■ 22 ■ 旅立ち
「ヘイズ、マンジェットへの積み込み終わったぞ!」
「ようやくか……ハッチと格納庫の清掃に一ヶ月、損傷部位の修理に二ヶ月。もうユーグリスは飽き飽きだぜ」
あの戦から三ヶ月。グレゴリの伝手を借りてマンジェットを万全の状態に戻し、いよいよ今日が出港の日だ。
いい加減、ボレアリウスなんてしみったれた土地からおさらばせんと、ヘイズたちはタラップを収納しかけ――
「まさか、傷物にした女を責任も取らずに捨てていくつもりですか?」
熱砂の風に白い髪を靡かせるのは、黒髪の侍従を伴い桟橋に現れた
ヘイズは心底嫌そうな貌をして――チッと舌打ち。
「この船で一番偉いのは俺だ。俺に逆らうものは殺す。俺の邪魔をするな、操艦の邪魔をするな、水は大切に使え。一つでも破ったら八つ裂きにして流砂に投げ捨てるぞ」
「はい、キャプテン」
「……ハッチ開けろ。AHMを収納後、出港する」
「行き先はどこにする? ヘイズ」
そうグラナに問われたヘイズはしばし考え込んで――
「女がいねぇとこ」
「無理でしょ、それは」
ケラケラ笑いながら、グラナは格納庫へと搬入されてくるAHMに目を眇め――そして拳を握りしめる。
「いつか、あれを超えるんだよね? ヘイズ」
「ああ、俺とお前でな。グラナ」
握りしめた拳を打ち合わせて――すべてはここから、ここから始めるのだ。
-fin.-
熱砂の海のマリステラ 朱衣金甲 @akai_kinkou
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