家庭料理の思い出

大田康湖

家庭料理の思い出

 子ども時代、実家で料理をするのはほとんど母親だった。父親はよく不満を述べていたが、私にとっては普通の食事だった。

 私が大人になり、帰省するのがお盆と正月になったので、出迎える実家のメニューはほぼ同じローテーションで出るようになった。お刺身、焼き肉、とんかつ、お雑煮、おせち料理などである。

 それに文句を言う気は毛頭ないが、子どもの時好きで、機会があればもう一度食べてみたいおかずがある。スライスしたカボチャとベーコンの炒め物だ。母親が新聞に載っていたレシピを切り抜いてあり、台所に置いていたはずだ。再現しようと思えばできそうだが、あのレシピで再現したいと思って手を付けないでいる。


 家庭料理でもう一つ思い出深いのはポテトサラダだ。ゆでたジャガイモと刻んだタマネギとスライスしたリンゴ。材料をまとめたボウルをかき混ぜ、レタスの葉を敷いた各自のお皿に取り分ける手伝いを良くやっていた。さすがにポテトサラダは買ってきた方が早いので、私は家で作ったことはない。


 子ども時代のおやつでは、パン屋で安売りしているパンの耳を使って作るフレンチトーストも大好きだった。当時はフレンチトーストなどとしゃれた言い方は知らず、「パンの耳炒め」と呼んでいた。


 子ども時代は縁がなかったが、近年作るようになったのがアップルパイだ。実家からリンゴ刈りのお裾分けとして大量のリンゴが届いたので、リンゴのコンポートを作り、冷凍パイシートに包んでオーブンで焼いてみたのだ。冷蔵しておけば一ヶ月ほどもつので、その後もリンゴを大量にもらうと作るようになった。


 恐らく私は母から家庭料理を引き継ぐこともないし、食べさせる相手もいないだろう。それでも私の食生活の根底には実家の食事が残っている。

  

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家庭料理の思い出 大田康湖 @ootayasuko

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