう、き、緊張しないよう頑張ります」
前世マサシ「ありがとう。明日のこの時間、君がいる公衆電話に行くよ」
シーン8
一瞬暗転
暗転中に
SE 急ブレーキ その後SE 雨
公衆電話のもとで絶望した顔で座るシノ
SE※1 雨→蝉→鈴虫→石焼き芋→うぐいす
と流しながら
モブ(声のみ)
「ねぇ聞いた?あの公衆電話のとこの」
「交通事故?」
「そうそう、あのおぼっちゃま」
「やっぱりあそこの子とできてたみたいよ」
「あそこの女の子?」
「そうそう、毎晩あの公衆電話に来てたみたいなのよ。おぼっちゃまと電話してたんですって」
「えぇ、じゃぁかなり落ち込んでるんじゃないの?」
「そう、その子がね。自分から轢かれに行ったらしいのよ」
「え、自分から?」
「愛する人と同じ場所で同じ死に方」
「えー!」
「でもねぇ、自分から轢かれに行ったから、成仏できずにまだあの公衆電話にいるんじゃないか〜って」
「もうーやめてよー」
シーン9
一瞬暗転
SE ※1OFF
前世マサシはじにイン
生前、ふたりで電話しているところ
音声のみでも可
前世マサシ「ねぇメリーさんって怪談知ってるかい?」
シノ「メリーさん?」
前世マサシ「持ち主に捨てられたメリーさんって人形が、持ち主に電話をかけてくるんだ。切っても切っても何度も」
シノ「えぇ……」
前世マサシ「そして、電話がかかってくるたびに今どこにいるか言ってくるんだ。最初はゴミ捨て場、そこからどんどん家に近づいてきて……」
シノ「……」
前世マサシ「最後には、今、あなたの後ろにいるのーってね」
少し怖がらせる
シノ「ねぇマサシさん!私……今公衆電話で1人なんですよ!?怖くて後ろ振り向けないじゃないですかー!」
前世マサシ「あぁ、すまないすまない」
シノ「もう……。いつか携帯電話買えたらマサシさんにやりますからねー」
前世マサシ「ははは、楽しみにしているよ。……そうか、携帯電話があれば直接じゃ緊張して話せないシノさんとも一緒にいながら話せるんじゃないかな?」
シノ「え、あぁ、そうかもしれないですね」
微笑み
シーン10
一瞬暗転
SE※1
また1人公衆電話のもとで座るメリー
シノ「メリー……さん」
立ち上がり適当に電話をかけ始める
シノ「もしもし、私メリーさん、今」
モブ(音声のみ)「あ、間違い電話ですかね」
また電話をかける
シノ「もしもし、私メリーさん」
モブ「あ?なんだ?いたずらか?」
また電話
シノ「もしもし……私メリー」
モブ「え、あんだって?」
また電話
シノ「もしもし……私」
モブ「毎度、町中華曖昧軒です!」
切る
間
シノ「見つけないと……きっとあの人も成仏できてない、きっと私のこと探してるはず」
一瞬暗転中に
モブ「最近あそこの公衆電話からのいたずら電話が多いらしい」
モブ「どぉうせ事故のせいで誰も寄り付かねぇし、取っ払っちゃっていいだろ」
暗転明け
シーン11
シノ さまよいながら携帯で電話をかけている
シノ「もしもし私メリーさん」
モブ「え、やばメリーさんなんだけどウケる」
シノ「もしもし、私メリーさん……」
モブ「うっわほんとにかかってきた、おもろ」
シノ「もしもし、私、メリー……」
モブ「お!うちの大学にメリーさんいるって噂本当だったんだ〜」
シノ「もしもし、私……メリーさん」
モブ「やばー、おもろ、これ誰がやってるんだろー」
シノ「もしもし、私メリー」
モブ「うわ、まだやってたんだ」
シノ「もしもし私、メr」
モブ「もう飽きたわ、いつまでやってるの?」
シノ「もしもし……」
聞かずに切る
座り込む
泣き出しそうに
シノ「マサシさん……、マサシさん。マサシさん、マサシさんマサシさん!」
シーン12
暗転
SE※1 OFF
暗転中に
着信音少し長めに
シノ(音声のみ)「私、メr」
マサシ(音声のみ)「あ!今電話してくれた人ですか……?」
シノ「マサシさん!!」
間
シーン13
マサシ「……さん、ぉさん、ノさん、シノさん!」
暗転 明け
シノによりそうマサシ
シノ「マ、サシ……さん?」
マサシ「え、うん。マサシだよ!」
シノ「え、マサシさん?」
マサシ「え、ん?そう、マサシだよ。あれ、俺名前教えてたっけ」
シノ「そっか、マサシさん、だったんだ」
マサシ「どしたのシノさん」
シノ「え……?」
マサシ「え?」
シノ「私の名前、どうして……?言ってなかったはず」
マサシ「え、あぁ、なんとなく?そんな気がして」
シノ「やっぱり、マサシさん、マサシさんなの?」
マサシ「え?だからマサシだって」
シノ「あ、いや、違うの、えっと……。わ、私、メリーさん」
間
マサシ「え?何ー?」
笑いながら
シノ「え、だってやり返すって私言ったでしょ?」
マサシ「え、いつ?あ、いや4月からずっと携帯越しで話してたからメリーさんみたいって言ったらメリーさんみたいだけど……」
シノ「え、マサシさんじゃないの……?」
マサシ「え、いやだからマサシだって」
シノ「え、でもメリーさんのこと忘れてるし、マサシさんじゃない」
マサシ「えぇ、だから正真正銘マサシだって!学生証見る?」
シノ「そうじゃないの、私の探してるマサシさんはあなたなのかな〜って」
笑いながら
マサシ「えー俺はただのマサシだよー?シノさんと友達になりたいマサシです」
シノ「え?もう友達だと思ってたな」
マサシ「え、ほんと……?よかったぁ」
シノ「そっか、ずっと携帯越しだったものね。不安にさせてごめんなさい。あと、私の名前知ってるしやっぱりマサシさんなんじゃない?」
マサシ「えー!だからマサシだけどそのマサシは多分別人だよー」
シノ「あーもう、言い合ってたら疲れちゃった。アイス食べに行きましょ」
シノ 笑いながら言う
立ち上がって先に行く
マサシ「もー」
笑いながら立ち上がる
シノ ハケ
SE 風鈴
マサシ微笑んでから
マサシ「(ため息)まだしばらく、知らないふりをするよ。……僕を見つけたら、君は、きっと行ってしまうだろうからね」
僕を強調
シノ「遅いですよ、マサシさん」
マサシ「はいはい、」
SE 救急車のサイレン フェードイン
ー完ー
Merry reunion iX白 @splkeat
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