第3話
最初の彼に振られたのは、マリに解読された日記の内容を公開されたからだった。
二人目の彼が死んだのは、彼の両親に僕たちの交際を知られたからだった。
こうして僕は二人の好きな人を失った。
マリはどのように僕たちの秘密を破ったのだろうか。
僕は暗号の破り方も調べた。
その結果次のようなことが分かったのだ。
暗号の破り方には4つある。
1.選択暗号文攻撃
2.選択平文攻撃
3.既知平文攻撃
4.暗号文単独攻撃
最も強い攻撃は選択暗号文攻撃である。
マリがどうやって僕たちの関係を知り、そして暗号文を盗んだのかは定かではない。
ただ僕が調べた範囲では、マリは恐らく一番簡単な暗号文単独攻撃を使ったんだと思う。
マリは僕たちの通信履歴を解読して、それを両親あてに送りつけた。
僕はいつも8文字のパスワードを使っていた。
そしてそれをメールを送る時に使っていた。
もちろん、彼も同意していて僕を信用してくれた。
何しろ彼の両親は厳格で、彼は自分のことを相談できなかったから。
僕の使った暗号はビジュネル暗号というものだった。
多表式暗号という複数の変換表を使う暗号だ。
この暗号は15世紀の外交官が使っていた暗号だが、詳しく知らなくてもかまわない。
兎に角その暗号を使って、僕と彼はメールでやり取りしていたのだ。
マリは僕のパスワードを知らない。
ビジュネル暗号はパスワードの長さが秘密鍵だ。
暗号の解き方は詳しく知らなかったが、カシスキー検査というものらしい。
でも、マリにとっては簡単なことだ。
そして僕はいつも長さ8文字のパスワードを使っていた。
8文字なら全部組み合わせれば総当たりできないと思っていた。
でも甘かった。
マリはビジュネル暗号を解読した。
僕にパスワードを手紙で送ってきたのだ。
そして僕は彼を失った。
今は第3の暗号を使っている。
正確には使うつもりだ。
あれからいろいろあって、暗号について調べていた。
秘密鍵暗号、そして公開鍵暗号。
やめておこう、頭が痛くなるだけだ。
彼女が見ている限り、僕には手も足も出ない。
今や彼女は僕の出会いまで奪っているのだから。
メールを使うにしても、最初の1通目から暗号化しておかなければならない。
でも相手も同じ鍵を持っていなければ、相手には何が書かれてあるのかわからい。
これは今僕が目の当たりにしているジレンマだ。
同性愛者は、殆どが自分のことを周囲に偽って生活している。
結婚している人の中にも、そういう人は普通に居る。
会社で信用を得るため、両親を安心させるため、その他いろいろな事情で自分のことを隠している。
苦しくなって耐えられない時は、酒を飲んで忘れると話してくれた人もいる。
辛いだろうな・・・。
僕はまだいい。
親は放任主義だし、好きなように生きろと言っている。
でも知り合うにはそれだけじゃ足りない。
まあ、会ったことのない人を好きになるなんてありえないけどね。
クリプト サカイオサム @dekamara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。クリプトの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます