第2話 俺カッコイイ

おいおい、こいつ見たことあるぞ。たしか、博物館で。なんて、すっとぼけてる時間なってねえ。


やべーよ、おい。やべーよ。目の前にいるあいつ、俺のこと威嚇してるわ。ほら、耳をすませば・・・


「グルルルル」


ほら、聞こえてきますよ。唸り声が!!


見た目はティラノサウルスですよ。恐ろしい恐ろしい。まぁ、俺より小さいけどね。


俺とティラノサウルスはお互いに睨み合ったまま動かない。ただ、お相手さんはずっと唸り声を上げている。

そういえば、俺龍だったわ。ブレスとか出せるんかね? ちょっとやってみようかな〜


息を大きく吸って───


おぉ! 何か口の中に溜まっていく感覚があるぞ! この調子で・・・


最大まで溜まったな。よし! 今だ!!


「バァベァアアア!!」


べちゃっ!!!


俺の耳に何かが勢いよくぶつかった音が聞こえた。しかも、粘着質のような音だ。


ブレスを吐き出す勢いでうっかり、目をつぶってしまったから再度開け直す。俺の目の前にいたティラノサウルスはネチョネチョの液体を体中に着けてそこにいた。


「ぐるる」(お、おう・・・)


「・・・・・・・・・」


可哀想に。体中ネチョネチョだから、口も開けなくなってしまったのか。

せめて、俺だけでもこいつの味方をしてあげなければな。こんな状態で今のこいつが群れに帰ったらハブられちゃうからな。


てか、ティラノサウルスって群れで行動するのか?

おっと、また話しが逸れてしまうところだったぜ。今はこいつを慰めてやらんとな。全く、世話がかかる奴だぜ。


「ぐるるる、グガァ、ぐるる」(まぁ、気にすんなや。そういう時もあるからよ。群れの仲間がお前をハブいても、俺がいるからな。安心せい)


「ガァアアアア!!」(てめーのせいだろうが! このクソ野郎!!)


「ぐ、ぐるる」(お、おう。何かすまんな。原因知らんけど)


「ガァルルル」(てめーが勢いよく息吸って、俺に向かって唾飛ばしてきたんだろうが!!)


「ぐ、ぐるる・・・」(ご、ごめんね。わざとじゃないんだ。わざとじゃ)


「ガルァア」(今日はもう帰る。用事があるからな。だが、お前だけは許さん! いつかお前を喰う)


ひえっ! 何て恐ろしいこと言うんだこのティラノサウルス。


恐ろしい一言を残したティラノサウルスは、さっさと帰って行った。


てかあいつ、結局何しに来たんだ? 俺のことを威嚇しに来ただけなら、恐ろしく暇なやつなんだろうな・・・。


さて、俺はもうひと眠りするかな―――


おやすみ~











「・・・・・・ぐるるる」(ふぁーあ、寝た寝た。今回はぐっすり眠れたぜ)


さてさて、今回はどうなっているかな!


頭を素早く持ち上げ辺りを見渡す。

そこに俺の、期待していた景色は広がっていなかった。辺りは前回眠りにつくときと同様、木、木、木。

うん、森ですね。なんだよ、変わってなかったのかよ。

ほんのちょっと期待してたのによー。まったく、これだからティラノサウルスは絶滅するんだよ。

どこかから、「俺、関係なくね!?」と聞こえてきたが気にしない、気にしない。


あっ! いきなりだが、空を飛んでみたくなった。

こう考えてしまうのも仕方ないよね。なんたって、今は龍なんだから。


そろそろ、俺自身がどんな感じか確かめたいな・・・。でも、確かめる方法ってないんだよなー。

そこら辺歩いてみて池とかあれば、物語とかでよくある自分の確認方法を試せるんだけどな。よし、取り敢えず、歩いてみますか!


よっこらせっと。


まず体を持ち上げます。


・・・・・・・・・うん。普通に空飛べちゃいました。むしろ、地面を歩けない身体でした。

薄々分かってたよ、だって、分かってなかったら自分のことを、龍なんて言わないしね。

俺の身体は、蛇型だ。陰陽師の式神にいそうな、でかい蛇型の龍だ。

内心喜んでます。はい。だって、西洋型のドラゴンて翼の生えてる二足歩行のやつでしょ? 知らんけど。

その、二足歩行のドラゴンだと、翼を動かして飛ぶなんてハッキリ言って大変そうだし、そもそも、ワイバーンとかと間違えられそうっていうのが俺の中で1番嫌なことかな。


それに比べ、蛇型のドラゴンだと、まず見た目がカッコイイ。威厳があるよね。

しかも、俺の身体の色は黒。目に入る身体の所だけだけど、真っ黒だった。やっぱり黒色が1番カッコイイよね。


まぁ、俺の身体が蛇型の龍ってことだから、そもそも歩けないよねって話。多分、歩けるとは思うが、身体の1部を引きずっていると想像すると、途端に残念感が増してしまうからなしだね。


よって、空を飛べたことを幸いに飛んだまま生きていこうと思う。さすがに、寝る時は地面に降りるけどね。起きてるときはずっと浮いてよう。そっちの方がカッコイイしね。


さて、空を飛ぶというやることが無くなったので、次のやることを考えなくては。


・・・・・・そうだ! 人語を話せるようになろう。人間たちに───


「我の眠りを妨げる者は誰だ!!」


とか、言ってみたいしね。


よし! そうなれば、練習あるのみだ!!


「グルァァァァア!!」


難しいね。人語を話せるように頑張ろう・・・。


そういえば、何で俺はあのティラノサウルスと会話出来たんだろう。

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人から龍になりました! お花のおっさん @ohanadesu123456789

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