第86話 約束を果たすとき
魔法少女たちがリーファに向けて、それぞれの攻撃を仕掛ける。
剣やハンマー、徒手による攻撃の尽くを防がれるが、誰も手を休めない。逆に攻撃によって、リーファの魔法攻撃の頻度も減っている。
お陰で、魔法使い系の魔法少女たちも、防御だけでなく攻撃に参加できていた。
魔法少女たちの総攻撃で土煙が舞う中……リーファの瞳が、鈍い赤色の光を灯す。
「ママ、を……いじめるな……!!」
「■■■■■■■■■■■■■■ッ!!」
リーファと母親が、前と左右に向けて四つの腕を突き出す。
直後、無数の不可視の刃と黒の刃が全方向に放たれた。
戦闘経験豊富な魔法少女は辛くも避けるが、その他の魔法少女には直撃。吹き飛ばされ、地面を転がった。
1人の魔法使いが近づき、息をしているかを確認してこっちに合図を送る。よかった、生きてるみたいだ。
回復のできる魔法少女たちが、ひっきりなしに来る怪我人を回復していく。
戦い、傷つき、倒れ、治療する。正に地獄絵図だった。
「ごめんね、リーファ。手加減できないみたい。……バハムート、攻撃用意」
「────ッ!!」
鋭敏になった聴覚が、遥か上空にいるビリュウさんの声を捉える。
バハムートが、直下にいるリーファに向けて口を開け、キイイイイイィィィィッッッ──!! エネルギーを超圧縮したような金切り音が響いた。
小さな青い恒星が、莫大なエネルギーを蓄える。
同時に、リリーカさんから黄金の光りが噴き出した。
光の柱が天高くつき上がり、リリーカさんの髪を激しくはためかせた。
「総員、下がれェ!!」
リリーカさんの声が響き、魔法少女たちが退く。
黄金と紺碧の圧が周囲の砂埃を消し去り、標的が顕になる。そして……。
「ルミナス・イラディケイトッ!!」
「ワーテゥル・アングリフッ!!」
リリーカさんとビリュウさんが、同時に最高火力の攻撃を放った。
天にも昇る光の斬撃と総てを薙ぎ払う青の閃光が、空気を切り裂き2人に直撃する。
……いや、するはずだった。
「──テンペスト・クインタス・フォートレス」
リーファが魔法を発動すると、幾何学模様の刻まれたドーム状のバリアが展開される。
その周囲に黒のオーラ。またバリア。黒のオーラと重ねられ、5枚と5枚。合計10枚の壁となった。
斬撃と光線が、防御魔法に衝突。
さすがの黒のオーラも2人からの攻撃には耐えられないのか、1番外側の防御を破壊した。
が……2枚目の風属性の防御魔法に衝突した瞬間、砕かれたバリアが風の斬撃となり、2人の攻撃を外から切り刻んだ。
「なっ……!?」
「くっ……!」
2人の顔が歪む。
それもそうだ。今の1枚で、攻撃の威力が完全に削がれたのだ。
半減した攻撃では、黒のオーラを破壊することはできない。
結果、3枚目の黒のオーラに阻まれ、2人の攻撃は霧散した。
「うそ……」
「リリーカ様とビリュウ様の攻撃が……」
「防がれた……!?」
みんな、絶望的な表情を浮かべている。
当たり前だ。2人は日本屈指の力を持つ魔法少女。その攻撃でも阻まれたんだ。
立ち上がり、周りを見渡す。
怪我をしている子。泣いている子。震えている子。絶望している子。
……みんな、女の子だ。
そう……女の子が、戦ってんだよ。
「……ふんっ!!!!」
バシィインッ……!! 頬を両手で叩き──超痛い──1歩前に出る。
「ごめん、リリーカさん。……俺、やるよ」
「……助かる。だがどうする? 私たちの攻撃は通用しないぞ」
「わかってます。……今から俺がやること、何も言わずに見守っててください」
「何……?」
何をぼーっとしてるんだ、俺は。ここでやらなきゃ、男が廃るだろ。
みんなが見守る中……黒のオーラの攻撃圏内に、足を踏み入れた。
「ツグミ……!」
「リリーカさん」
リリーカさんに手を突き出し、止める。大丈夫、というように。
口を真一文字に結び、ゆっくり剣を下げた。ありがとうございます、リリーカさん。
え? 考え?
……あるわけねーよ。丸腰だ。
けど……みんなが戦って、傷ついてるのを黙って見てられないだろ。
それに約束したもんな、リーファ。
俺だけは──絶対、リーファの前からいなくならないって。
クイーン・オブ・魔法少女 〜いや俺、男なんですが!?〜 赤金武蔵 @Akagane_Musashi
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