第3話 俺と時計鳩
「ぁあ~気持ちいいなぁ~。最高だやっぱり…ここで寝るの…」
いつもここに来るたびに思う。川辺の坂の草の原。背中合わせてこそばゆい。チクチクって、サクサクってするのが、心地いいんだ。
いつものようにここに来るのは決まって土日の朝か昼。な~んも考えないで本を読んだり、眠くなったら顔に本を置いて寝る。今回は朝だからまだ人も少ないな。
「はぁ~…あ…」
日の暖かさ。風の薙ぐ音。不規則な肌ざわり。だんだんと眠気が促進されて、もう少しで眠れそうだ。
「コー…」
随分近いところから、よく聞く鳥の鳴き声が聞こえる。まぁその辺にいるしな、近くに来てもおかしくないか…。
「コプルォ…」
鳴き声の位置が全く変わらないな。
「コプルゥ…」
ずっといるな。
「コポクォ…」
そろそろおかしいかな。どれ…。
顔に乗せてた本をどかして、声の方を見てみると、やっぱり『鳩』がいた。
しかしなぜだろう。俺の知ってる鳩より小さい気がする。いや、高さが変だぞ?なんか半分くらい低い。
「おまえ変じゃないか?」
近づいてみると「コー」と鳴く。返事してるのかもしれない、何言ってるかわからないが。
「お前…何かわかんないけど埋まってないか?」
よく見てみると、この鳩、地面に埋まっていた。それで抜け出せないようだった。
「寝る前にそんな音もなかったんだけどな」
出られないみたいでなんかかわいそうに思えてきたので、助けたくなってきた。
「ほっ!」
鷲掴みして、ぐぐっと持ち上げてみる。結構な深みにはまっているようだ、なかなかにきついぞ。
「ぬぬぅ!「クルコココ!」」
よくわからないが、苦しいと言っている気がする。普通はこういうとき羽をばたつかせるものじゃないのか?わからないが…。意外にもこっちを気遣いながら苦しんでないか?しかしそろそろ抜けそうだ。頑張れ鳩!
「おおおっオっ!?」
スポっと聞こえそうなくらい気持ちよく抜けた。「ポー」と言っている、良かったな。
「しかしなんでこんなところで…ん?」
抜いた穴を見てみると、無くなっていた。穴が。もともと何もなかったかのように。じゃあこいつは何にハマっていたんだ…?
「ポ…」
まぁいいや、良かったな。
「しかしまぁお前、飼われてんのか?首に懐中時計掛けてっけど」
「ポ…」
「そうかそうか、わからん」
流石に飼われてるとしても確か帰巣本能があるらしいから飛んで元の所に帰っていくだろ。俺は寝る。
また寝転がって、背中に来るこそばゆい感覚を楽しみながら本を顔に乗せる。マイホームポジションだ。
「ポ…」
ポじゃないが、某聖剣の伝説の豆みたいな鳴き方をするんじゃあないぞ。
「ボラーレヴィーア…」
「ポポ…ポ…ポ…」
モールス信号のような鳴き方をするんじゃあないぞ。やはり日本語母語話者なのか?
「飛んでいきなさい」
「クルポ…」
どうやら飛んでいかないらしい。どうしたものかな。
腹に鳩を乗せたまま、しばらく考えるフリをして、気が付くと昼だった。腹が減ったから、多分昼。帰ろうかね。
「バササッコココ…」
起き上がったとき、羽ばたきながら俺の腹から退く鳩を見て、「まだいたのか…」と聞いてみたが、帰ってきたのはやはり「コプォ」だった。
「ミツケ、タゾ!」
立ち上がって帰ろうと思ったら声を掛けられた、舌でも怪我したのかな?拙い言祝ぎに振り返る。おやおや、物騒な…鎧姿に槍じゃないか。よく見たら川辺じゃないし。夢でも見てるのかな?
しかし、相も変わらず鳩はいる。さっきまで見てたし出てもおかしくない、が、鎧の君は脈絡がないのじゃないかなぁ…。
ペチッ「痛いわ」
もしも夢じゃなかったら嫌なので、先に槍を突き出される前に顔をまあまあな威力で叩いてみた。多分現実。何故だかわからないが。逃げる。逃げたい。逃げような。
「ばいばへっ!」
思ったが吉日だよ、さっと振り返って鳩持ってダッシュだ。あと『ばいばい』を噛んでたりするわけじゃないから。勘違いしないように。だって舌使う言葉じゃないもんな。
「追えーっ!!」
追われてしまった。例えば夢だとする、これは追いかけられる夢で、俺がそう思ったから結果追われている。もう一つ、夢じゃなかったとする、原因は鳩か時計か俺。どれが原因かわからない。もしもだが、鳩を投げれば助かるかもしれないが、もう親近感を湧いてしまった鳩だからな。もうこいつは相棒だ…。鳩が何と言おうと一生一緒エンゲージするぞ。現実行ったら交番行こうな、約束だぞ。
何故だかわからないが、俺と鳩の出会いはこんなんで、誠に申し訳ない。誰に謝っているのかわからんが、とりあえずこの鳩の名前は「クロックー」と呼ぶことにした。「クルック」とか言うし、時計持ってるし。
物書き自主訓練:二人一組キャラのパートナーとの出会いを三十個 電子サキュバスショコチャ @swll
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