6月20日(木曜日)

 ここしばらく、様々な方にご意見を頂いて学んだことを綴ろうと思います。


 まずは、冒頭。情報を詰めすぎないこと。今は序盤に今、何が起こっているか派手に、掴みを、と求められていますけれど、これがまぁ技量が必要。


 私は残念ながら、冒頭は非常に苦手です。理屈では分かっています、最初の一、二ページで読者さんは先を読むか、読まないかを判断します。


 この問題に取り組むために、私なりに考えたことを記します。


 まず、どんな物語なのか。サスペンスなのか恋愛なのか、ミステリーなのか、ホラーなのか? どんなジャンルか大まかに判別できる情報を入れます。どんな登場人物が出てくるのか――基本的には主人公を出すのが一般的でしょう(そうでない場合も演出であると思いますが)その人物が今、何をして、何の目的を持っているのかを書く。そして何かしらの事件を起こします。事件を起こさない冒頭に(個人的には)魅力を覚えません。


 別に殺人とか、そんなショッキングなものでなくてよいのです。ただ、主人公にとってショッキングで、それを失ったら主人公にとって死活問題と思えるほどの事件、あるいは魅力的な謎を置きます。


 そして補足情報も入れていきます、時刻や日付、場所、季節、主人公の居る場所。そこから徐々に、徐々にとシーンを進めていくのですが(これもご指摘頂いた)とにかく焦らない。


 読者さんが求めている以上の情報を渡さない、ようは物語に没入し始めようとしているのに、次々と情報を詰め込みすぎないように気をつけるということです。


 もし冒頭で情報を詰め込みすぎてしまったなら、直せば大丈夫です。登場人物に修正はききませんが(特に中盤以降)構成なら変えて大丈夫です。


 そして何より説明をしない、描写する。丁寧に。ここ少し飛ばしてしまおう――なんて思ってはいけません、描写をするのです。


 説明ってなんぞや? ってなりますよね。私もなりました。正直、推敲してこれは説明じゃないと自分で思っていても、実は説明文でした、とかプロの方もなるそうですね。この辺の見極めも、恐らく読書で培われるのだと思います。


 一方で文章の書き方は、OKサインを頂きました。その点は少し、一安心です。


 ここから先は、自分なりに学んだことを。


 今回、私はセーブザキャットの法則に乗っ取って、三幕構成のボードを作成しました。詳しくは割愛しますが、一幕に十枚、二幕前半に十枚、後半に十枚、三幕に十枚、合計四十のシーンです。


 そこから文字数計算をして、どのシーンをどれほど書くかの目安を決めます。


 しかし実際に書いていると、強弱が見えてくるのです。三千、五千、二千文字とシーンごとによって変わります。ですがあくまでも目安ですし、不必要な文章は後ほど削ります。もしあまりにも文字数が足りない場合は描写不足、あるいは心情の表現不足、単純にシーンの濃さが薄いのいずれかでしょう。


 現在は二幕の前半を書いています。セーブザキャットで言うところの「お楽しみ」に当たる部分です。恐らくここでいよいよ始まった本筋で登場人物の掛け合いを楽しんで頂き、サブプロット(登場人物の過去など)からミッドポイント(物語が大きく変わる転換点)へと移行するのだろうなと、物語の運びについて書きながら学んでいるところです。


 出来事を作るセンスとシーンの配置の仕方。これを磨けば、恐らく十万文字の壁を越えて、階段上りのような構成が身につくのではないだろうかと思います。ここは映画や読書で得られる知識でしょう、これもインプットあるのみです。


 頭では理解出来ていることを、実際に執筆で出来ているのかという問題ですけれど、自分ではやっているつもりが出来ていないという可能性が八割です。これは練習あるのみだなと思います。


 もう一つ学んだことですが、好きにはなれないけど共感するキャラは一人は最低でも居た方が良いです。今回、書いている主要な登場人物は題材も影響するせいか、癖はあれど根っから嫌な奴はおりません。その代わり、大人だけ嫌な奴として書いています。エゴ、身勝手さ、口ばかり達者の偽善者。だけどそんな一面を持っている人は、身近にいるのではないでしょうか。好きにはなれませんが、いるよなそういう奴、という人間を置くと、主要な登場人物が更に好感を持てる気がします。とは言っても、あくまでも私の考えなので、実際どう思われるか分かりません。


 時々、肩を抜きなさいよと言われる時がありますが、正直、焦りしかありません。


 書籍化出来るか出来ないか? 歳のせい?


 違います。また病気が再発する可能性があるからです。そうなったらもう、一文も書くことは出来ません。常に心臓に銃を突きつけられている状態です。


 今は元気に執筆が出来ても、明日執筆出来るとは限らない。このように学んだことを綴っているけれど、それすらも忘れてまた苦痛の底に落ちる日が来るかもしれない。


 目を背けているけど、本当は恐怖の日々を送っています。出来るだけ楽しく生きたいから、努力しているだけ。


 だからこそ、共感出来るのです。今まで書けていた方が、急に一文字も書けなくなる状態異常にかかった時の恐怖、絶望。


 自戒を込めて言うけれど、焦らないで。


 焦って、恐怖が遠のくわけでも近づくわけでもないのです。


 そんな風に思う、六月でした。

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砥鹿さんの日記 砥鹿エル子 @Tatibanaeruiza

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