第17話 プール遊びと妖精の物語

 花火大会が終わって数日後、古いピンクの水着にハサミを入れてリーフ用の水着を縫った。


 多分、これで着れるだろう!


 そして、通販で買った長方形のビニールプールとリーフ用の洗面器に水を入れた。



 水着を着てお庭でよく晴れた青空の下、プールに入ることにした。


 田舎の家の芝生の上で、人目を気にせずに。

 ちなみに私は小花柄のかわいいビキニでひなたは黒ビキニ。かっこいい!



「わー、こんなに大きいビールプールがあるんですね! 私は子供用の小さいのしか知りませんでした!」

「あるのよ、通販で6800円くらいだった。折りたたみ可能で大人も入れるやつを探したんだ〜」

「せっかく庭だし、ナイトプールもいいかもですね」



「それねー問題は光を放つと虫が来ることよ、洗面器に水でいけるリーフなら居間のテーブルにキャンドルで照らして〜みたいなサービスはできるよ、網戸の内側でね」

「あー、蛾とか蚊の問題がありますね」


「そうなのよ、ホタルだけなら許すんだけど」

「ホタルって夏の始まり頃でもうシーズン終わってますね、多分」

「残念ね〜」



 そう言いつつ私はリーフの洗面器をビニールプールにそっと浮かべる。



「よっと、どう? リーフ、ゆらゆらすると落ち着かないならテーブルの上にするけど」

『問題ないですぅ〜こちらの方がお二人と一緒に入れるし』


「それにしても花火大会で変なナンパ男と遭遇しなくてよかったです」

「ひなた、まさか本気で武器を隠し持ってたわけじゃないわよね?」


「先生を、守る為にいざとなったら簪を武器にするかって思ってました」

「かんざし!」



 そういや髪をまとめるのに使ってた!



『そう言えば小刀を袖や帯に隠さなくても簪がありましたねぇ』


「危ないわよぉ、逆に武器を奪われたら」

「まずは威嚇ですよ、威嚇! でもカッターナイフも奪われたら同じじゃないですか?」

「う、まあ、それはそうなんだけど」


『いざとなったら私が念力使うので〜』


「まあ、何事もなかったし、良かったよ、取り越し苦労で」


「でも都会にいた時には鈴先生が道を歩くとよくナンパされてたし、心配でしたよ。

 花火大会はすんごい人目があるし、カップルで来てる人も多かったですし、特に絡まれずに良かったですけど」


「あはは、仕事の打ち合わせとかでふつーの服を着て街に出ると大人しそうに見えるのかなんか来るのよね、ガチめのゴスロリとか着てればドン引きしてくれるのが多いけど」


「あれ男避けだったんですか?」

「あれは趣味!」

「ですよねぇ」

『あれはあれで華麗で好きですよ、私は。あ、鈴さん、私の為の水着まで用意していただいてありがとうございました!』

「いえいえ、急ごしらえだったけどね」


「あ、そうだ、私妖精の小説、全8話で書き上げましたよ!」

「おお! 早く投稿しな!?」


「もう最初の2話は投稿しましたよ。初日に連続で。跳ねるかどうかは微妙ですが」

「そうだったの! 後で読みに行くね!」

「はい! ありがとうございます!」


『私も読みます〜スマホかタブレットを貸してください』

「リーフちゃんには私のスマホを貸しますよ」

『感謝ですー』


 その後はプールの中でシャボン玉を飛ばしたりして、子どものように遊んだ。


「おお、シャボン玉は映えますー」


 そう言ってひなたが陽の光の中に飛ぶシャボン玉にスマホのカメラを向けた。


「ひなた、水濡れ厳禁のスマホなら気を付けてよ」

「これは水中撮影も可能なやつです」

「おお! それは凄い」

「ところでリーフちゃんて写真に撮ってもオーブしか写りませんね」

『はい、妖精なので』


 オーブしか映らないのよね。かわいいのに残念。



 そんな感じでちゃぷちゃぷとプール遊びで涼んだ後で、エアコンの効いた部屋でひなたの妖精の物語を読んだ。



 妖精の使う魔法が優しくて素敵な癒し系のお話だった。


「とてもかわいいお話……」

『素敵な癒やし系の話だと思います! 私は好きです!』


 コロポックルもそう言うので、私はSNSでその小説を褒めた文を呟いて紹介した。

 急いで描いたファンアートもくっつけて。


 するとなかなかPVも夜にはがっと増えたそうだ。

 良かったぁ!


 そして私の絵を見たリーフは、


『ところで鈴の描いたこの妖精、私に似てますね!』


 と、輝く瞳でそう言った。


「ダメだった? リーフは写真に映らないけど、私には見えるから描いておこうと思ったの、そうすれば忘れないでしょう?」

『何にも悪くないです。嬉しいです! ありがとうございます』



 悲しい事は忘れないのに、楽しい記憶ほどいつまでも覚えてられない私は、描いておこうと思ったの。


 はるか頭上にある、輝く星のように。

 キラキラしてて愛らしい存在は、長く記憶に残っていると嬉しいから。

 朝露のように、消えてしまわぬように。



















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