第2話 〜モンスター老人〜


梅雨の時期も、もうそろそろ終わりを迎える。



あいも変わらず、都合よく自分の病気を振りかざし、自宅介護の中わがまま言いたい放題、やりたい放題のモンスターは暴れまくっている。



介護認定がおり、訪問看護に加え平日だけ

ヘルパーさんが入ってくれる事になった。



平日は、ヘルパーさんが食事を作ってくれたり、父からの要望のものを買い物してくれている。


自分の食べたい物じゃないと、文句をいい食べない。

スーパーで、お寿司、刺身、鰻、カツ丼、天麩羅のリクエスト。


どこが病気?と思うほどの、食欲と贅沢ぶりだ。


平日5日で、15000円使う事もある。

死ぬ前に好きな物食べさせろ、と弟達にも怒鳴りちらしているようだ。


さすがにお金がついていかないし、死ぬ様子も全然うかがえない。



もともと気性が荒く、自分の気に入らない事があれば暴言を吐き、人に攻撃をする。


自分の思うようにならなければ、武器になるものや刃物を向け脅して攻撃をしてくる人間だ。


私が20代の時にも、父が家を出て他の女のところに転がりこんでいる時に、隣町の警察署から家の電話に連絡があり、そちらのお父さんが〇〇さんの家の中で刃物を持って暴れていると。


勝手に家出て家族も放置し、勝手な事してる人の事は私達は知りません。と警察に伝えたが、とにかく〇〇さんの家族の方々も困っているから来て下さいと言われ、母はまだ健在だったが、浮気相手の家に行かせるのは不憫すぎて、母には言わず弟と2人で足を運んだ。



マジで最悪な人間。

どんな事をしても、自分は悪くない。

怒らせる事をする、周りの人間が悪いという考えで暴れまくる。

一度も謝った事はない。



そんな父はどう考えても、人間ではない。

モンスターだ。



その時も、早く死んでくれと思った。


そんな事もあり、刃物類は父が見えないところに隠していた。


自宅介護の始めの頃はトイレに行くのも足元がおぼつかないくらいだったが、今では普通に歩いている。


家からは病院の通院以外は出る事もなく、時間だけは死ぬほどある。

いろんなとこを探したのであろう。


アイスピックを見つけ枕の下に隠し持っていた父親は、またもや攻撃をしてきた。


私が臨時で始めた仕事を終え息子に夕食をあげ、父の翌日以降の食材を買って、少しいつもより遅い時間に父のいる実家に行った時に、玄関の鍵を開け食材を冷蔵庫にしまおうとすると、奥から怒鳴りながら私に向かって左手にまごの手、右手にアイスピックを持って、襲いかかってきた。


私はこんな最低な人間でも、父親である事実は変えれない。

周りに迷惑をかけるわけにもいかないと、この人が死ぬまでは嫌でも面倒見ないといけないと、いろいろと尻拭いもやってきた。


こいつが多額の借金を作り、小さな会社を倒産させ、母親名義でもたくさん借金させ、自分は他の女のところに逃げ、母親1人で高校生であった私と2個違いの弟、まだ小学生だった弟を養い、その時も母は苦しんだ。


私と弟はバイトをし高校の費用は自分達で何とかしたが、母親は生活費と数百万の借金を返すのに、いくつもの仕事を掛け持ちしたが、到底元本は減らす事もできず、サラ金業者からの電話が頻繁になり、玄関のドアを蹴りながら借りたお金は返せと、わざと隣近所に聞こえるように大きな声で怒鳴る。



住んでいた家も銀行に取られ、電気、水道、ガスが全部止まった時は、本当に惨めで父親を心の奥から恨んだ。


社会人になってからも、しばらく給料やボーナスは父親の借金返済に消えた。



それでも家族は父親を見捨てずにいたが、この介護の中で父親にアイスピックを向けられ、襲いかかってこられた時に、私の何かがプツンと切れた。


アイスピックをよけ、左手に持っていたまごの手を奪い取り、玄関から逃げようとしたが、すごい力で私の腕をかばんごと掴んできたので、私は無理矢理玄関を開け外に向かい「誰か助けて!」「警察呼んで下さい!」と叫び、泣きながら走って逃げた。


すぐに隣の部屋の人が出てきたが、私に振り切られ倒れこんでる父親の方にかけよったので、私は走って逃げながら110に連絡して、助けを呼んだ。


情けなくて、涙がとまらなかった。


実の娘に刃物を向け、攻撃してくる。

何をどれだけやっても、怒りしかない。

同じ人間だとは思えない。


同じ血が流れていると思ったら、吐きそうになる。



それでも自分は悪くないと、駆けつけた警察官に、父は自分は虐待されている、ろくな食事も与えられてないと、訴えていたらしい。


警察官は私の話を親身に聞いてくれ、こんな時間に父親のところに来ている事実を見ても、親の事思いやっているのは分かるし、父親は高齢で病気があるので、逮捕や拘束ができない。

ごめんねと言われた。


とりあえず、まごの手とアイスピックは警察に押収してもらい、私に対してかなり攻撃的なので、私は父親のとこには来ない方がいい。と、後から来てくれた弟と私に警察官は話をし、またこんな事があればいつでも連絡して下さいと言ってくれた。



もう二度と、父親の顔は見たくない。



弟達には悪いけど、2人に父親の世話と通院はお願いする事にした。



天国の母親とおじぃちゃん、おばあちゃんに、そろそろそちらで引き取ってもらえないか?と心の中でつぶやいた、、、。



私に、おだやかな日常はやってくるのだろうか。


もっと得をつまないといけないのだろうか。


とりあえず、息子との生活を1番に考えよう。




梅雨かあけたら、今年も暑い夏が始まる。






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いつまで神様は試練を与えるのだ~50代女のぼやき〜 紫陽花 @hitako0103

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