第4話 幼少期Ⅳ
近隣の村で行われる大会までには多少時間があるので、それまでは家で準備をする事にした。
それに家にいれば兄妹と関わる時間も増えるし、僕にとっては都合がいい。たまには兄妹の成長を見ていようか。
「……?」
いい天気なので家の外に出ようと玄関に向かう途中、窓の外から弟──グレイルが師匠と稽古をしているのが見えた。
どうやら僕がいない間に、弟も師匠から剣術を教わっていたようである。
僕と違う点は、剣に魔力を乗せて攻撃を行えるという点だろうか。見る限り弟は魔法が使えるらしい。
戦闘スタイルは僕とかけ離れている。
剣を中心とした攻撃に格闘術を合わせる僕と異なり、弟は単純な剣撃のみの戦闘を行っている。
「綺麗な剣だ」
口から声が漏れる。
グレイルの剣は師匠が繰り出すものと形がよく似ている。戦闘によって改造された僕のものとは違う。基本に忠実な剣だ。
彼も成長しようと努力しているようだ。
「そういえばミレアは……」
グレイルは見たけどミレア見てないな、と僕は家の中を探す。リビングにはいないから、師匠の書斎かな。
僕は勘を頼りに妹を探す。
「やっぱりここか」
ミレアは予想通り書斎におり、見るところグレイルのように剣を習うのではなく知識を身につけようとしていた。
兄とは別の道を模索するのも悪くないな。
「ミレア、勉強は捗ってる?」
僕はミレアに声を掛ける。
「はい。兄さんこそ、書斎に用が?」
「ミレアを探しに」
「そうでしたか」
会話がうまく続かない。
兄妹と会話するのって意外と難しいな。年も離れているし、話題も皆無。だいぶ話を広げることの難易度が高い。
と悩んでいると、勉強をしていたミレアのペンを持つ手が止まる。
「どうしたの?」
「ここの魔石の仕組みがよくわからなくて」
「あー、それはね」
都合が良かった。
まさかそんな都合よく、ミレアが僕の得意分野で悩むとは思わなかった。よく知った知識なので、僕はミレアにうまく伝えることができた。
その間、会話がどうとか考えなくて済んだので助かった。
教えていると分からなかった場所を何度も聞かれたので疲れたが、ミレアが可愛いのでヨシ!!
「今日はありがとうございます、兄さん」
「大丈夫だよ。可愛い妹の頼みならいつでも」
「兄さん。……そうやって女の子に可愛いと、言い過ぎないほうが良いですよ。勘違いさせてしまいます」
「そう?じゃあ、気をつけるよ」
もう日は落ちていた。結構気づかないものらしい。
僕はミレアと別れたのち、自室に戻り手短に準備を済ませ、寝ることにした。
別世界 大石或和 @yakiri_dayo
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