第15話 絵面
ガリガリガリガリと地面を擦る音とともに、
ちょっとした山に匹敵するほどの大きさ…で、
そして、それを引きずりながら運んでいるのは、オフィウクス辺境伯の嫡男アルフレートであった。
現地で解体して軽量化を図ったものの、甲羅自体がとんでもなく重かったため、馬で引くことも出来なかった。
そこで、常人離れした膂力を持つアルフレートが運ぶこととなったのであるが、とかく絵面が悪かった。
甲羅に張り巡らした数多の鎖を肩にかついで、ただ力任せに引きずっている。
それはまさに罪人への刑罰か、あるいは、奴隷への拷問かと思われるほどに酷い光景であった。
次期辺境伯は周囲の者から嫌われて虐待されているのかと、そう思われてもおかしくない姿。
それゆえに、領都【ラサルハグェ】に先乗りしたファンたちが、わざわざアルフレートの偉業を喧伝するという三文芝居じみたことをせざるを得なかったのだった。
ガリガリと地面を引きずる音が大きくなって来るにつれて、だんだんと甲羅の様子が見えてくる。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
「カッケぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「あれ誰?」
「バッカ、アル兄じゃねえかよ!」
「すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「見に行こうぜ!」
「うん」
「ああっ、待ってよぉ!」
すると、領都の子供たちが真っ先にアルフレートに向かって駆け出していく。
「ねぇ、あれって若様よね?」
「うん。工事なんかで大きな荷物を持っているのを見たことあるけど……」
「まさか、あんなに力持ちだったなんて……」
「そんなことより、あんなに大きな竜を退治したんだろ?」
「しかもひとりで……」
「【
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
次いで大人たちが我先にと、その偉業を果たした男の姿を見ようと街を飛び出す。
「ペルーダの甲羅……じゃと?」
「なんでも
「何と!それでは
「アレを使わせてもらえるのか?」
「何が作れる?何が出来る?」
「おいおいおいおい、これはこんなところで待ってるだけって訳にはいかねぇなぁ」
「先に行ってどこが良いか見極めねば」
「おい、テメエ抜け駆けすんな!」
「おおおおおおおお、俺が先じゃああ!!」
そして最後に、酒焼けのダミ声で会話していた
たちまち、アルフレートは領都の人々に取り囲まれ、賛辞の嵐に包まれるのだった。
誰もいなくなった中央広場で、ファンは苦笑いを浮かべながら自嘲する。
「アル……みんなに好かれ過ぎだろ……。しかし、俺たちにはもう興味ねぇってか……」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
書いていて、あまりにも酷い絵面にげっそりしました(笑)
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黄道戦記 うりぼう @tsu11223344556677889900
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