第55話 酒は人類の敵であるが、聖書には汝の敵を愛せとある

一日の休暇。


折角なので、女と過ごすか。


「よし、後輩!」


「っす!」


お、出た出た。


こいつ、耳がめちゃくちゃ良いから、コミュニティのどこに居ても俺の声が聞こえてるっぽいんだよな。


いや、聞こえている、ではなく、「聞いている」のか。そう考えるとキモいな。まあ可愛いから許すが。


「仕事は?」


「今日は教練っすかね」


「今日は休め」


俺は、筋肉ムキムキの変態らしく、キメ顔で言った。


「良いんすか?」


そして普通にスルーされる。


まあうん、はい。


「そんな急ぎじゃないしな。北海道まで帰って、そこで来年度までに使い物になればヨシとするわ」


「んー……、まあ、急いでも身につくもんじゃないっすからねえ……。こういう訓練って、継続してやるから意味があるんすよ」


そりゃそうだな。


ステータス機能みたいな、一度やれば無限に成長します!とかいうアホシステムは、通常の人間にはない。


筋トレも体力作りも銃の腕も、毎日訓練を重ねて手に入るものだ。ある日いきなりスキルがポンと増える!なんてこたあない。


「そうだな」


と同意しておく。


「で……、休むって言っても、何やるんすか?」


「このご時世の娯楽と言えば、酒飲んでセックス以外になんかあるか?」


「酒飲んでセックスは、自衛隊の頃もやってたじゃないっすか」


まあそれはそう。


「それはそれとして、酒は飲むっす」


ああ、うん……。


「一人じゃ酔えないもんな……」


「そーーーなんすよ!一人行動だと、迂闊に酔うと死ぬんすよ!もう半年くらい禁酒してたっすぅ!!!」


こいつ、かなり呑むもんなー。


「まだ酒は、日本酒と謎ウォッカしか出せてないんだが……、こんなこともあろうかと拾っておいたビールを冷やしてあるぜ!!!」


「うおおおお!最高っす!!!」


そんな訳で、呑みます。




俺は、七輪でピーマンを炙り、海で獲れたイカを炙り、そして、串に刺した鶏もも肉を炭火焼きにする。


「あぁ〜、良いっすねぇ〜!」


おっと、威貴ったら、もう既にビール二本目に入っていらっしゃる。ロング缶なんですが……?


「コラコラ、ビールだけで酔うのは勿体ねえぞ?ほーら、駅前の小洒落たバーから掻っ払ってきた良い感じのウイスキーだ!」


「おおっ!『轟』の三十年ものじゃあないっすか〜!」


「ロックか?ストレートか?ハイボールにはせんぞ、良い酒だからな!」


「ん〜、やっぱ最初はストレートっすかねえ?」


「よしよし……、あ、ピーマン焼けたぞ。業務用スーパーからお得用コチュジャンをパクってきたから、これつけて食うべ」


「辛味噌っすね!」


「大体合ってる」


酒を飲み、会話をする……。


「そういやお前、今まで何やってたん?」


「脱柵する前すか?」


「いやそれは普通に自衛隊でしょどうせ。そこは良いから、最近よ、最近」


「脱柵した後なら……、まあ普通に、先輩の足取りを追って西へ西へ……って感じっすね」


「足取り?そんなんあったか?」


「四日市の漁業組合と仲良くしてたらしいじゃないっすか」


「あー……、あったね、そんなのも。吉岡さん、だっけ?何があったんだ?」


「なんかあの人ら、本土を捨てて無人島に移民するみたいなこと言って、船で出てっちゃったっすよ」


「へー、じゃあ今頃は死んでるんじゃね?無人島の開拓とかできんでしょ」


「さあ……?興味ないんで……」


「で、そこでミラと合流して、後は無線で連絡しながらここに来た、と」


「そっすね」


「へえ、面白くないな。なんかなかったの?」


「ないっすよ。一応、自分も感染はすると思うんで、先輩みたいに油断できねっす」


「油断じゃなくて余裕ってんだよ、これは」


「マジすか?この前、酸吐きゾンビの酸を浴びて服溶かされて全裸になってませんでした?」


「あれはプレミ」


「ミスってんじゃないっすか?!!」


「まあほら……、サービスシーンだよ」


「身長二メートル超えの中年のサービスシーンて誰得なんすかね……?」


「お前とか……?」


「いやまあ、うん、得したと言えば……?けど別に、戦闘中はそういうの切り離してるんで。ってか、見るなら夜に見せてもらうんで……」


「まあそれはそう」


お、焼き鳥焼けた。


「焼けたぞ、食え食え」


「おほー!鶏皮んめ、んめ……!」


イカも焼けたな。


醤油マヨで行くか!


あーうめー!


いやマジでうめえ。


……新鮮だし、刺身も食いてえな。


とれたてでまだ透明なイカを、細く切ってイカソーメンに。


あ、イカって死ぬと身体の色が白くなるんだよ。生きてるイカは透明なんだわ。


活きイカを刺身にして、と……。


「おっおっおっ!活きイカの刺身っすか?!サイコーっすね!」


「だろぉ〜?これは海でしか食えねぇ味だぞ!今のうちに食っとけ!」


「っす!」


……いや、まあ、実家も海の近くにあるのだが。


しかし状況がどうなっているかは謎のため、もしかしたら海産物はしばらく食えない可能性もある。漁ができないとか……、最悪、滅んでるかもしれん。


一瞬一瞬を大切にしていきたいな♡


それはそれとして気に食わん奴は秒で殺すが。

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