第2話

 ああ、うう、おおん。あぁ、いやでも、うぅ、嫌だぁ、おあぁ、ぬあぁ、ふぅん。

 何やら悩み苦しみの唸りをあげて頭を抱える新米天使がいる。

 たとえどんなに気に入らない髪型でも全てを失う決心はなかなかつかないものである。


 ℚさてここに頭を抱えて悩んでいる国民的愛され海鮮家族の家長もどきの頭をした新米天使がいます。さあ、あなたはどうしますか(正答はございません)。

 ⒈そっと目を逸らし何も見なかったことにする

 ⒉そっとヅラを被せる

 ⒊そっと発毛剤を振りかける

 ⒋そっと黒の油性ペンで塗る

 ⒌堂々と爆笑する



 ぽよよよ~ん


 ……? ぽよよん?


「ヘ~イ☆そこのキ・ミ☆」


 サッとフードを被りガバッと振り向く。

 だが、誰もいない。


 「もぉ~ここよ ここぉ したよしたぁ」


 え、下?

 なんというかなんでしょう。すごく阿保面の増えるワカメ頭がいる。さっきまで新米天使が映っていたところにいる。

 っっていうか髪‼あんじゃん毛!!!ちゃんと存在した!!!!

 はわぁいいなぁ

 ほうっと息がこぼれる。


「ねぇ、キミのその頭をさぁ何とかしたいと思わな~い?」

 思う。思うが初対面で薄毛について指摘してくるとか失礼すぎやしないだろうか。

 自分もさっき同じことをしたのだが完全に棚に上げている。

「あ~ら、思うのね?」

 ええ思いますとも。ていうか何だこのオネエ。男…だよな? そもそも天使に性別あんのか? いや、その前にこいつは天使か? なんかフサフサだし、黒い服だし、ふさふさだし。何でだよ、羨ましいな此畜生。

「そ・ん・な・キ・ミ・に☆どんなつるピカでもたちまちふさふさ!!天使のための発毛剤‼その名も『フーサフサ』!!! ヨぉ」

 ペッペケペー と丸底フラスコに入った液体を掲げて見せる。栓が黒いしずく型なのはもしや毛根を表しているのか。可愛くはない。

 ゴクッ。ほ、欲しい。

「欲しい?もちろん欲しいわよね。じゃあ対価は――あぁら残念」


 また会いましょ♡そう言って、もやや~っと消えてしまった。

 ちょ、まっ俺のふさふさは?


 何やら上の方が騒がしい。天使たちが槍を手に、どこだーさがせーと叫びながら飛び交っている。

「おーい、何か居なかったか?」

 先ほどの先輩だ。少々焦ったご様子だ。

「えっと、阿保面ワカメがついさっきまで居ましたけど…何かあったんですか?」

「ああ、ちょっとな。って、あほづらわかめ、だと?」

「はい。阿保面ワカメです。」

「怪しいな、ちょっと来い。」

「ぐぇっ!」

 ひどい。首の後ろを掴んで飛ぶとか新米に対する扱いが悲しい。俺にも羽があるんだがこれじゃあ飛べやしないではないか。


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禿げ天使 さくや子 @hyouga-tsurara

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