研究室
三八
研究室
「失礼します」
ある部屋に若い青年が入ってきた。そこは環境問題を専門にしている研究室だった。
「おお、君か新人というのは」
中にいた男が言った。
「はい、先日大学を出たばかりで本日からここで働くことになりました」
「そうか、今は私以外出払っているがあと4人ほどいてね。ところで私たちの研究内容を知ってるかね」
「もちろんです。主に地球温暖化について研究していると聞いています」
「そのとうりだ。単刀直入だが君は温暖化の原因をなんだと考えている」
青年は少し考えて言った。
「ありきたりな説ですが温室効果ガスが地球のまわりを覆い、熱を閉じ込めるからですかね」
「なるほど、世間一般ではそれが最も有力だと思われているだろう。しかしな、我々の研究所ではそれは全くのデタラメだと考えている」
「なぜですか」
青年が不思議そうに聞いた。
「このグラフをみてくれ。平均気温がこのとしから極端に上がっている。そこで我々はこのグラフとさまざまな記録を見合わせた」
「何かわかったんですか」
「火星と木星の間の小惑星帯にこの時期に加わったものがあった」
「それが何か関係してるのですか」
「そうなんだ。調べてみるとこの小惑星から地球に向かって非常に高温の熱が発せられているのが観測できたんだ」
「なるほど。しかしなぜその小惑星だけ気候を変えるほどの熱を発しているのですか」
「それがわからないんだ。ただ温暖化の理由は明確になった。近々これを学会で発表しようとおもってね」
男がそう言うと青年は懐から銃を取り出し男に向けた。
「なんの真似だ」
男はとっさに手を上げた。
「ははは、せっかくだから教えてやろう。冥土の土産というやつだな」
そういうと青年の容貌がみるみる変化した。
「俺はな、とある星からここにやってきた。その星は止まらない人口が増加が問題になっていてな、他に住める場所を探していたらこの星を見つけた。しかしこの星は我々には寒すぎる。だから小惑星を模した衛星を使って熱を送り続けることにしたんだ。そのことにお前達は勘づいた。もう死んでもらうほかないな」
「そうか」
「ああ、そうだ。だが我々も文明人だ最後の望みくらい叶えてやろう」
「じゃあタバコを一本吸わせてくれ」
「それぐらいならいいだろう。さっさと吸え」
男はポケットからタバコの箱を取り出しその中の一本を咥えたかと思うと青年だった者に向かって勢いよく吹いた。
「ぐっ、なんだこれは」
「神経毒だもう銃どころかスプーンだって握れまい。安心しろ苦しむ時間は少ない。もうじき死ぬ」
青年だった者は少し苦しんだかと思うと程なくして生き絶えた。
「まったく、迷惑なことをしてくれた。ただでさえこの星は暑すぎるのに、これじゃあ我々の仲間が住めるようになるにはもう少しかかるな。」
研究室 三八 @mbshekkeb
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