第2話 Sevenstar

あなたのことわかるよ。

自信もって。


なんてカッスい言葉をスワイプする。

節約禁煙、とか言いながら毎日毎日セッタを吸う。

いつも11時に起きて学校に遅刻するからどうせ、と2度寝して、バイトに行って、ニートみたいだ。


昨日の記憶を引っ張り出す。


「今日一緒に呑みいこうよ」

「ねえ、ちゃんとつけるから」

恥じらいもなく殻を破っていく。

私は、綺麗になっていく。ずっと、きっと。

「セックスしようよ笑」

「責任とりたいくないから」

昔なら男って単純だなーって思ってたけど、私の方が単純な女。


昨日から着てるパーカーには金ピの匂いが染み付いてセッタを吸ってても上書きされない。

わたし、アークローヤル吸ってる男が好きなのに。


ベランダのドアを閉めてテレビをつける。

有名芸能人が電撃結婚

結婚なんて頭の片隅にもなかった。

浮気されてきた時点で微塵も脳にはなかった(気がする)。



『ちゃんと帰れた?』

うるせえ。お前が勝手にホテル連れてったくせに。今何時だと思ってんだ。

机の上に置きっぱなしの酒缶をガラガラと袋に流し捨てる。だしっぱなしのコスメを片付けて、当欠したコンカフェのストーリーを見て、私が居なくたってみんな輝いてる、やっぱ私、存在しなくてもいいんだ!って覚える。

そうやって腕を切ってサイレぶち込む人生が楽しくて楽しくてしょうがない。


ふと思って、引き出しからニードルを取り出す。

「どこやったっけなー」

と漁ってやっと見つけたピアス。

14Gは私の初恋。16Gは私の浮気。

懐かしいなーってピアスとニードルを消毒する。

印もつけないで、タイミングもはからないで、ぷつ、っとニードルを刺す。

この勢いで本命の好きさんも刺し殺せればな、と思う。


細身で美形でいままでにであったことのない男の子。私の4つも歳上で猫とゲームがすき。

儚い雰囲気に後押しされて一目惚れした。


愛して愛してやまないのに、高嶺の花みたいな距離感。

普通に呑みに行くし、会話もする。

でもセックスはしない。

なんとなく、あの人とはしたくない。

私のせいであの雰囲気が壊れてしまいそうで。


21歳独身、綺麗な肩書き。

17歳コンカフェ嬢、合わない。


いくらなんでも合わない。無理がある。


ニードルにピアスを通してキャッチをつける。

キラキラした光が目に入る。

私があの人を思う度に増える傷、私の中であの人を裏切る度に増えるピアス。


ベッドの上でスマホが鳴る。

『いまなにしよる?』

彼からのLINE。

『見てーピアスあけたの』

写真を添付して送る。

『かわいいやん。もっと近くで見せてや』

もっと近く撮れってこと?画角を試行錯誤する。すると2通目がくる。

『久々に呑みいこうや奢るから』

昨日はノらなかったそれも同意する。

午前0時。ツインテール。

前髪にアイロンを通して、つけたばかりのピアスに微笑みかける。

かわいい。

ぴんくのリュックに果物ナイフをしのばせて靴を履く。世界がキラキラしてる。




「ルイくん!」

「ん、きた」

愛おしい。綺麗。猫の毛がついてる。

一緒に喋って歩いて、テキトーに居酒屋に入って、彼の仕事の愚痴を聞きながら炭酸を喉に流し込む。

幸せ。

「お会計6080円でーす」

「お前呑みすぎやろ」

「ルイくん酒雑魚だもんねぇ♡」

ふん、と言われて居酒屋をでる。

そのまま歩けばホテル街だよ。

ピンクとゴールドとか色んな光が行き交う。


「よし、帰るか」


わたし、まだ17歳だし。

だれか、私に力をわけてください。

わたしの人生を、救ってください。


「また呑み行こな」

少し火照った笑顔を見せてくれる。


「うん。ありがと」

今日も忍ばせたナイフは役割を果たさなかった。私みたい。


ねえ、つけなくていいよ。

責任とってね。

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