第3話 非常に暇

本当なら。

本当ならあなたの隣には私がいたのに。


あなたすべての脳に私がいたはずなのに。



私が泣いている頃あの人は他の女の子とセックスしてる。

私がタバコを吸ってるとき、あの人もタバコを吸っている。

私がパキってるとき、あの人は自慰行為をしてる。

上手くは回ってくれない世界で私たちは過ごしている。


いまさら、まだあなたのことが好きなんて言えない。

あの人は私の事なんてもう好きじゃないし、思ってもない。

嫌いになっても、いつまでも私の思いだけが傾いている。


しにたい、セックスしたい、タバコ吸いたい、まだ生きてたい、夜のままでいいのに。



そう、このままでいい。

私の隣に彼がいるなら、夜が明けなくても隣にいてくれるなら。


きっと彼は、夜が明ける前にここを出ていく。

上裸のまま、セブンスターを薄い唇にはさんで、窓をあける。

私はただ、その一連の流れを眺めている。

定まらないぼやけた視界と、タバコの匂い。

まだすこし温もりが残るシーツ。

さっきまで繋いでいた手はセブンスターを挟み、彼の口許と灰皿を往復していく。

あんなに濃厚なキスをしても、きっと、今の彼はタバコの香りしかしない。

ここにくる前にすべて流してしまった涙はもう流れなくなった。

あんなに愛していたのに、私たちはもう繋がれない。


氷のように急速に消えて、タバコの火を消した



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僕は君をゆるさない 成瀬 湊 @nqrse_x

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