死への克服
死が怖くなったきっかけについては話をしました。
人はいつか死にます。
僕だって、いつ死ぬか分かりません。日本は地震の多い国ですし、何かの不運で事故に巻き込まれたり、病気で死ぬなんてことも十分にあり得る話です。
そう考えるだけで、僕は生きることすら臆病になっていました。
祖父の死がきっかけで日々の生き方に対する考えが変わったのです。ただ友達と一緒に遊んで、楽しく過ごそうとする毎日に疑問を抱き始めました。
僕は小学生の頃、わんぱくな子供でした。
いつも外でサッカーや鬼ごっこをしたりと、ずっと走り回る体力のある子だったと思います。
秋にある持久走の時期になれば、誰よりもはやく学校に来て校庭を走っていましたし、冬になっても半袖半ズボンで登校したりするような、めっちゃバカな子供でした。
そんな僕が祖父の死をきっかけに外で遊ばなくなったのです。
その時から別のきっかけがあるのですが、少しだけ読書に興味を持つようになりました。
それまでは活字を読むのが嫌いで、本とは縁遠い生活を過ごしていたのですが、その頃から図書室へ足を運ぶことが多くなったのです。
六年生になってから、ずっと苦手だった読書を始めて、僕の中で考え方の幅が広がりました。
僕はそれまで漫画も読む習慣がなかったため、漫画や小説など色々な本を手当たり次第、読み漁りました。
そんな中で出会ったのが伝記です。
学校の図書館に偉人の伝記の漫画があり、それを読みました。
いろんな人の伝記を読みました。アルフレッド・ノーベルやアルベルト・アインシュタインなど――そんな偉人たちの伝記を読むうちに幼い僕は「これだ!」と閃いたのです。
この偉人たちのように何か功績を残せば、僕は死んでもみんなの記憶に残り続ける……それはつまり不死と同義だと。
その時の興奮もよく覚えています。
ずっと怖かった死が、怖かったこの先の人生で、僕のやるべき指標が見えたのですから。
僕は思い立ったらすぐ行動に移せる人間でした。なので、その日から僕はひたすら読書と勉強をやり始めたのです。
そう、僕の当時の目標は何かしらの「ノーベル賞」を取ることでした。
今まで宿題も手を抜いて、親に叱れてきた僕ですが、その日からというもの僕は意欲的に主題に取り組み、それ以外にも自習を家でたくさんするようになったのです。
親も最初は戸惑っていたと思います。
ずっと遊んでばかりの我が子が急に自分の部屋に閉じ籠もるようになり、何をしているかと言えば読書と勉強なのですから。
ですが、それからは僕の中で生き方に迷いがありませんでした。
今まで真剣に向き合ってこなかった勉学と読書。この二つがもはや趣味や遊びと言えるほどに夢中になったのです。
勉強はひたすら自分の知識になるところが面白いと感じました。僕は当時水泳を習っていたのですが、練習してもそれが確実に結果につながるとは限りません。努力が全て報われるなんてのはおとぎ話なんだと知っていました。
ですが、勉強は僕の中で唯一、「やればやるほど結果につながる」ものでした。
勉強すればするほど、テストの結果も良くなり、僕はそんな勉強にやりがいを感じていたのです。逆になんで今まで勉強してこなかったのだろうと思ったほどです。
それと同じくらいに読書も僕の中で大事な趣味となりました。
主にも物語を読むのにどハマりしました。
これは読書が好きな人なら共感できると思うのですが、その物語の世界観に浸れることにどっぷりとハマったです。
本を読んでいる間は嫌なことや辛いことを忘れて、その物語の主人公に感情移入したり、その世界に入っている感覚になり、時間を忘れるほどに夢中になれました。
こうしてん僕は外で無邪気に走り回るわんぱくな子供から、読書や勉強が大好きなガリ勉君に変わっていったのです。
死にたくないから、早く死にたい 凛太朗 @ryotaro30
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