第5話 ふぎぃ!!!!!


ふぎぃ!!!!!

そう思いながら私は地団駄を踏む。

夢色は私の物なのに。

なのに何故にこうなってしまったのか。

私は思いながらベッドでむしゃくしゃを晴らす。


パンチして枕をベッドに叩きつける。

だけどまあそれでもこのモヤモヤが晴れる事は無い。

私は悔しさを滲ませながら居るとドアがノックされた。

そして「虹。今良いか」と夢色が言う。


「うん。どうしたの」

「...アイツをどう思っている」

「...アイツ?あの女?...私は普通だって思うけど?」

「ああ。いや。そういう感じじゃない。何かを隠してないかアイツ」

「え?隠しているかな?」


そう言いながら夢色は考え込む。

私は考える。

だけどまああの女だ。

正直何かを隠していてもおかしくはない。

夢色は悩む様に考え込む。


「どういう事で悩んでいるの?」

「...いや。どっかでアイツを見た様な気がする」

「...ああ。そういう意味で...」

「それも有名人だった様な気がするけど」

「...冨樫ゆうは恐らくピアノ奏者だよ」


そんな事を言うと夢色は「は?」となった。

それから私は踵を返して奥の学習机からファイルを取り出す。

新聞記事が大量に綴られたファイルだ。

そして私はそれを見せる。


「...これ」

「...これは...」

「当時の記事だけど。...彼女の名前は伏せられているけど大事故に遭っている」

「...!」

「私、ようやっと思い出した。...彼女は私の憧れのピアノ奏者だったって」

「...右手を複雑骨折か」


そして「それで...彼女は嘘を吐いたんだな」と考える夢色。

私はその姿に「会ったの?」と聞いてみる。

すると夢色は「画材の購入の帰り道でな」と目線を逸らす。

私はその言葉に考える。


「...それで気になったの?」

「アイツは何かを隠しているってな」

「...」

「...お前の憧れの人だったんだな」

「彼女は天才だったよ。...あの年齢で指が太いからラ・カンパネラを演奏できたし」

「...何...」


「だけどいつしか影に本当に紛れたけどね。何か特別な事象があったのだろうって思ったけど」と私は言いながら「彼女はあくまで取材とかを断っていた。だから影の天才って呼ばれていた」とも言う。

すると夢色は「...そうか」と返事をした。


「...彼女は諦めざるを得なかったんだろうね」

「...お前聞いたのか。アイツに」

「聞いたけどはぐらかされた」

「...そうか」


そして「...」となっていると夢色のスマホが鳴った。

電話だった。

その相手を見て驚く夢色。

どうやら彼女。

冨樫ゆうだった様だ。


「冨樫さん。どうしたんだ」

『その。絵を描いているって言うから今描いているのかなって思いまして』

「確かに描いてはいたけど。...その聞いても良いか」

『はい』

「貴方は天才ピアニストだった冨樫ゆうだろ?」

『...はい』


そう認めた。

多分それもあって電話してきたんだとは思うけど。

私はそう思いつつ会話する夢色を見る。

夢色は「...骨折したんだってな」と話した。


『...過去の事ですよ』

「...そうだけど大変だったんじゃないのか」

『軽く自殺未遂は起こしました。何故かといえば演奏できないから』

「...そうか」

『それでちょっとお願いも兼ねて電話しました』

「...?...何の?」


『私は演奏は出来ません。だけどその。...もし良かったら彼女に技術を叩きこんで教えたいです。彼女もピアニストでしょう?』と言ってくる。

虹は「!!!!?」となる。

俺はその言葉に「なんでまたいきなり」と聞いてみる。

すると冨樫さんは「私の最大の技術を...受け継げる方です。貴方の妹さんは」と言いながら「その根性が彼女にはあります」とも言う。


「...しかし...」

『勿論、彼女が嫌じゃ無ければ、ですが。まあそれに貴方を譲るとは言ってません』

「...」

「...じゃあやりたい」


そう私は言った。

それから「せっかく冨樫ゆうが教えたいって言っている。...その人から教えてもらえるなら」と頷いた。

その言葉に夢色は「...」とまたなってから「じゃあ頼めるか」と答えた。


『そのうち察されてしまうなど思っていました。だから丁度良かったです』

「...そうか」

『...ただし私はあくまでスパルタ教育です。...それにあの人は恋のライバルでもある。だから油断は大敵だって思って下さい。決して私は甘くありません』

「だそうだ。良いか。虹」

「うん。どんと来いだね」


そうして私は冨樫ゆうにピアノを教わる事になった。

が。

またこれが波乱を呼ぶとは誰が予測したものか。

今は予測できなかった。


そう。

3人目が現れたのだ。

何がとは今はまだ言えないが...私が怒る事象だった。

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義妹がイチャイチャ過ぎるので好感度を下げようと思うんですけど上手くいきません。誰か助けて下さい... アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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