第28話 新たな予知と協力者

 ———この前、俺はやれることが1つ増えた。


 きっかけは知らない。

 別に知ろうとも思わないし知りたいとも思わない。

 

 それに気付いたのは1週間前。

 正確に言えば、朝比奈と戦って気絶していた時だった。

 

 俺は———新たな予知を見た。

 

 何、いつもと同じクソほど胸糞悪いゴミみたいな予知だ。

 今回は、第3異能学校が襲撃者に襲われ、全生徒の4分の1が死ぬという字面だけでも分かるゴミみたいな予知だ。

 

 始まりはいつもと同じだった。

 俺の身体の背後から見た第三者目線で展開される。

 見えるのはあくまで俺の視界から見える部分だけ。

 俺の心情など関係なく淡々と事実を見せられるだけ。



 ———そのはずだった。

 


 気付いたきっかけは些細なことだった。

 予知の中の俺が襲撃者と応戦する悠真を手助けしようと走っている時だ。

 焦っていたのか人混みをかき分けて俺は進んでいた。

 いつもなら俺はどんなモノにも触れない。

 

 だが———触れたのだ。


 人に、地面に、観葉植物に、椅子に、机に、扉に。

 今まで触れなかった物が触れる様になっていた。

 

 俺はその瞬間、未来を変えられると期待した。

 頑張れば、起こる前に予知自体を変えられるのだはないかと思った。


 しかし———それは正しくパンドラの箱だった。


 俺が動けば動くほど、事態は好転するどころか悪化する。

 俺が動けば動くほど、被害を出さずにことを収めることが不可能であると思い知らされた。

 

 いや、本当は分かっている。

 本当は不可能なんじゃない。

 本当は詰んでいるんじゃない。

 



 ———俺の甘さが不可能に……詰む方向に仕向けているのだ、と。




「はぁ……やっぱり予知はクソスキルだな……」


 朝の5時半。

 俺はベッドの上で上半身だけ起き上がらせてため息を吐く。

 1週間連続で繰り返し見続ける予知に、完全に俺は神経を擦り減らしていた。


 特に予知に干渉できる様になってからは、ただでさえ精神的にクソほどキツいのが更に倍以上になって上乗せされた。

 オーバーキルにオーバーキルを重ねてどうするんだよ。


「はぁ……俺1人じゃ無理なのかね……」


 認めるしか無い。

 今回の予知は俺1人で対処できる範疇を超えている、と。


 そもそも異能学校の生徒たちは、一般人と違って異能力、そして異能者としてのプライドがある。

 それが本当に邪魔なのだ。

 そんなくだらないプライドのせいで俺は予知の中で何度も失敗した。 

 俺の言葉では———皆んなを動かせないと痛感した。

 

 だから———今回は人を頼ることにした。


 

 

 

 

 

 

 

 

「———集まってくれてありがとう。まぁ皆んな大好き怜太君のお願いだから来ないっていう選択肢はないと思うんだけど……」

「よし、帰るか」

「賛成」

「おー待て待て待て待て! そんな冷たくしなくても良いじゃん! ノリ悪いよ2人とも!」

 

 放課後。

 俺と真希ちゃんと神埼は、学校で1番使われていない俺だけが知る空き教室に集まっていた。

 真希ちゃんは眉を吊り上げて首を傾げる。


「いや、怜太が『皆んな大好き』とか寝言をほざくのがいけないのだろう?」

「寝言って言わないでよ。俺は本気で思ってるんだからさ」

「それなら一緒に病院に行こう。私の育て方に問題があったのかもしれん」

「そこまで言う!? たったあの程度のことを少し調子に乗って言っただけでそこまで言うか普通!?」

「せんぱい、五月蝿い」

「理不尽だ!!」


 俺は2人からの怒涛の口撃に吠える。


 もしかしてこの2人を引き合わせたのって結構悪手だったのか?

 俺への口撃力が異常に高い2人が合わさって更に凶悪になってるよ。

 いやフュ◯ジョンちゃうねん。

 おっと、話がそれたな。


「2人のせいで話が逸れ———何でもないですはい」


 俺は2人からの無言の圧に負けた。

 完全敗北を喫した俺は、半ばボロボロになりながら口を開いた。



「結論から言うと———来週の金曜、この学校が複数人の襲撃者に襲われる。死者も沢山出るから、2人に協力して欲しい……です」



 おっと勘違いするなよ?

 決して、断じて2人の視線に耐えかねた訳ではないからな?

 俺なりの誠意だから。


 何て俺は心の中で弁明しながら、必死にこの死んだ空気に耐える。


「「…………」」


 2人とも俺の言葉を聞いた途端黙ってしまった。

 神埼は信じられないと言った様子で。

 真希ちゃんも同じ様な感じだが……もう既に俺の予知の内容を飲み込み、俺が2人を頼った理由を考えている様子で。


 しかし、その沈黙は真希ちゃんが破った。


「……怜太は、私に生徒の避難と護衛を任せたいのか?」

「流石姉さん。言おうとしてたことと全一致だよ。俺じゃあ生徒は動かせないからな」


 そう、俺だとプライドの高い生徒を動かすことはできない。

 そしてそれは、悠真でも、今は不在の序列1位でも多分無理だろう。



 ただ———真希ちゃんは違う。

 


 真希ちゃんは教師だし、そのルックスとキツい性格から全学年の生徒が顔を覚えられているどころか、敬愛されるか畏怖されるかのどちらかだ。

 そんな二極の意味で、生徒を従わせるなら真希ちゃん程適任な人はいない。


「……私は?」


 神埼が俺の袖をクイクイ引っ張りながら首を傾げる。

 

「あぁ、言い方は悪いが……おとり、だな」

「……おとり?」


 俺はイマイチ理解していなさそうな神埼の呟きに頷く。

 そして、少々酷だが……俺は包み隠さず神埼に告げた。




「そうだ。今回の襲撃者の狙いはズバリ、神埼———お前なんだ」




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前知の最強スキル使い〜予知スキルが全力で俺の平穏を邪魔してくる〜 あおぞら @Aozora-31

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