罪滅ぼし

夜雨 翡翠(よさめ ひすい)

プロローグ -:-prolog-:-

 私は、とてつもない罪を犯した。「殺人」という、決して許されることのない罪。これしか方法は無かったのだろうか。私は何かの選択肢を間違ってしまったのか。

 混乱状態の頭は元に戻る気がしない。これからどうしようか。隠蔽して生きていこうか。果たして、そんなことはできるのか。

 すると、どこからか足音が聞こえてきた。

まずい。このままだと見つかる。どうすれば。考えている間に部屋のドアがあけられる。

 恐る恐る顔を上げると、赤いドレスを着た少女が立っていた。少女は怪しく微笑んでいた。

「ふふっ。こんな派手に殺しておいて、隠蔽しようと思ってるの?無計画なお馬鹿さんだね。しかも殺しておいて後悔までしてるんだ?お馬鹿さん。」

罵倒されていても、その言葉はすっと胸に入ってきた。苛立ちもしなかった。

「後悔じゃない。無かったことにしたいだけ。」

考えるより先に口が動いた。

「ふーん。じゃあ何なの?」

「こいつらは死んで当然の奴らだった。なのに私が殺したことで私が罪に問われる。それに納得できない。」

少女は私がそう言うのが分かっていたというように口の端をつりあげた。

「じゃあ、わたしについてきな。」

 少女が何者なのか。どこに連れて行かれるのかさほど疑問に思わなかった。とにかく、この場所から離れたかった。

 私はゆっくりと立ち上がった。足下には血だまりと、二人のむくろがあった。もう、この二人の顔は二度と見たくないし、見れないのだろう。そう思うと気分が少し軽く感じられた。そして私は少女の後を追うのであった。

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罪滅ぼし 夜雨 翡翠(よさめ ひすい) @hisuiakatuki

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