直視

@ryousyuuhaorenoyome

直視

私が通っている学校に転校生がきた。

名前は■■■■。1999年三月七日生まれで性別は女。

やせていて、背が小さい子だった。

話しかけてみると、声が小さく、もぞもぞしていた。

おそらく、気が弱いのだろう。

そんな彼女を見て私は思った。

あぁ、いじめられるだろうな。

私のクラスにはいじめが起きていた。

靴を隠したり、陰口を言ったり、いじったり。

そして先生は見て見ぬふり。

そしてほかのクラスメイトは傍観しているだけ。

私もその一人だ。

彼女が転校してから翌日、私は学校に行った。

教室に入ってみると、黒板を囲むように人だかりができていた。

おそらく、彼女がいじられたりしているんだろう。

そう思った。

だが違った。

彼女は髪を引っ張られたり、足を踏みつけたり、

そんなことが起きていた。

さっきも言ったように、私のクラスは陰口を言ったり、いじったり、

そういういじめの仕方だった。

でも彼女は違った。

暴力を受けていた。

クラスメイトもそわそわしていた。

さすがに言いつけた方がいいか。止めに入ったほうがいいか。

そんなことを考えていたかもしれない。

でも止まられない。

止めたら自分がターゲットにされるかもしれないから。

私も止められなかった。

おそらくこのいじめは止まらないだろう。

頼れる人がいないからだ。

そもそも気が弱そうだから、彼女も行動に移せなかったのだろう。

彼女が転校してから一か月がたった。

彼女のいじめはとまっていない。

限界。

彼女の表情からはそんな感情が読み取れた。

そして翌日、彼女は頭に包帯を巻いていた。

何があったんだろう、どうしたんだろう、まさかあいつらが?

そんなことをクラスメイトは口々に言っていた。

そして先生がこういった。

彼女は目がつぶれた、と

当時の私は、なんでめがつぶれたんだろうと思っていた。

でも今は理由がわかる気がする。

おそらく彼女は、こんなことを思っていたんだろう。

学校に行ってはいじめられ、先生は助けに来ず、クラスメイトも見ているだけ。

私も相談できない。

もう限界だ。

こんな現実見たくない。

もう何も見たくない。

そうだ。

目をつぶせばこの嫌な現実を直視しなくていいんじゃないんだろうか。

そう思ってめをつぶしたんだろうか。

そして翌日、彼女は笑っていた。

おそらく、昨日はいじめられなかったからだろうか。

でも、そんな日は長くは続かなかった。

数日後、彼女はまたいじめられていた。

でも、今回はやり方が違った。

いじめっ子は彼女に聞こえる声で

死ね。地獄に落ちろ。目障りなんだよ

などと言っていた。

前よりかはましかと思ったが、それは間違っていた。

彼女は目をつぶしたおかげか、前よりも耳が良くなってイなのだろうか。

彼女は膝をついて耳をふさぐほどにダメージを受けていた。

そして彼女の表情からは前よりも絶望が感じられた。

そうして数週間後、彼女は登校しなくなった。

先生はこう言った。

彼女は耳が聞こえなくなったと。

僕は当時、なぜ彼女の耳が聞こえなくなったのかはわからなかった。

だけど今はわかる気がする。

目をつぶしても嫌な現実から離れられないんだ。

神様は何をしているんだろう。

もう自殺しようかな。

もう何もかも終わりにしようかな。

でも死ぬのは怖い。

まだ生きたい。

まだ希望が残っていると信じたい。

そうだ。

この前目をつぶしたのと同じように、耳も聞こえなくしよう。

そうしたらこんな嫌な現実からもおさらばだ。

そう思ったのだろうか。

彼女が登校しなくなってから一週間がたった。

私はいつもどうりに登校していた。

そうしてホームルームの時間になった。

そして先生は言った。

■■君たちが毎週彼女のお見舞いに行くことになりました。拍手をしてください。と

そうして私は思った。

あぁ、どうせいじめに行くんだろうなと。

クラスメイトも思っていたと思う。そうして一か月がたった。

私はいつもどうりに登校した。

そうしてホームルームの時間になった。

そして先生は言った。

■■さんが亡くなった、と。

クラスメイトが亡くなるのは初めての経験だった。

いや、経験するほうが珍しいか。

私は当時、いじめられたから自殺したんだろうと思った。

でも今はこう思う。

あいつらがお見舞いに来てから一か月。

目と耳をつぶしたせいだろうか。

感覚が鋭くなっている。

前に暴力をふるっていた時よりも痛く感じる。

なぜ私に希望はないの。

どうして私をいじめるの。

どうして嫌な現実が戻ってくるの。

もうこんなのいやだ。

こんな現実から逃げたい。

そうだ。

もう自殺しよう。

もう終わりにしよう。

もう何もかも終わりにしよう。

そう思ったんだろうか。

そうして数年後、私は高校二年生になった。

私のクラスに転校生が来た。

また彼女のことを思い出してしまった

目がつぶれた彼女のこと。

耳が聞こえなくなった彼女のこと。

自殺した彼女のこと。

あの時止められなかった自分の顔。

すべてを思い出してしまった。

また嫌な現実が襲ってきた。

もう自分の顔、足、手、目、耳、

救えれなかったのに平穏に暮らしている自分

それから毎日夢にあの場面が出てくる。

彼女が転校してきたあの日。

包帯を巻いてきあたあの日。

登校しなくなったあの日。

自殺したと聞いたあの日。

すべてが私に襲い掛かってきている。

そうして私は思った。

この嫌な現実を見ないためにするにはどうすればいいのか。

どうやったら楽になれるだろうか。

そうして私は、

目をつぶした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

直視 @ryousyuuhaorenoyome

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る