ジャンクジャンキーキャラメリゼ

韋駄原 木賊

序章 ジャンクジャンキー

鉄と甘い砂糖の匂いが部屋に充満する。それを鼻いっぱいに吸って吐くと、作業がとてもはかどった。ゴミ捨て場から回収された鉄くず達はもう一度自分が活躍する場をもらえてさぞかし嬉しいことであろう。口に含んだ飴玉をかみ砕いた。最終チェックは終わった。自分の背より二倍ほど大きいこの自作のコールドスリープ機に今から須藤は入る。 

 須藤はこの国を代表する若き発明家であった。国の防衛に関わる機械を数多く開発し、国に最も貢献した発明家として教科書にも載った。須藤の顔は全国に知れ渡り、称賛された。のも束の間、新しい開発している最中、事故により右腕を失った。そこから須藤は発明へのやる気を無くし、山奥に別荘を買い隠居した。須藤の名は偉人として過去のものになった。

 

 「がっ、この須藤。四十にもなってこのざまではいられまい!」


隠居して七年。発明で稼いだ資金も底をつきそうになり、このままでは孤独死の道を歩いている状態。須藤は死への恐怖で無理やり利き手にした左手を使い、コールドスリープをするための機械を開発した。人類の夢であろうこの機械の使用が成功すれば、また自分の栄光と銀行の貯金が元に戻ると考えた。

「まあ試しに一年眠ってみるか。死んでも誰も気づかんかもしれんが…」

不思議と恐怖は無かった。死は大っ嫌いなのに。それは自分の発明の腕を須藤自身が一番信用してるからである。


「これは成功する。絶対だ」


 そっとボタンを押しゆっくり空いた扉の中に入り、須藤は一年の眠りについた。




 

 


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