第18話 妖精と私達の物語 (最終話)

 ◆◆ リーフ視点 ◆◆


 ある真夏の酷暑、その日は暑すぎて夏草の茂みにいても暑くて、流石に妖精たる自分もフラフラになって行き倒れたのです。

 ここで干からびて死ぬかと思ったら、奇跡の出会いがあった。


 どうやら私が見えるらしい稀有なニンゲンと遭遇し、交渉が涼しいところに連れて行ってもらえた。


 クーラーは至高の文明ですぅ。

 生き返りました。


 私を助けてくれた鈴子は料理が美味い美人のようだったけど、機械に弱く、文明の利器は少ししか使いこなせないようだった。


 職業は漫画家で、学園恋愛ものからほのぼのファンタジー系あたりが好きみたいだ。


 同居人がいて、そちらは小説家だった。

 こちらもなんと私の姿が見える。


 メルヘン好きがメルヘン好きを呼んだのかもしれない。

 類は友を呼ぶとはニンゲンのコトワザ。


 美味しい料理とか、お風呂にプールに水着まで用意してくれた。

 流石に妖精が見えるだけあって親切だった。


 鈴子はいつも夢見るような、かわいいものや、キラキラした輝きを探すような瞳をしている。


 炭酸の弾けるサイダー、朝採りトマト、冷たく冷やしたスイカ、涼やかな風鈴の音色、芝生の上のプール、青空に浮かぶしゃぼん玉、色鮮やかな綿菓子、花火。その夏は特別色々なものを貰ったり、感じたりした。


 宝石箱にいるかのような輝かしい夏の記憶。

 夏の終わりまで涼しいとこにいさせて欲しいと願ったのは私だ。


 もうすぐお別れだ。

 ひなたの物語は読めたし、鈴子の妖精の絵も見れたし、本の形になるところまで見ていたかったけど、私は妖精。

 約束は守らなくては。


 9月からは秋だから。

 まだしばらくは暑いけど。

 もうさよならの季節。


 お空の雲もモクモクの入道雲からウロコ雲になった。


 それは秋のお知らせ。

 夜のうちに、朝を迎える前に、私は行こう。


 さよなら、この時代にも残っていた優しいニンゲン達。


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『ありがとう。いっぱい親切にしてくれてありがとう。


 綺麗なものを見せてくれたり、美味しいものを食べさせてくれたり。


 優しいあなた達にまた会えると嬉しい。

 縁側あたりでいいから、妖精の物語の本が出たら飾っておいてくださいね。もしかしたらそのうち読みに行くかも。


 と、手紙くらいは残していく。


 さよなら、またね。 鈴子とひなたへ』


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 リーフ。


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 ◆◆ 鈴子視点 ◆◆



「あああっ!!」

「鈴先生、朝からなんですか?」

「リーフが帰った!」

「え!?」


「置き手紙をして、帰って行ったの!」

「妖精の約束……て、そうなの? まだ残暑厳しいのに……」


「コロポックルってフキの葉の下にいる妖精よね?」

「確かそんな風に書いてありますね」

「たまにかき氷でもお供えしてあげようかな? 速攻溶けるとは思うけど」

「保冷剤入のクーラーボックスごとなら少しは持つかもですが、どこにお供えするんです?」


「や、社みたいなのを建てる? 小さなやつ」

「お地蔵さんみたいに祀る感じですか?」

「まあね、石膏の彫刻は難易度高いから石にコロポックルの絵を描いて飾ってさ。それなら誰宛か分かるよね」


「でも道端に許可なく建てていいものでしょうか? 本ができたら縁側にってことは縁側までは来る可能性があるのでしょう? 庭先なら、ほら、池の周り、フキ生えるし」

「そうね、自宅の敷地内の池の側になんか建てよう!」


 それからひなたが屋根付きの家を作ってくれた。

 私はその中にコロポックルの絵を描いた石を飾った。


 たまにご近所さんがあれなに?

 って聞いて来るけど、小学生でもないのに工作の妖精の家だと言っておいた。


 そうしたらドン引きされるかと思ったけど、TVで妖精の家を作るのか、外国であったわねぇ、メルヘンでかわいいわねぇなどと笑ってくれてよかった。


 突然の別れに、動揺したけど、来年の夏あたりまた会える可能性はある。


 ピザが食べたいって言ってたから、庭にピザ釜を作ってやるしかないかなとかひなたと計画してる。


 それと肝心なひなたの妖精の物語。

 無事に書籍化が決まった。

 コミカライズは私がする。


 コロポックルがほんとに幸運を呼んできてくれたとひなたは笑った。

 私はそうだねと言って二人で笑った。



 そのうちピザ釜と本とでおびき寄せようと思う。

 あの小さくて口が達者ででも愛らしい妖精さんを。


 ✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽✰⋆。:


 終わり。




















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私と妖精の物語 @nagi228

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