第88話 ひと段落と
「ふぅー、ようやく色々終わりましたね」
バースの悪事に巻き込まれた俺たちは、しばらくの間冒険者ギルドで事の詳細を話すことになった。
バースがゴブリンの群れを呼んでしまったこともあって、冒険者ギルドとしては色々と確認しなればならないことが多いみたいだった。
そして、ようやく冒険者ギルドから解放された俺たちは、ご飯を食べに冒険者ギルド近くの食事処に来ていた。
「でも、臨時収入もあったし、結果的に良かったんじゃない?」
「本来バースたちがすべきだった護衛の依頼報酬と、有志で集められていた馬車にいた乗客たちからのお礼。結構額を貰っちゃいましたね」
冒険者ギルドからは、俺たちのパーティが馬車の護衛を代行していたことと、バースたちが呼び寄せたゴブリンたちから乗客たちを守ったことに対する報酬が支払われた。
そして、乗り合わせた乗客たちからも別でお礼としてお金を貰ってしまった。
俺たちは修行に行っただけなのに、普通に依頼をこなす以上の報酬を手にしてしまっていたのだ。
……まぁ、断ってもくれるって言うなら、お互いのためにも貰っておいた方がいいよね。
俺たちもお金に余裕があるわけでもないわけだし。
「これで、いよいよあのボロ屋から出ていけますよ。どこに泊まろうかな」
寝返りをうつ度にキシキシと鳴らないベッドだったらいいな。
俺がウキウキ気分で小さく体を揺らしていると、サラさんは俺を見てクスリと笑う。
「それなら、今私が泊まっている所はどうかな? 値段も手ごろだし、ソータが泊まっている所よりも設備は良いと思うよ。確か、まだ部屋も空いてるんじゃないかな?」
「本当ですか? そんな良いところならそこもありですね」
「多分、ソータが泊まっていた所よりも設備が悪い所なんてないよ。少なくとも、この街にはね」
サラさんが冗談を言うように笑うので、俺も釣られるように笑ってしまう。
そんなふうに雑談をしていると、頼んだ料理が運ばれてきた。
「あ、サラさん。明日からどうしましょうか? 修行から帰ってきたばかりですし、数日間休みますか?」
そういえば、以前もご飯を食べながら予定を決めたなと思い出して聞いてみると、サラさんは首を傾げてむむっと考える。
「うーん、そうだね。どうしようか」
サラさんはそう言いながら、運ばれてきたスープを口に運ぼうとしたところでピタリと止まった。
さっきまで柔らかい表情をしていたのに、急に表情が硬くなった気がする。
どうしたのだろうかと思っていると、俺たちの隣を四人のローブを着た人たちが通り過ぎた。
その中の一人の男が、通り過ぎざまにサラさんを冷たい目で見ていた。
そして、特にサラさんに接触することもなく、ローブを着た四人組はそのまま食事処を後にした。
「えっと、サラさん?」
「ん? ああ。明日の予定だったね」
サラさんは何事もなかったようにスープを口に含むと、こくんと頷く。
「……うん。少し疲れているし、数日は休みたいかな」
さっきと何も変わらないような口調なのに、その表情はまだ硬さが残っている気がした。
タイミングから察するに、さっきの四人組が原因だろうか?
あの人たちと何かあったのかな?
思わずそう考えてしまうほど、取り繕ったようなサラさんの表情は不自然な気がした。
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ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。 荒井竜馬 @saamon_
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