第56話 猛毒ロシアンルーレット②

アコ「ぜ...全部毒入り?!」


ホムラ「えぇ、でも食べても死なない方法があるの。それは...制限時間まで時間をかけてゆっくり食べる事」


アコ「確かに制限時間が6時間って長過ぎと思ったけど、でも確証は無いわ! 毒入りと分かってて食べるなんて...私......できないよ」


ホムラ「いいえ、確証ならあるの。何故ならユウが質問で聞いてくれたから」


アコ「質問って、フェルマーの定理がなんちゃらってやつでしょ? あれに何の意味が?」


ホムラ「私は電話するのを近くで見てたから気付いた。ユウが電話で喋る時、前半だけマイクを手で塞いでいた事に」




ユウは電話で 「僕は学者で、一生をかけてフェルマーの定理を証明しようとしている。フェルマーの最終定理の解読は時間を掛ければ大丈夫か?」 と言っていた。だが実際は途中までマイクを手で塞ぎ、電話が聞き取った音声は


「毒は時間をかければ大丈夫か?」


だった。それに対して機械音声は ハイ と言ったのだ。



アコ「ユウはもうあの時にはもう分かってたんだ...じゃあ何故、皆に教えなかったの?」


ユウ「この先のゲームを勝ち残る為にはチームワークが必要と感じた。僕はペラープが大嫌いでね、同じく嫌っているホムラにだけ情報を与えた」


アコ「でも...ホムラのお母さんが死んじゃったんだよ? ホムラの気持ちを考えなよ!!」


ユウ「考えたさ、だから母親にこっそり伝える隙を与えた、アコに食べないでと伝えた様にね。でもホムラは自分の意思で母親に伝えなかった、違うか?」


ホムラ「ええそうよ。私は私の意思で母親を見捨てた。後悔はしてないわ」


アコ「じゃあ..........何で泣いてるの?」


ホムラ「......っ.......分かんないよ...」



ホムラは決して後悔はしていなかった。何度でも同じ選択をしていただろう。それでも涙を我慢する事はできなかった。



ホムラ「とりあえず、6時間かけてゆっくり食べ始めましょう」



ユウ「何だ、気付いて無いのか? ただゆっくり食べてたら腹の中にたまって死ぬぞ」



そう言いユウは冷蔵庫の中のチョコを取り出す


ユウ「これはアホミが食べて苦いと言っていたチョコだ」


ホムラ「これって、お母さんが持ってた! 便秘の人が飲む下剤入りのチョコ!」


ユウ「そう。ゆっくり毒入りシュークリームを食べつつ定期的に下剤入りチョコで毒を体の外に出すんだ。これがこのゲームの攻略法」



アコ「凄い...私1人なら絶対に死んでた...」


ホムラ「私もよ。時間をかけて食べれば良いと気付いた時点で思考を止めてしまった...全部ユウのおかげ」


ユウ「今回は、だ。明日のゲームからは僕が君達に助けられるかも知れない。とにかくペラープに恨みを持ってる3人で力を合わせよう」



こうして3人は0.5グラムずつシュークリームを食べつつ、1時間に1回下剤入りチョコを食べて排泄と同時に毒を体内から放出、5時間後に見事シュークリームを食べ切った。



ホムラ「た...食べ切った」


アコ「正直ずっと怖かったよ〜! でもこのトリックに気付ける人はかなり少ないだろうから、一気に6億円に近づいたんじゃない?」


ユウ「いいや、俺の読みだと賞金は6億なんてもんじゃ無い」


ホムラ「どうしてそう思うの?」


ユウ「ペラープは違法薬物や人身売買等で収益を得ているが、一番の収益源は信者からの献金なんだ。なのに今ここで大量に信者を殺してしまってはとんでもない損失になってしまう。じゃあ何でこんな事をするかと言うと、それ以上の収益源を見つけたからって事だ。それを任せられる優秀な人材をこのゲームで探している。6億円は入社祝い金的な感じで、その後の給料がとんでもないって事だ。今はその "信者の献金" を越える収益源が何だかは分からないがな」



ホムラ「一体何なのかしら...」



ホムラ達はいずれ年間600億の利益を駆けた戦いをする事をまだ知らない。




~夜7時~


テレビ画面に教祖が映る


教祖「皆様お疲れ様でした。本日の生き残りは60チーム312人です、明日のゲームも同じ部屋で行いますので、本日はその部屋でおくつろぎ下さい」



アコ「結構残ってるわね」


ホムラ「まぁ6人の内誰か1人が閃けば全員生き残れるしね。私達は半分見殺しにしたけど」


アコ「その事なんだけどさ、この先のゲーム考えたら、結構3人って不利なんじゃない?」


ユウ「いいや、むしろ良い。この大会で優勝した特典を思い出してみろ」


アコ「えーと、優勝者には賞金とペラプープの右腕になる権利、優勝者と同じペアの人も賞金を分けて貰える」


ユウ「そう。ペラプープの右腕になる権利だけは優勝者のみしか貰えないんだ。ここにいる大多数の人は賞金よりもそっちを狙ってる。となるといつか必ず仲間内での裏切りが起こる。それに比べて俺達はどうだ? ホムラとアコはペラプープの右腕になんてなりたくないだろ?」


ホムラ「私は賞金だけでいい」


アコ「私も」


ユウ「俺はなりたい、と言うかペラープを乗っ取りたい。だから仲間内の裏切りの心配をしなくていい」


ホムラ「本当に頭良いわね...味方で良かった」


ユウ「俺も2人みたいな常識のある人がいてくれて助かる。ここはヤバいやつしかいない。特に今日見かけた ミカゲ と言う奴はヤバい...」


ホムラ「ミカゲって確か...毒ガス事件の実行犯だっけ? 指名手配されてたけど、ここにいたんだ」



同時刻、ホムラのいる部屋の3つ隣の部屋では、生き残ったのが1人だけだった。


ミカゲ「フフッ...こんなゲーム、私1人で勝てる...私がペラプープ様に仕えるべきだ」



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作者のくにちゃんです。今後のゲームは『硫酸シャワールーム』や『マグマダイブ』等の予定はあるのですが、執筆と私生活の両立が厳しくなって来ているので、一度ここで完結とし、ある適度書きためてから順次公開したいと思います。この作品がここで終わる事は絶対にありません、時間の合間をぬって頭の中に浮かんだ事を書いていきます。再開まで少々お待ちください!


※ペラープ編は別の新規小説として投稿する事も考えているため、プロフィールから小説一覧を確認して頂けると幸いです。

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サイコゲーム~天才達の頭脳戦~ くにちゃん @zyatai

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