春桜の初恋

@AI_isekai

春桜の初恋

 唯一輝いて見えたそれは、桜のように美しかった。

 その美しさについ見惚れていると、それに気づいた彼もこちらを見た。


「どうかした?」


 声、顔、表情、白い歯、赤い舌、透き通る肌、窓からの逆光に照らされた黒髪――その全てに惚れてしまった。


 ――一目惚れ


 私の初恋は、桜が咲くのと時を同じくして華やかに綺麗な桜色のごとく始まった。


 彼との出会いは、私の新生活を一気にピンク色に変えた。

 

 ――好きです。


 彼に近づく人は多かった。私と同じにように、彼に魅せられた人だろう。

 それでも彼は全てを断った。断っていた。


 遠くから見守っていて、それだけでよかった。


 こんなにも誰かを想ったのは初めてだったから、私もどうすれば良いのか分からない。


 けれど季節は巡って新たな春を引き連れてくる。


 ――羨んで、妬んで、こんなの普通じゃないからやめないとなのに。


 『嫌い』と言う言葉を何度も頭の中で復唱する。

 それでも目は自然と彼を追い、想いだけが募っていく。


 季節が巡るたびに私の『好き』は誤魔化せない程大きくなっていく。


 一言でいいから

 一言だけでいい


 ――だから云わないと


 「好きです」


 私の恋は、春の終わりと共に桜のように儚く散った。


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