とある"正義の味方"の嫁入り

「抑、何故に我々が地球侵攻などしているか、というと」


 ここはかつての日本国、現在は日本州と呼ばれる列島のとある場所。


 うららかな休日の昼、父親、母親、長女、長男、末弟という分かり易い核家族の暮らす、この地域では一般的な集合住宅の平均的な住戸に招かざるを得なかった客は、長く艶やかな黒髪を背に流し、豊かな胸と刺激的な曲線の腰を持つ、頭部と胴体の形だけはヒトと似てはいるが、その目は強膜部分が極端に少なく、鼻は高いと言って済む程度だが、薄い朱唇から覗くのは鋸刺魚のような鋭く尖った牙と言って差支えのないもの、腕がない代わりに手のようなものを幾つか宙へ浮かべ、足のない下肢は魚というより蛇に鰭がついたような有様で、ついでに背からは蜂のように透けた翅の生えた、要するに明らかにヒトではなく、ついでに地球上で発生した生物ではない。


 彼等は別の宇宙から来た知的生命体であり、その姿は共通点を見出せない程に千差万別だが地球に侵攻をかけてくるという迷惑行為は共通していて、おかげで人類は戦争どころではなくなり、元は敵だった勢力同士が手を取り合い、其方へ向けていた武力をよく分からない侵攻者へ向けざるを得ないという人類同士限定の平和が訪れる。


 新たな敵への武力行使は最初こそ既存の科学兵器が用いられていたが、如何せん消耗が激しい割に決定的な攻撃にはならず、倒した侵攻者の情報を解析し、研究が進むに連れて科学の域を逸脱していった。


 その昔、魔法少女や特撮ヒーローと呼ばれていた虚構が現実になっている、といえば理解は早いだろうか。


 しかし誰でもなれるものではないところまで再現されてしまい、適性者は何処からともなく現れる謎の使者からほぼ強制的な徴兵を人知れず受けているのだ。


 話を目前の客へ戻す。


 つい昨晩までこの家族の子供の内の1人と来客は適性者と侵攻者という形で争っていた。過去形なのは和解が成立したのではなく、適性者が敗北した故である。武器を壊され、装備も破られた適性者は死を覚悟したが、侵攻者は高らかに勝利宣言をした後に、夜が明けたら挨拶に行く、と言って適性者に何らかの呪いを施して去り、適正者を担当していた使者も適性者の敗北を上層へ報告する為に姿を消した。その場に残された適性者も命拾いしたは良いが他にどうすることも出来ず帰路に着き、明くる日の昼下りに訪ねてきた妙齢の美女を断り切れずに住戸へ上げた途端に、人間に化けていた侵攻者が正体を現して今に至る。


 菓子折りまで持参してなるべくこの地域に暮らすヒトの作法に合わせようとまでする異形の珍客に家族が困っていると、来客は惚けた視線で子供の1人を見つめながら牙の覗く口を徐に開き、冒頭の台詞を述べたのだ。


「繁殖における相性の良い個体を探す為なのだ」

 酷く流暢な州訛りであった。






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 人外侵攻者の性別は外見は女性

 適性者が誰なのかによって路線が変わる、タイトルも微妙に変わるしれない。

  長男の場合:女×男

  長女の場合:百合(※ 人外側が両性の可能性あり)

  末弟の場合:両性×TS(男⇒女)

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続くかも知れない話の冒頭集 ヒコサカ マヒト @domingo-d1212

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