ネジ巻きアンドロイドのお買い物

トマトも柄

ねじ巻きアンドロイドのお買い物

 僕の名前はシプ。

 博士に作られたアンドロイドなのだ。

 博士はいつもおっちょこちょいで見てるこっちがヒヤヒヤする。

 いつものように博士が慌てて僕の前に現れてくる。

「大変だ! 買い忘れてたのがあった! シプ! 代わりに買ってきて!」

 博士が慌てて色々してるのを見て僕はうんと頷いた。

「はい! これお代のお金! これで卵買って来て!」

 それでお代を僕に渡して慌てて出て行った。

 買い物に行くのは良いんだけど、博士はもう一つ大事な事を忘れているのに気付いていない。

 僕の充電が足りないのだ。

 今は何とか充電して動けているけど、買い物に行く分の充電分しかない。

 つまりギリギリしかないのだ。

 そこで非常用のネジを持って行く事にしたのだ。

 このネジを首の後ろにはめ込んで巻いてもらうと充電できるという便利な物だ!

 ただこれ巻いてもらう時は誰かに頼まないと行けないって欠点もあるけど……。

 トラブル無かったら充電は持つから念の為って事で。

 

 僕はそこで卵を買いに出かけていった。

 すると途中の公園で子供が泣いているのを見つけた。

 僕はすぐに子供に近付いて、

「どうしたの?」

 と声をかけた。

 すると子供は泣きながら木を指差している。

 そこには木に引っかかっている風船があった。

「風船……高いところに行っちゃって取れないの……お姉ちゃん取れる?」

 僕は風船に向かって真っ先にジャンプしてキャッチする。

 そして子供に風船を渡した。

「これで良かった?」

 子供は僕を見て凄い嬉しそうにしている。

「ありがとう! お姉ちゃん!」

「実は風船取ったついでなんだけど僕のお願いを聞いてもらっても良いかな?」

 子供はうんうんと頷いて聞いている。

「実は僕ねアンドロイドなの。 そこで充電を貯めるためにネジを巻いて欲しいの。 やってもらっても良いかな?」

 子供は分かったと元気の良い返事をして早速取り掛かろうとしてくれてる。

 僕は首の後ろにネジをはめ込んで腰を下ろす。

 そして子供にネジを回してもらった。

 ギーコ、ギーコとネジを回してもらって電気がが溜まっていくのを感じる。

「ネジに回すの夢中になって風船離さないように気をつけてね」

「うん!」

 そしてしばらく回してもらった後、

「ありがとう! もう大丈夫だよ」

「もう良いの?」

「うん! 凄く助かったよ! ありがとう」

 そう言って子供が離れるのを確認してから僕は立ち上がった。

 そして首の後ろのネジを取って子供の前に再び歩み寄った。

「もう風船離さないように気を付けてね」

「うん!」


 僕はその場を離れて卵を買いに向かった。

 途中で向かってる横断歩道で待ってる親子がいた。

 その親子は困ったような表情で待っている。

 そこで僕は気が付いた。

 横断歩道の前に立ち、右手をピンと上げる。

 すると、車は右手を上げたのに気付いて横断歩道の前で止まってくれる。

 僕は親子の前で笑顔で返し、横断歩道を渡ろうとする。

 すると、子供が僕の服を引っ張って手を差し出してくる。

 手を繋いで欲しそうにしていたのだ。

 僕は親を見て確認する。

 そうすると親は笑顔でお願いしますと無言の承諾を出した。

「じゃあ手を繋いで歩こうか」

「うん!」

 僕は子供を手を繋いで横断歩道を渡った。

 後ろから親は微笑ましくついてきてくれていた。

 横断歩道を渡り切ると、

「お姉ちゃん! ありがとう!」

 子供がお礼を言ってくれた。

「中々渡れなくて困っていたんですよ。 ありがとうございます」

 親の方もお礼を言って感謝している。

「お気になさらないで下さい。 僕もちょうど通りたかったので」

 そうすると子供が、

「何かお礼したーい!」

「ん? 何かしてくれるのかい?」

「うん!」

「僕はアンドロイドだから今充電に困っているの。 そこで首の後ろにあるねじを巻いて欲しいけど良いかな?」

「分かった! 巻く!」

 子供が気合い入れて一生懸命ねじを巻いてくれてる。

 充電の溜まっていく感覚が伝わってくる。

「ありがとう! これで凄い動けるようになったよ」

 僕がそう言うと子供が手を離してくれて親のところに戻っていく。

 僕は親御さんに一礼してその場を去った。

 その場を去る時2人とも手を振ってくれて笑顔になってくれていた。

 僕はそこから卵を購入し、博士の家へ戻った。

 僕はとても誇らしげに帰っており、博士に会った途端に話を切り上げた。

「博士! 今日良い事あったんだよ! 聞いて聞いて!」












 

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