短歌四季ごとまとめ

先斗ひろり

2024.01〜03

メンヘラに歯が磨けるわけねえんだわお前にキスで虫歯をうつす


愛着のあった短いこの字面きみのためならば旧くできる


わかるけどLINEを見るのは体力が持ってかれるけどそれでもそれでも


良いんだよ彼女じゃないしたいせつなひとかもちょっと自信がないし


どうせどうせ優先順位の高くないポジションだもん返事に五時間


やっときた十数文字の返事だけ三時半まで噛み締めている


じゃあこれで美味いものでも食べなよとレタパで届いた臓器の薄さ


諸見里と名乗ったくせになにごとも見ようとしない偽名が下手ね


かけうどんとぶっかけうどんの違いとかそんなことだけ喋ってたよね


新しい苗字(なりたくないけれど)朱肉とシープホーンが笑う


すきなひとに縋らなくても生きてける道を選べりゃ良かったのかよ


うるせえなインターネットフレンドでなけりゃぼこぼこにしてただいすき


きみのいるライブハウスに行ったなら生きて帰れなかっただろうな


わたしだけすきでいてとは言わないがたまには思い出してほしいの


感情をコンクリートに混ぜ込んで固めた物でお前を殴る


ばかばかばか!(こんなに泣かされているのにきらいと言えない理性について)


病んだとも軽率に言い難いため代わりに猫の鳴き真似をする


別つ性 桔梗の花を渡されて吐くほど泣いたのに誓えない


夢のなかで会えば会うほど起きたときでかいベッドと仲良く泣ける


捕えてよ蜘蛛の巣にかかる蝶みたく一生捧げる覚悟もあるよ


睨んでも青藍色の空だけはそこにいるから死ねないんです


椿油で撫でられた髪の毛諸共お前の頭を捥ぐ 綺麗だね


安物の付箋を栞代わりにした本を譲ってもらいたかった


髪を梳かす過程で見えた頸ごと櫛で削って食べて死にたい


金塊で殴られて死ぬ来世ではクレオパトラに生まれつきたい


慈愛の目くり抜いてやるそれでもまだわたしがすきなら本物だよね


重荷になりたくない重荷になりたくない重荷になりたくないのになんで


自罰思考いつか返信があってもそれまでに死に絶えているでしょう


眠いって思いながらも打ち込んで送った文が精緻すぎたね


優先順位 通知を鳴らして何時間経ったらわたしに気づいてくれる?


泣く資格は無いとわかっているんだよご飯が喉を通らなくても


大切にしたい身体はもう無くてしあわせにだけはなっちゃいけない


泣く資格も無い泣く資格も無い泣くなわたしが始めた話だろうが


惜しいのは既に失くしているからでだいじにできなかったからだよ


あなたから返事がなくてほっとする不埒なところ許さないでね


初雪と輪郭線上のニキビともう会えないって送った履歴


そういえばお揃いで買った指輪ってどこやったかな(みつからないで)


盲目な視界の端にちらつくは澱んだ色の影 いかないで


男の子とかいう年齢じゃなくてもいつまでもばか、ほんとばかだね


ざぶこんと凍った海が飲み込んだかつては指輪だった劣情


呼び捨てにしてよふたりの間だけ天使が舞っても知らないからね


この世界に意味の無い手洗いなんて存在しない(そういうことよ)


地元でも行けるチェーンの店たちにわざわざ池袋で通おう


甘ったるいキスはやだって言っただろガラムなんかを吸いやがってさ


「ごめん。でも売女のための口紅が必要なんだ。キスもするしさ」


会うたびに皆勤でやってることがタバコとセックスだけなのマジさぁ


買いたてのオレンジベージュのリップすらパパに会うときだけ塗っている


鼻筋にパールのハイライトを入れていまからどうせ乱れるくせに


売ったのはからだじゃないよただちょっと心のなかでもやらかいところ


新しく苗字をくれてときめけるひととしか契ってはいけないの?


興奮を得たいね認められたいね金を払ってやっと人間


寂しくてこんなところに来てるのはあなたの方よ、ねぇ、パパ、わかる?


プレイには手狭なはずのベッドでもひとりで眠るには広いのね


有限性不滅の春を売っている 破瓜 いつまでも男って馬鹿


すきなひととするときにだけ痙攣が止まらぬ脚を縛られている


ピアス、ピアス、外してしばらく経つくせにホールが消えない、へんなの、ピアス


恋人じゃないのにねって笑みながら指を組んでて馬鹿だろ、ぬくい


共犯と言うべきだよね(射精するときの瞼の伏せ方がすき)


古傷をリスカ跡だと偽って馬鹿みたいだねタバコの煙


するすると鶯谷で降りていくみんなで今日も生き延びたいね


「口の中だけで燻らすなら依存しないんでしょう、キスしてくれる?」


ほんと馬鹿ほんとに女の子のことをかんがえてないほんとかわいい


痕になるやつはだめだよ独占がしたいにしてもあるでしょもっと


わたしのじゃないけどわたしのなんだもんわたしに依存してほしいもん


かわいそう(意味:かわいいね、ねぇわたしだけ頼ってよお願いだから)


会うたびにいろんなことをしてるのにタバコとセックスだけ欠かさない


喉を焼くキャメルの煙はひどい白 きみが笑ってくれるなら良い


きみが吐くキャメルの煙を顔面で浴びてくすくすって笑ったら、


春を売るための洋服、リップ、靴、髪型、それと偽りの笑み


飲酒は自傷アルコールでふわふわしてる間だけ降臨するわたし


ラブホテルのボディソープにはあいつらの精子が混ざって蠢いている


わがままを言えないそもそもわがままとたすけての差がよくわからない


良い夢が見れますようにと祈られてきみの夢ならどんなに良いか


首を絞めて。薄々わかる表情は特に楽しくなさげだね、すき。


これでもう逃げられないねと微笑んだきみから逃げる気なんて無いよ


死にたいと思ったときに聴いたなら身体に沁みる曲のあつまり


改札まで送ってほしいそのくらい些細なことは諦めとくね


死にたくはないかな。だって、死んだってきみはわたしを好いてくれない。


死体遺棄そばで笑ってる天使はポリ袋の中ばらぐちゃめきゃり


自転車でセンター街を駆け抜ける勇気があれば良かったのかな


品川の駅構内の本屋には妙に官能小説がある


バス停の眼前でこれ見よがしにタクシーたちが亀になってる


わたしたち白くあれって呪われて髪は黒いままでいてみよう


現実の延長線でゆっくりと楽になりたい不埒な吐息


きみが巻く時計のねじがぎぃと鳴り羽音が見えた ごめんね、こわい


コンビニで買ったおにぎり三つとも食い尽くす池袋北口


Mということになっている女が転がる部屋で泣けない、泣くな


手の甲に日焼け止めだけ塗りたくり塗りたくりまだ足りないのかな


バイオレンスフラワーブーケきみはまだ内包してるそれを知らない


煙にはひとの営みが乗っているだから嗅ぐなよ嗅ぐんじゃないよ


「ならラム酒だけ飲ませてよ。その後はチャイナドレスの暴行魔になる!」


花見用ブルーシートに倒れ込め! スリットから覗く長い脚


暴力は愛じゃないです血飛沫を顔に浴びても微笑む女


青空にチャイナドレスがちかちかと暴力的によく跳ねている


きみのその竹串さばきでつくられるたこ焼きに来世は産まれたい


たこ焼き(うーん、中に入っているものはたことも限らないのだけれど)


今日タコパ処女とさよなら箸で破瓜した中身から紅生姜


バナナ型すべり台から飛び出して受け止める先は地面しか無い


水色のアブサン振る舞われているどうしてそんなやさしくするの


パッションは信じるべきじゃ無かったね幸せな家族計画はうそ


しあわせなかぞくけいかくはうそだよきみのかいらくに加担してる

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短歌四季ごとまとめ 先斗ひろり @heroryp

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