再臨(二度目)
和邇田ミロー
本編
その年に入ってから、世界に謎の現象が起こり始めた。
夜空にヘブライ文字で『今こそ』と読める夜光雲が出現し、大音声で『悔い改めよ』という言葉が半径数十キロに亘って聞かれた。それは、三つの一神教の信者より、救世主再臨の兆しだと騒がれた。
当初は面白半分で見ていた非一神教徒も、明らかに自然現象ではない異変が、撮影され、記録に残ると、不安を感じ始めた。
人々の期待と恐れが最高潮に達した時、かつてメギドの野と呼ばれた地に金色の雲が湧き、数十万の人々が詰めかけた。
雲上から大音声が轟く。
「かつて汝らは我が子を二度迫害した」
天から光が降り注ぎ、人影がゆっくりと下りてきた。
「此度は最後の贖罪の機会である」
そして彼は光に包まれて地上に降り立った。
その姿を見た時、ごく一部の者を除き、人類は悲鳴を上げ、髪を(あればだが)掻きむしった。
その年のうちに、世界の文明は崩壊した。
神の子は、鼻の下にチョビ髭を生やしていた。
再臨(二度目) 和邇田ミロー @wanitami
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