第27話
———昼休憩。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……休みたかったなぁぁぁぁぁぁぁ」
「どうしたよ? そんな机に突っ伏して。てかお前しょっちゅう休んでんだろ」
死んだ魚の様な目で机に突っ伏す俺に、悠真が弁当の卵焼きを食べながら訊いてくる。
その横では食べる手を止めて不思議そうに俺を眺める恋花と、唯一俺の事情を知る神埼が素知らぬ顔でパンを食べていた。
俺はそんな中、死んだ目を悠真に向け……ボソッと呟く。
「ふんっ、貴様には分かんねぇよクソ天才イケメンが。女に刺されて爆ぜろ」
「良く分からんけど悪口を言われていることだけは分かるぞ。おい、幾ら親友だからって容赦しないからな?」
「望むところだ、このクソイケメン。ただ、それはまた今度で。今はそんなことする気力はねぇんだよ」
「はぁ? お前ほんとどうしたよ? 普段ならここで『よーいスタート先手必勝おおおおおおおおおお!!』とか言って唐突に殴りかかってくるのに」
「無駄に解像度高いの止めろ。相手が美少女じゃないと反吐が出る」
「随分と好き勝手言うなお前!?」
俺の普段の5割増くらいの怒涛の悪口に、悠真が思わず仰け反った。
因みに、なぜサボり魔たる俺が学校にいるのか。
それは———真希ちゃんと神埼に何とか切り傷の理由を信じさせた後『お前はサボり過ぎだ。学校に来い』という真希ちゃんの鶴の一声ならぬ地獄の門番の一声によって学校に強制連行されたからだ。
真希ちゃんに人間の心は無いのかと問いたい。
「今日の俺は不機嫌なんだ。迂闊なことを言うと飛び火食らうぞ」
「言うの遅い遅い。もうこっちはクソほど食らってんだよね」
それは……ドンマイ。
説明する前に話し掛けたお前が悪い。
何て超暴君みたいなことを考える俺は、机から起き上がり……小さくため息を吐きながら背もたれにもたれ掛かった。
「はぁ……俺を連れて来た真希ちゃんは何処行ったんだ?」
「あ、やっぱりそうだったんだ。そう言えば真希ちゃん……私達の授業の時いなかったよね」
「ん、私の授業も」
そうなのだ。
恋花の言う通り、真希ちゃんは俺達の授業の時に顔を見せなかった。
朝のHRの時間は居たというのに。
「……何処行ったんかなぁ……」
「まぁ真希ちゃんのことだしサボりではないだろ」
「うんうん。真希ちゃんがサボるわけ無いよっ! 怜太君じゃないんだから」
「おっと恋花? 俺を煽るとは度胸があるじゃないかアホの子」
「あーっ! またアホって言ったぁ!!」
「何度でも言ってやるよ! こんのアホアホアホアホアホアホ!!」
「うわぁぁぁぁん!! 怜太君が私をいじめるぅぅぅぅぅぅ!!」
「あははははは! 良いぞ、もっとやれ!」
「はぁ……子供」
こうして、俺達の何気ない日常が過ぎていく。
「———……何の用だ、朝比奈?」
怜太と恋花が取っ組み合いの喧嘩を始め、悠真が横から野次を飛ばし、琴音がそんな3人を呆れた様に見つめて1人黙々とご飯を食べていた頃。
怜太の従姉である真希は、来客室という場所に居た。
そこで久々に自分目当てに来た来訪客———朝比奈麗華を訝しげに睨んでいた。
「お久し振りです、真希さん」
「ついこの前会っただろう」
「それはそうですけど……こうして2人で話すのは久し振りじゃないですか」
(ふん、白々しい。私と雑談するために来たわけではないくせに)
優雅に紅茶を口にする麗華に、真希はより警戒心を引き上げ、自分の前に置かれた紅茶に手を付けず先に口を開いた。
「それで……わざわざやって来て私に何を聞きたい?」
「私が真希さんに会いに来た———」
「———そんなわけないだろう。朝比奈、お前は【草薙】だ。決して暇な時間など無いはずのお前が時間を割いて私に会いに来たとなると……私に聞きたいことがあるとしか思えない」
「……流石ですね、真希さん」
麗華は紅茶を机に置き、真剣な表情に変貌させる。
続けて麗華は机の上に1つのランプ型魔導具を置いた。
真希はその魔導具を前に、少し目を見開く。
「……それは……」
「そうです。真希さんの思っている通りのモノです。草薙専用なので名前は無いですが……音、衝撃、録音機器、魔導具の全てを遮断する魔導具です」
「……それほどまでに大切な話なのか?」
「ええ、勿論です」
(……一体何の話だ? 私にあの魔導具を使うほどの重大で機密の情報はない。それは朝比奈も分かっているはず……)
超貴重な魔導具の使用を躊躇わない麗華の様子に、真希は内心困惑する。
そんな真希をよそに、麗華がランプ型魔導具に魔力を注ぐ。
ランプが光り、部屋に半透明な結界が張られた。
「これでよし……では真希さん。単刀直入に聞きますが……貴女の従弟———佐々木怜太は何者なのですか?」
「……怜太が何者か、だと? そんなことを聞いてどうなる? 仮に、貴様が怜太に危害をくわえるというなら———容赦はしない」
真希は凍える様な瞳を麗華に向け、全身から膨大な魔力と威圧、敵意を放つ。
途端、机が吹き飛び、紅茶のカップが割れ、床のカーペットに紅茶が染み込む。
そんな真希の様子に麗華は表情を崩さず冷静に返した。
「……危害は加えませんよ。ただ、聞きたいだけです」
「何を?」
「———佐々木怜太が【千差万別の仮面王】なのかどうかを」
怜太の預かり知らぬ所で、ことは動いていた。
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また、ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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