第2話 チェンジモード

ブンッ・・・。

微かな音と共に彼女の肩がビクッと震えた。


見上げる瞳が潤みがちに光って。

やはり、僕の大好きな表情になっていた。


「今日の夕飯、何が食べたい・・・?」

自然な微笑みに僕は熱い気持ちが込み上げて。


「野菜炒めが、いいな・・・」

何度も繰り返した答えを彼女に返した。


そう。

僕の大好きだった妻の面影に向かって。


妻が亡くなってから。

数年が経過して。


AIロボットでそっくりな。

いや、それ以上に若くて素敵な伴侶を得たけれど。


やはり。

僕は。


寿命が尽きる前の。

リアルな妻の姿に。


戻すのです。


アイコンをクリックすると。

顔の皮膚も全てが変わり、10代の彼女が死ぬ前の妻の70代の皺を見せました。


僕は皺だらけの妻を満足そうに見つめながら。

もう一度、囁いたのでした。


「野菜炒めが、いいな・・・」

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結局は 進藤 進 @0035toto

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