第3話 Peace

あの人の、私がつけてあげたピアスは次会った時には見えなかった。

肌身離さずつけていてほしい、なんて私の傲慢だろうか。




「おつかれー」

「おつかれさまでーす」

と180センチもある彼の腕にするっと入り腕を組む。

「迎え来てくれてありがとね」

「かわいいイチカに会えるなら本望だわ」

えぇ〜うれし〜とか笑いながらショッピングモールのエレベーターにのる。

毎日恒例のように彼の服の匂いを嗅ぐ。

染み付いたラキストの香り。

たばこの匂いだけがする、それだけで安心する。

駐車場に行き、車にのる。

彼は私の好きなCROWNにのって迎えにきてくれる。まるで王子様のように。


私は15歳で彼は25歳。

一回りは離れているものの、歳上好きの私と歳下好きの彼にはぴったりだ。


車の窓をあけてたばこを吸う。

元彼が吸ってたから吸い始めたたばこ。

銘柄を何回か替えていまはPeace。

バニラ風味の舌に残らない甘さが、私の心をくすぐった。

「バイト終わりのたばこ最高すぎ」

「15歳のセリフじゃねーよ」

と苦笑する。

「セブンよっていい?」

生チョコアイス食べたいんだよねーと最寄り近くのセブンに寄った。

少しあついくらい暖房のきいた車で甘ったるいチョコのアイスを2人でたべる。

あまい。あつい。

だんだん顔が火照ってくる。

彼の冷たい手が頬にあたる。

「うわ、あっつ」

少しぼんやりする目で彼の顔をみる。

「あついなら言ってよー」

「んー」

窓から入る風が気持ちいい。

まだ、口の中があまい。

彼の口の中はもっと甘いのだろうか。

顔を、彼の唇まで近づける。ラキストの香りがする。

「どしたの、眠くなった?」

「んーん。ちゅーしたい」

だめー俺まだ食ってるから、と拒否された。

うざい。

うざいよ、って私は強引にキスした。

あっま。気持ち悪い程にあまい。

しつこい甘さ。まるで私みたいに執着してる。

気持ち悪いな。



そう、気持ち悪いくらいに私は彼を愛してる。



「あ、そういえばこれ」

家の前についた頃私は彼にピアスを渡した。

「この前出かけたときに可愛いのみつけたから買ってきたおそろい、!」

「えまじ?めっちゃかわいいじゃん」

おそろいなんて嫌かと思ったけど素直に受けとってくれた。

「ねえ、いまつけてよ」

そういって彼はピアスを私の手において髪を耳にかける。

私は彼がドンキで買ったピアスを外して、つけてあげる。

きらきらしてて、思い通り、彼に似合う。

「めっちゃいいじゃん。イチカにもつけてあげる」

私の髪を冷たい手で耳にかける。

彼の手が暖かいときはあんまりない。


「わぁ!かわいい!おそろい!!」

「ほんとお前は世界一かわいいよ」

健気すぎてな、と鼻で笑う。


次会える時までこのピアスついてるかな。

私たち、付き合ってないんだもの。

こんなに愛し合ってるのに、他の女といても浮気、って言えない。

それなのに、彼は私を独占できる。


私のことずっと好きでいてくれる?

私を自分のものにしようとしたあの日メッセージ忘れてないよ。

そのピアスずっとつけててね。

他の女といてもいいから、いる間もつけててよね。


「だいすきだよ」

「うん。俺もすきだよ」

付き合ってくれないくせに。

好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きでしょうがないのに。

無理やり唇を押し付けてキスをする。

最初会った時より上手くなってる。

私のおかげだよね?私といっぱいしたからだよね?


あ、手あったかい。

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